【感想・ネタバレ】羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくるのレビュー

あらすじ

将棋界の歴代記録を塗り替え続ける最強棋士。なぜ彼だけが常に熾烈な競争を勝ち抜けるのか。タイトル戦観戦記にトップ棋士たちとの対話、そして羽生本人に肉迫した真剣対談が浮き彫りにする、強さと知性の秘密。ルールがわからない人をも魅了する、天才棋士の思考法とは。既刊単行本二冊を再編集し、羽生善治との最新対談を収録した完全版。

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Posted by ブクログ

将棋の世界が ウエブの世界と共通している部分がある
という 梅田望夫の指摘は 結構おもしろい。
そのなかで なぜ 羽生善治が そんなに強いのか?
ということに 焦点を当てる。

情報化時代は オープン化されることで共有される。
知的所有権がないという世界は残されたものは、
『創造性』しかない。
その『創造性』はつねに模倣される。
つまり 進歩は加速度的にならざるを得ない。
そこからは モノ開発ではなく、仕組み開発でしか
生き残れないのかもしれない。

中国のことを考えると 
知的所有権はないと同じ状態なので、
たしかに、モノマネで 高速道路を走ることができるが
結果として 創造性というところで 
『渋滞』が起こっているのである。

この本の中心的なテーマは、ここにつきるかもしれない。
誰にも見えない未来をつくることこそが 求められている。

そういう前提の中で 羽生善治がなぜ強いのか?
を追及する。

『闘う相手の棋士としての本質を、
極めて抽象度の高いところで、掌握していることにある。
将棋に負けた以上に、
自らの人間としての本質を掌握されたうえで、
敗れたと感じ、
それがより深い痛手になるのではなかろうか?』

1 人間としての強さ。
 複雑さを解明する日常を喜ぶ生活。
 過去の圧倒的な実績。
 森羅万象 複雑な事象の本質を抽出し、
 シンプルにものごとを見る明晰さ
 俯瞰的な視座をもつ合理主義。

2 将棋の神に対する忠誠度の強さ。渾身没頭。
 一般化するならば、専門分野に没入する強さ。
 苦労を苦労とおもわず 
 楽しみながらその苦労を続けている。
 より複雑な局面に遭遇する時に 
 無上の喜びを感じている。
 将棋の進化に身をゆだね、予期せぬ結論を真理として
 受容する心構えを有し、
 だからこそ 誰よりも真理の探究に情熱を燃やしている。

3 対戦相手との関係性において 
 盤上で棋士として発揮する強さ。
 オールラウンドプレイヤー。

渡辺明、佐藤康光が いいポジションをもっている。
量から質に転化する瞬間が いつあるのだろうか。

人間と人間の戦いの中で 
頭脳しか頼ることができない怖さ。
それを まざまざと見せながら、
羽生善治は切り開いていく。

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2017年01月30日

Posted by ブクログ

100人ほどの閉鎖集団内での日々の勝負の中で、急速に進化している将棋の世界。著者の梅田さんは、将棋界の最先端を走る人たちの状況が、シリコンバレーを中心にしたインターネットの世界の最先端ととても似ていることに気づき、「それらは、社会全体でいずれ起きることを先取りした実験場である」と語る。羽生、森内、佐藤、渡辺など将棋界のトップランナー達への深い取材に基づいての「将棋界でこれから起こることは、私たちの社会の未来を考えるヒントに満ちている。」との言葉には、深く頷かされた。

0
2013年04月01日

Posted by ブクログ

ITジャーナリストの梅田望夫から見た羽生善治と現代将棋について。

現代将棋のことを「高速道路の後の大渋滞」と評したのは彼だが、その状況をトップ棋士を通じて描いていた。

0
2019年01月28日

Posted by ブクログ

観戦記、対談共に面白かった。将棋界に強い人は羽生さんの他にもたくさんいるのだけれど、それでも、羽生さんがどうして強いのか。それに実際の将棋のタイトル戦の解説から触れられる。

