あらすじ
地方自治の空洞化が加速している.地方創生の推進とともに,地方は「稼ぐ」ための地域活性化を煽られ,コンサル会社による行政の“分捕り”や,国からの新たな統制が広がっている.人口の縮減,デジタル化の進展など,社会が大きく転換するいま,自治体の存在意義を根本から考える.地域住民の手に,いかに取り戻すか.
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Posted by ブクログ
自治体と地方自治の観点から現在の課題と今後の方向性を考える趣旨で書かれた本。
導入部は、以前に読んだ「過疎ビジネス」という本に示されている東北地方の小さな自治体で起きた事件の紹介。
著者は、国が「官民共創」の名の下、自治体に対し、「稼ぐ」ことを求め、結果として、計画策定、アドバイザー派遣、専門家への事業受託に翻弄されている自治体の現状を憂える。
その上で、自治体に「稼ぐ」責任はあるのかという疑問を呈し、地域経済において自治体に求められるのは、「信頼を付与する役割」だという原点回帰を訴える。
次章では、事件が起きた背景や構造を考え、2000年の分権改革や2014年に開始された国の地方創生政策を取り上げる。
聞こえのいい「分権改革」によって小規模自治体は交付税が抑制され、国主導の「地方創生」政策は、メニュー化された自治体に計画策定を強い、地域課題から離れた資金争奪戦をもたらした。
さらに3章では、国による自治体への「計画統制」や2024年の自治法改正で、デジタル化(全体の最適化)、自治体への「補充的」指示権の創設、公共私連携(指定地域共同活動団体制度)が創設され、自治体や市民活動統制の動きが進展することへの危惧を論じる。
「官民共創」や「地方創生」という美しい言葉の陰で、自治体の本務が見失われようとしている中で、著者は、4、5章で、今後の自治体や地方自治のあり方を考える。
第4章では、自治体が、情報消費社会が作る新たな空間を意識して、住民の概念を広げ、他の主体と力を合わせて身体性という観点から人権を守るべき論じる。
最終の第5章では、情報消費社会の進展がもたらす自治体の負担増に着目し、業務量の削減のため、国と自治体との役割を「融合」から「分離」へと転換させ、市民生活のディフェンダーとしての自治体に特化すべきだと説く。
そして、国に対して、自治体行政への依存を止め、自立を訴えるとともに、自治体のミッション遂行のための資源を用意し、どの地域で暮らしてもナショナル・ミニマムを享受できる条件の整備を求める。
著者は、地方行政の経験を持つ学者であり、実体験と理論の両面から自治体や地方自治のあり方を見つめてきた。
レベルの高い論理力についていけないところもあったが、自治体や地方公務員の側に立って論じる熱い思いは、ひしひしと伝わってきた。