あらすじ
女たち、記憶の湖へ還る。
佳代、千代、三代の三姉妹は、瑞ノ瀬村に暮らしていた。大切な人が戦地から帰ってくる日も、結婚式を挙げた日も、家で子を産んだ日も、豊かな自然を讃えた山々の景色が、佳代たちを包み込み、見守ってくれていた。しかし、村にダム建設計画の話が浮上する。佳代たちの愛する村が、湖の底に沈んでしまうという。佳代は夫の孝光とともに反対運動に身を投じるのだが──。
定年退職まで営業部で忙しく働く佳代の娘・雅枝。海外留学先で「適応障害」になり、1ヶ月と少しで実家に帰ってきてしまった孫・都。彼女たちの瑞ノ瀬への想いはまったく異なっていた。
いま最注目のミステリ作家・辻堂ゆめが、壮大なスケールで描く懐かしい日本の「故郷」。変わりゆく時代を生きる三世代の女性をつないだ感動作を、満を持して文庫化!
※この作品は過去に単行本として配信されていた『山ぎは少し明かりて』 の文庫版となります。
感情タグBEST3
辻堂ゆめ先生の作品には何度も驚かされてきましたが、今回は読み終えたあとに驚かされました。
社会的な問題を背景にしながら、その根底にあるのは家族の物語。派手などんでん返しや驚きで読ませる作品ではなく、登場人物それぞれの思いを追いながら、しみじみと読み進めました。
読了直後に残ったのは、感動と悲しい余韻。そして、少しの引っかかりでした。
その引っかかりが気になって、もう一度ページを戻ってみると、最初に読んだときには気づかなかったものが見えてきました。語られなかった先の未来で、家族の思いがつながっていくことを私は信じたいと思います。
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第一章では都を取り巻く家族の物語だと思った。でも第二章へ。さらに第三章へ読み進めると物語は壮大になっていく。
第三章の最初は別の物語なのかと錯覚した。しかしここからが物語の重要な部分だった。
都の祖母であり雅枝の母でもある佳代は戦争を経験している。出征した幼馴染の男の帰りを待ちながら故郷の瑞ノ瀬を守っていた。そして無事に生きて帰って来た孝光と夫婦になってさらに一生懸命働いた。
その瑞ノ瀬がダムの底に沈むことになってしまう。
孝光と佳代は反対運動を起こす。しかし途中で夫の孝光は失踪してしまう。そして反対運動は分解してしまうが、佳代は一人になっても夫の帰りを信じてダム建設の反対を貫いていく。
最後の佳代の手紙は涙が出た。
都、雅枝、佳代それぞれの故郷への思いが読み進むにつれわかってくる。
故郷への思いは人それぞれと、言ってしまえばそれで終わってしまうが、この物語はそれだけでは片づけられない奥深い物語だった。
Posted by ブクログ
プロローグ/雨など降るも/夕日のさして山の端/山ぎは少し明かりて/エピローグ
都の物語、雅枝の物語、佳代の物語
ダム湖の底には何がある?
渇水で水位が下がって水に沈んでいた物が見える事がある
ニュースで見て、ふーん としか思わなかった自分が恥ずかしい
沈む前の山には植物があり動物がいて人も住んでいた
その命はそこにはもう無い
佳代さん
あなたは自分の心が感じることのそのままに生ききったように思います
私の目から涙が滲み出し続けています、じわじわと
Posted by ブクログ
瑞ノ瀬に生まれ戦争を体験し、幼馴染と結婚した祖母。その慣れ親しんだ土地がダムへ、瑞ノ瀬で生まれ都会に出たいと願う娘(母)、そしてその娘であり孫。それぞれの抱える問題や心のしこりや土地への誇り。それぞれが繋がり、思いを馳せる。そして自分に投影されている様な思いに向ける一冊。
Posted by ブクログ
三代に渡る女たちの心情をその時代ごとに丁寧に描いていることに感心。世代なのか、雅江の気持ちが一番近いなと思う。あと女性ではないが、弘に私は似ているところがある。(優しくはないけれど)と思ったり。
ダムについては建設に関わるいろんな話(感動的な)いいんだけど、何かいつも引っ掛かりを感じていたが、ダムに沈む村がある、人がいた…ということに改めて気付いた話でした。
Posted by ブクログ
辻堂ゆめは、これで2作品目。この作家の、何か特別なことをしたわけではない庶民が、時代の移ろいとともに複数世代にわたってドラマを紡ぎ、少しずつ全貌が明らかになっていく手法が好きだ。時代設定が戦時下、戦後であるのも良い。
個人的には都パートはそこまで感情移入できなかったが、雅枝パートと佳代パートは、どちらの気持ちも分かるために、読みながら様々な感情を味わった。
詳細はなかなか感想にしがたいが、そういう奥行きのある話というのも久しぶりだったので、また読みたい。