・たとえば、新聞というのは発行部数が多いぶん、一文字あたりの価値(コスト)が高い。よって字数制限が厳しい。そういう制約を「当たり前」の前提にして、新聞の将棋観戦記というものが書かれてきた。しかし字数が少なくて将棋の中身がわかるのは、よっぽど将棋が強い人だけである。インターネットにはそういう制限字数のコスト的制約などないから、字数の制約という思考の枠が取り払われて、将棋を巡る思いきり長い文章や解説が用意されればいい、と私は思った。そこにこそネットと将棋普及の接点を感じてほしいと思ったのだ。将棋を語るときに、分量の多さというのはとても大切な要素なのである。

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2014年01月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あまり得意じゃなくても、将棋に興味を持てるようになる一冊。
また駒に触れてみようかな~と思う。
将棋から現代社会の特性を導きだそうとしているところが興味深い。

現代は、高速道路。
誰でもカンタンに前に進めるけれど、その先には大渋滞が待っている。
その大渋滞を抜けられなければブレイクスルーは起こらない。

高速道路とは、大量の知識や情報が整理された状態のこと。
誰でも手を伸ばせばカンタンに手に入る。

大渋滞とは、そんな高速道路に突っ込んだたくさんの人々がなした群れ。
そこからまた一つ突き出るには、自分で考えることのできる力をしっかり養わなければならない。

じゃあ、一般道でゆっくり行ったらいいかといったら、それではスタートの時点で出遅れて取り返しのつかないことになってしまう。

膨大な情報にも全て触れておく必要がある一方、自分でしっかり考えることのできる力も身につけておかなければならない。
これが現代の将棋でも現代社会にでも共通する大きなジレンマ。

なるほど、情報化社会の大きな特性だろう。
何事も、他のモノで勝負してはいけない。でも、身の周りにある部品を利用しない手はない。重要なことは、自分のポリシーなり個性をもって、それらの部品を加工すること。そうすればきっと素晴らしい作品ができるはず。
日々是精進ですな。

『後にとっておける手は残しておくこと』というのも興味深い。よく今日できることは今日やれという。前者の発想は、明日できることは明日やれということだ。きっと両者とも大事なのであって、バランスをとって生きていくことが大事なのだろうな~。

本書を通じて感じた羽生さんの強さ、それはやっぱり将棋を愛する心なのだと感じた。だからあれだけ集中できて、あれだけ継続できて、あれだけ圧倒的なのだ。
何事もモノになるには時間がかかる。楽していい仕事はできないのだ。どうも楽してできたらと思ってしまうけど、要は自分自身が好きになること、楽しむこと。そうすればきっとうまくいく。

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2013年06月08日

Posted by ブクログ

梅田望夫さんの先行書『シリコンバレーから将棋をみる』『どうして羽生さんだけがそんなに強いんですか?』を再編集し1冊にした本。新たに対談を追加しているがあまり長くないので、2冊ともお持ちの方はどこかで一度読めば十分かも。

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2013年05月27日

Posted by ブクログ

久しぶりのノンフィクション。ライトな将棋ファン(NHK杯とか見る程度)の私にとって、面白そうなテーマなのでついつい手にとってしまいました。

現代の将棋界の動向について、羽生善治という将棋の第一人者を軸に据えて語っています。対局の観戦記やインタビューなど、多様な視点で章立てしているのがよいですね。特に、第八章以降が面白かったです。山崎さんという棋士の「ムカつく」という主旨の発言には、思わず笑ってしまいました。

一つ残念だったのは、もっと棋士の発言を掘り下げられたのではないかということ。棋士の思想や哲学が明かになるように、筆者の主張をなるべく控えめに書き進めた方が、もっと奥行きのある形に仕上がったんじゃないかと、個人的には思いました。

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2013年03月16日

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