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Posted by ブクログ 2013年06月20日
松岡弓子の『ザッツ・ア・プレンティ』が「父親の介護記録なんだけど、その父親がたまたま立川談志だった」本だったとすると、『談志歳時記』は「恩師に最後まで付き合った教え子の記録なんだけど、その恩師が立川談志だった」という本。
吉川潮が家元を直接看取ったわけではないけど、最盛期から晩年衰えるまでを、関...続きを読む係者の中では一番冷静に見ていた人なんじゃないかしら。それは「恩師と教え子」という関係であり、落語家における「師匠と弟子」の関係とはまったく違う関係なのです。乱暴な線の引き方をしてしまえば、血を、DNAを引き継ぐのが「師匠と弟子」ならば、「恩師と教え子」は世界観を、了見を共有する。こう書くと比較的思ったことに近いかしら。
親の悪口のように家元をネタにするか、一歩引いたところから、血を分けずに家元を描写できるか。
お弟子さんが家元について書かれたものもずいぶん読みましたが、この辺が大きな違いだなぁと思います。
『赤めだか』も凄まじくうまいなぁと思ったけれども、やはり文章のプロは、文章のプロなのです。えらいものです。
Posted by ブクログ 2013年03月03日
立川談志が亡くなった後、その多くの弟子が、自分の談志にまつわる思い出噺を本にしました。
しかし、その中でも抜群によくできたものが、吉川さんのこの一冊です。
談志との出会いから、訃報を知るまでの出来事がここまで詳細に書かれたものは他に類を見ないでしょう。おそらく自伝よりもこちらのほうが内容はまとま...続きを読むっていると思います。
Posted by ブクログ 2013年01月03日
不祥事で仕事を干された人に仕事場を提供する、来客に家にある品々を贈る、それだけではなく階下のタクシーのトランクに乗せ、雨の中、戸外で客人を見送る、新潟の農家と交流しながら毎年田植えと稲刈りを楽しむ、農家はその人柄をしのんでいる、娘の結婚式で娘を抱き抱え満面の笑みを見せる、ぬいぐるみ好き―。
すべて立...続きを読む川流家元、立川談志のエピソード。談志を表面的にしか知らない人は意外に感じるかもしれません。
傲慢、不遜、乱暴、異端―。家元はそんなイメージで語られることが多いですが、家元に関する書物を読むと根は温かい人だったようです。そうしたエピソードが満載なのが本書です。
ただ、家元自身はこうした心温まるエピソードを自ら語ることはもちろんしません。そこは江戸っ子の照れがあったのでしょう。
家元は自らをこう評しています。
「柄は悪いけど下品ではない」
私もそう思います。
家元の大ファン、というより談志教の熱心な信者である私は、いまだに家元の死を心の中で整理できずにいます。