あらすじ
最近、著者の診察室を訪ねる初心患者の九割が、漠然とした不安感とイライラを訴える。経済大国の地位を失い、震災・原発事故に見舞われ、近隣諸国との摩擦も激化。将来への展望を失った国家を、不信と苛立ちに満ちた「民意」が覆っている。不寛容な大学生、言葉の真意によらず過剰反応するツイッターの世界、想像力の欠如したメディア報道など、様々な場面から日本の現状を考察。苛立つ「民意」をすくい取る嗅覚に優れた独裁型ヒーローの誕生に警鐘を鳴らす、今こそ必読の書。【目次】はじめに――ツイッターのアカウントとしての「独裁者」/第一章「ふわっとした民意」/第二章 独裁待望の背景にある心理/第三章 「独裁型ヒーロー」の手法/第四章 ハシズムを超えて/おわりに
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
自律した生き方を望んでいる様に見えない学生たちに関する記述に始まり、文章の全体の意図を読み取らず、狭い部分を切り出して「短文」で主張を理解しようとする事の危険性、また「短文ソーシャルネットワーク」ともいえるツイッターを多用する橋本徹の傲慢さ、問題点を指摘するに至るという、一冊の中での流れが見事。
短文でも言ったもの勝ち、言う事を言ったやつが善である、文章の全体を捉えず一部をつまんで非難する、という橋本的思想に全く共感できない自分には、この本がまさに橋本徹に感じる危険性、問題点をピタリと指摘しており、香山さんの本の中でも稀にみる良作だと思う。
Posted by ブクログ
最近、著者の診察室を訪れる初診患者の多くが漠然とした不安感とイライラを訴えているらしい。
言われてみれば、「不寛容さ」が幅を利かせているような気がする。
ウラも取らずに公の場で人を名指しで批判する人(それも一般人でなく政治家)、過激な物言いや言葉尻を捉えて非難するなど。
本(特に新書)ではタイトルで「バカ」「アホ」(本来の悪口の意味で)を使う本が多くなってきたのも、その流れの一つなのか・・・。
(ちなみに、例外はあるが、そういう本は基本的にスルーすることにしている。)
歴史上、独裁者が使う手口は
・「敵」を作る。
・問題を単純化する。
例)悪い事は、すべて「敵」のせい。
○○さえすれば、万事解決
・Yes と No の2つしか選択肢がないと思わせる。
などが挙げられる。
(これが全てではないだろうが、代表的な手口としてはこれくらいだろう)
かつて大人気だった首相や、今、話題になっている一部の政治家がこれにピッタリ当てはまるのに不気味さを感じる。
著者も思いがけず某市長に名指しで非難されてしまったが、この本の半分は、その非難に対する反論のよう。
非難した方の某市長の主張には、かなり前から「危うさ」を感じていたので、著者の主張の方に共感を覚える。
(以前から著者の本が好きだったというのもあるが)
たぶん、民主主義というのは、関係者間の調整を行ったりして、物事一つ決めるのにも時間がかかってカッコ悪く、面倒くさいプロセスなのだろう。
「それじゃダメだから、オレに任せろ。」
と言い出す人が出てくるのは仕方ない事だと思う。
おそらく1つや2つの問題なら、颯爽とあっという間に解決するだろう。
そして、
「ほら見たろ。お前ら、ウダウダ言わず、黙って見てろ」
というセリフが加わるのは時間の問題。
だが、次の問題で間違えるかもしれないし、間違えないかもしれない。
要するに未来永劫、間違える事はない、とは誰も言えない。
間違えた時(もしくは間違えそうな時)誰も何も言えない状況だったりすると・・・。
問題をたちどころに解決する「特効薬」は、そうそう転がっているわけではない。
威勢のいい事ばかり言っている人や、それにすぐ乗っかる人は放っておいて、ちょっと一歩引いて、問題を見直してみる態度を忘れないでいたい。
たとえ「ドジでノロマなカメ」と言われても。
いや、昔のドラマのセリフではないから「ドジ」はいらないか・・・。
Posted by ブクログ
ハシズムを前に香山さんがいろいろ述べてる。独裁者の条件は漠然とした不安の対象を指させる人間、これかあれかの二択を好むのはスプリッティングではないかってこと、白紙委任したくなる心理、ツイッターとゆう短文形式のメディアのもつ危なさとか。
