あらすじ
大流行作家にして文藝春秋社社長、直木賞・芥川賞創設者ともなる「文壇の大御所」……1888年、香川県に生まれた少年はいかなる道を走り抜け、あまりにマルチな才能を発揮する「菊池寛」へと成長したのか。文壇に頭角を現すまでの半生を決して気取らぬ筆致で記した「半自叙伝」をはじめとする随筆5篇の他、芥川龍之介が菊池の魅力を綴った「兄貴のような心持」を併録。解説 門井慶喜
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Posted by ブクログ
若手作家たちに活躍の場を、と私財を投じて雑誌「文藝春秋」を創刊、破格値で販売。新人作家のために芥川賞・直木賞を創設。作家の地位向上と権利の擁護、文壇の発展に尽力した漢、菊池寛。
……と、菊池寛の小説をひとつもまともに読んでいない私にとって、菊池寛は作家というより実業家の印象が強いのですが、人気作家だったのだそう。(現代では田舎の小さな書店では出会いが無く読む機会に恵まれなかったと言い訳。いずれ読む。)
この本を読んで、菊池寛という人物は根っからの実業家だったんだな、と感じた。実業家への道筋や苦労が書かれているわけではないのだけれど、深い深い土の中で芽を出すタイミングをしっかり見定めていた人のように感じられる。文学を広め文士を守り育てたいという菊池寛の情熱を読みたかったな。
お芝居や文学、大正時代の人々の生活など、私にもう少し知識があれば「おもしろかった」と言えたのかも。「興味深かった」「愉快だった」止まり。漱石批判には驚いた。
菊池が友人芥川龍之介のことを書いた『芥川の事ども』と、芥川が菊池寛のことを書いた『兄貴のような心持』収録。それぞれの個性が滲み出る文体の違いにドキドキした。
この表紙で『私の日常道徳』を冒頭に持ってくるちくま文庫さんのセンス、最高です。