【感想・ネタバレ】一日署長のレビュー

あらすじ

警察学校を首席で卒業した五十嵐いずみに課せられた仕事は、なぜか資料整理という地味な作業。しかしある日、パソコンの画面が発する光に包まれたいずみは、自分が1985年の署長室にいて、署長の身体に憑依していることに気づく。ちょうど署では、資料で目にしたばかりの未解決事件捜査の真っ只中。いずみは“一日署長”として、現場に赴くことになるのだった……!

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Posted by ブクログ

高校卒業後、三年間看護学校に通い、そのあと二年間、看護師として働いていた五十嵐いずみ。

思うところがあり、彼女は看護師を辞め、警察官になる道を選ぶ。

普通よりも五年も遠回りした人生だったが、警察学校では主席で卒業するほどの優秀な成績を収めた。

それにもかかわらず、配属先は史料編纂室だった。

同僚はおらず、配属されたのは彼女ひとりきり。

部屋の中にあるのは、天井まで積み上げられた大量の資料と、一台の古いパソコンだけ。

そのパソコンには「ポルタ」というニックネームが付けられていた。

仕事内容は、紙で保管されている過去の事件記録を、ひたすら手作業でデジタルデータに打ち込んでいくという、気の遠くなるような作業だった。

作業を始めてしばらくすると、ポルタがひとりでに「シュイーーーン」と、不気味な起動音を立てる。

まるでポルターガイストのようなその挙動から、このパソコンは「ポルタ」と呼ばれるようになったらしい。

いずみは心の中でつぶやく。
「なんで、こんな誰も来ない場所に配属されたんだろう……」

未解決事件の資料に目を通し、その内容をポルタに入力していく。

すると突然、ポルタが再び「シュイーーーン」と音を立て、画面が白く眩しく光り始めた。

次の瞬間、いずみの意識だけが過去へと飛ばされる。

飛ばされた先は、彼女が直前まで読んでいた未解決事件が発生したその日時。

しかも、その事件を管轄していた当時の署長の身体の中だった。

タイムリミットは、二十四時間。

署長の権限を使って部下を動かし、未来で未解決に終わってしまう運命を変えるため、いずみは奔走する。

物語は短編集形式で構成されており、それぞれの事件に直接的な繋がりはない。

事件が解決へ向かうことが確定すると、署長の身体に入っていたいずみの意識は、再び現代の自分の身体へと戻る。

過去を改変したことで、未解決事件として記録されていた資料は消え去り、パソコンで調べ直すと、その事件はそもそも発生していなかった世界線へと変化している。

中年の署長の身体に入るため、権力や威厳は署長のもののままだが、知識や思考はあくまでいずみ自身のもの。

署長に憑依する以前の署長の記憶は引き継がれない。

限られた時間と、直前に読んだ未解決事件の概要というわずかな情報だけを頼りに、懸命に思考を巡らせ、奮闘するいずみの姿に、読者は自然と引き込まれていく。

総じて、設定は奇抜でありながら非常に読みやすく、SF要素を巧みに取り入れた、新しい形の推理小説だと感じた。

続編が刊行されるなら、ぜひ読みたい!

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2025年12月24日

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