確かに効率とか生産性の名の下に切り捨てていいのかって思いもあるが、同時にそうしないとダメだろって思いがある。ただ文化的な国を目指してくべきだと思うし、国民もゆっくり考えるようになったらいいなと思うわ。他人事みたいだけど。
Posted by ブクログ
現在の日本が二者択一を好みいわゆる「ヒーロー」を待ち望んでいる。そして、自らが考えることを放棄しているなど納得できるところは沢山。そして、その「独裁」を現代でうまくやっている人にあの政治家をあげるのは納得。
しかし、選挙で石原さんと組んでからはどうもそれが精細にかけると私はおもっていたけど、たしかにこの本は今年の一番維新の会がもりあがってた時期に書かれたものだった。
とりあえず、私は独裁者になる方法を求めてこの本を手にとったから、敢えて例題にあがった政治関連の香山氏の見方には深く突っ込まないけど、大戦以来人はわかりやすい対立構造そして、昔ならば分かりやすい巨悪(とみせかけられたもの)、いまならば、身近にある悪(とみえるもの)に対する選択を迫られることで、そしてそれを選ぶことで自分を正当化し、おちつかせる。本当に大切な考えなくてはいけないものを放棄しその快感によいしれる、ということ。勉強になりました。
Posted by ブクログ
努めて冷静に反橋下論を展開しているが、多少感情的になっていることが伝わってくる。
人間なんだから悪口を言われればムカつくのは仕方のないところ。
内容は確かに「イエスかノーか」という二者択一、反論するには代案を用意しないといけない、曖昧を許さない、ムダの排除など、一見よさそうで実は危険とも思える。
中間層の庶民を味方につけるやり方は上手だが、こちらが思考停止にならないよう気をつける必要があるのは著者と同意見だ。
今後はさらにネットやツイッター、メディア報道、テレビのニュースにいたるまで鵜呑みにせず吟味して判断しないといけない。
Posted by ブクログ
ものごとは白か黒か、正義か悪か、に二分されるわけではなく、どちらかに決めかねることもあれば、部分的に賛成といった曖昧な立場を表明しなければならないこともある。人の発言には必ず理由があり、背景がある。諾の一言にも、そこに至るまでの様々な逡巡があり、複雑な経緯がある。機微に敏感に反応し、想像力を巡らせる必要がある。軽率な短絡は誤解を生み、無益な争いや悲劇にまで発展する。「香山氏は一回も面談もしたことがないのに病気だと診断した。一度も接触せずに病名が分かるなんてサイババか」。謂れのないつぶやきで大炎上させられた著書が、苛立つ民意を掬い取る嗅覚に優れた独裁型ヒーローの誕生に警鐘を鳴らす。警鐘は他者への思いやりを喪失した我々大衆に対するものでもある。
Posted by ブクログ
入門というより批判本といった感じ。
決定できる政治を目指す橋下氏の独善に警鐘を鳴らしている。
全てをマニフェストに掲げて有権者に提起するのは無理と断言する橋下氏に、国民が白紙委任することの危険性は私達も考えなければならないと思う。
権限を使い即断即決することも時には必要であるかもしれないが、そのリスクもしっかり考えた上で、短絡的な迎合は避ける意志を持たなければならないと感じた。
Posted by ブクログ
いろんな場で橋下代表の反対派で登場する香山さんの、橋下批判。
独裁政治についての論ではなく、あくまで橋下代表の手法、発想の問題点を指摘する。
ツイッターでの短い表現によって、発言の背後にある状況やニュアンスを切り取り、短絡的な部分だけが歩いて行くというのは納得。
小泉さんの時もそうだっが、二者択一で迫ることの危険性もわかる。
一方で、グレートリセットを否定したり、文楽、児童館の補助金廃止が「利益至上主義」だというのは首をかしげる。
膨大な赤字で、必要な公共福祉がままならない現状なら、文化部分にある程度の負担、ないしは自立を求めるのはしかたのないことだと思う。
また、中頃で「カメラを入れた公開討論」に対して批判的に述べていたのに対し、終盤で「ムラ的な閉鎖性」も批判していたのは矛盾に感じられた。
ツイッター、ネット、TV、新聞問わず、自分の意見や着想点を一つに限定することは危険だと思った。
そういう意味では、七三一部隊やナチを引き合いに出して「渦中にいる人達が信じる正当性」について論じてた部分は面白かった。