あらすじ
夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。彼女は、それでもとても美しかった。陽炎のように儚い1週間の中で、僕は彼女に恋をする。あれから13年……。僕は彼女の思い出をたどっている。「殺人」の罪を背負い、留置場の中で――。誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかに蘇る。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
さすが白川三兎、デビュー作でこのレベルの小説書くかぁ、スゲーわ。メフィスト賞受賞もなるほどなぁと思わせる。
小道具描写なんかが荒削りだったり、文庫化に伴う再編集後も時系列が分かりにくい部分があったりするが、その瑕疵を帳消しにして余りある、登場人物たちの心理描写・行動描写が素晴らしい。
ここんとこ「青春時代の真ん中は道に迷っているばかり」的な小説に出会うことが多いが、この作品もそのテーマの秀作。エエ歳こいてから厨二病っぽい小説を読んで楽しむってのは、あまり品の良くない趣味かも知れないが…オモロい小説が揃ってるテーマやもん、しゃーない。
最後のハッピーエンドは手本通りとも思えるし、出来すぎとも思えるし、エーっそっち選んだの?とも思えるし、解釈が色々できてそれも楽しい。ドラマ化したら「原作とは違うエンディングを用意しました」をしやすいヤツやな。
Posted by ブクログ
読み終えて、なんだろうこの本はストーリーをあまり書きたくない。不穏なほうにいくのかなと思いきや揺れ動いた。読む人に委ねたいと思う本だった。
最初は違和感があったのだけど、それが独特なんだと思えてやがて没頭できた。
伏線がはりめぐらされたイルカとセミの童話。
Posted by ブクログ
不眠症を抱えて少し冷めた日々を過ごす高校生の少年と、過去のいじめが原因で心を失くした中学生の美少女との一週間の交流、そしてその幻影を引きずって大人になった彼の現在とこれからを描く青春小説。
メフィスト賞受賞作だがミステリらしい伏線は少なく、人間臭い恋愛小説として読むべき作品。登場人物はみな魅力的だが、もって回った言い回しや吹っ飛んだ行動から現実離れした印象も受けてしまう。超絶美人を「美人」として書ききった点は評価したい。
そういった点も含めて、「彼」の一人称での世界を切り取った作品なのだと理解した。