【感想・ネタバレ】「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理のレビュー

あらすじ

資本主義の駆動力は何なのか。ゆたかさの果て、新たなフロンティアはどに求められるのか。差異・距離が生み出す人間の「欲望」の観点から、エンドレスな拡張運動の文明論的、歴史的な意味を探る。(講談社現代新書)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

資本主義を欲望によってフロンティアを拡大していく行為と捉え、どのように発展したか、何故成功し、社会主義は失敗したのかについての著者なりの答えが示されている。ペレストロイカは社会主義+市場の導入という形で立ちゆかなくなり、計画経済において権力側がコントロールしきれなかったことなどが興味深かった。アメリカの大量生産を可能にする大量消費(需要)の存在や、メルティングポットが故の大衆を相手にした資本主義なども納得できる(それは貴族主義などのヨーロッパには根付かなかった)。欲望とうまくつなげながら論じられている名著。

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2015年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

資本主義の歴史とその本質がよく分かる。

元来ポリネシアなどでみられた「交易」というものは「価値」のないものをぐるぐるまわす、その運動自体に意味があるものだった。そうすることで富を必要以上に蓄積することの危険を回避していた。しかしヨーロッパ人は違った。自分たちが持たないものを執拗に欲しがった。中国の茶、陶磁器、インドの砂糖や香辛料、南米の金、銀など。重要なのはそれらは「生活必需品」ではなく、「贅沢品」であること。つまり「欲望」が資本主義という運動をドライブさせ続けてきたのだ。あるときは武力に任せて強奪し、あるときは三角貿易によってアヘンや奴隷を介在させることで、非人道的に利潤を上げ続けた。

基本的に資本主義というのはここからそうかわっていない。「欲望」を作りだし続けることが成長のためには必要なのだ。当然のことながらそこには搾取する側とされる側の不均衡が必要になってくる。世界中が平準化したら資本主義という運動は止まってしまうだろう。

グローバリズムというものが貪欲さと離れがたいのはその本質が「欲望」であるからである。世界は自滅に向かっているようにしか思えないのだが…。

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2013年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「消費者」という観点から資本主義を捉える

そこには「欲望」が存在し、距離が遠ければ遠いほど、深くなる

読み物的かと思ったら、説得力があって、歴史を新しい視点から振り替えることができた

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2012年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

資本主義とは何なのか?がこの本の主題。そしてこの本でいう資本主義は一般的な使い方と若干違うようなので注意が必要。市場経済とセットとは考えない。
 社会主義も市場経済は導入していたが競争がなく、失敗をチェックする仕組みがない。消費者が存在しないことが失敗の原因だという。
 資本主義は大きく分けてアジア等外側に欲望が向いていた産業革命周辺の時代、理想のアメリカ人像を求めた1880年代終盤から1900年代初期。欲望がメディア、広告によって人々の刹那的になり絶えず移り変わる現代(1980年代から1990年代)と分けられるとしている。すこし昔に書かれた本だが現代からを見てもまだまだ欲望に取りつかれていて文化、知識の領域は取り戻せていない。
 著者は資本主義発生のメカニズムはゾンバルトを指示していてヴェーバーには一部を除いて否定的。

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2013年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 資本主義というものが、人間の無限の欲望を前提として形成されて来た歴史について解説した本。著者は資本主義を「人々の欲望を拡張し、それに対して物的なかたちをたえずあたえていく運動」と定義する。

 また、著者は資本主義経済においては「過剰」に注目すべきであると説く。以前私は経済学を「有限の資源をいかに効率よく分配するかを考える学問」として「稀少性」に着目すべきだと理解していたが、これまでの人間社会の生産力からして供給過剰になりがちなため(生産物にもよるが)、この説はある意味で正しいだろう。

 ミクロ経済学では個人は「効用」の最大化を目指すことを学んだが、本書では今までその効用がどのように形成されて来たのかが無視されがちであったことが指摘されている。その答えとしては、大航海時代以来の貴族の嗜好品や奢侈品への欲望(モノ自体や個人の枠にとどまらない、シンボルの消費)によるものが大きかったことが挙げられる。香辛料、金銀、茶などといったものがその代表例。

 資本主義の歴史を語る上で優れた本だと思った。

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2011年06月18日

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