あらすじ
負けても、"好き"はあきらめなくていい。
プロ棋士の養成機関・奨励会で降級退会の挫折を味わい、将棋をやめた高校生・銀谷悠月。
けれどかつて奨励会員だったことを知るクラスメイトの吉金露凛に、
自分の中の「まだ将棋を好きな気持ち」に気づかされた悠月は、再び将棋を指すことを決める。
プロを目指すのではない将棋“部”員として――。
これは、プロになれなかった少年の青春再生の物語。
感情タグBEST3
みやびあきのさんの新作
彼女の作品は割と好きです。
奨励会に入ったものの、6級のまま成績不振で退会した主人公、どちらかといえば多くの敗者(大抵は負けるものですので)に寄り添う存在ではないかと思いますが、まだ高校生くらいの年齢ではそこまでは見えないでしょう。
彼のファンだったとおぼしきヒロインとの対局などを通して、何かは動き始めるのだろうとも思います。
続きにも期待したいです。
Posted by ブクログ
将棋漫画と言えば、『3月のライオン』くらいしかまともに読んだ事がない人間なのだけど、それでも本作は特異に感じられたな
プロの将棋界と言えば、悠月が作中で説明しているように昇級・昇段が目に見える形で競われている世界の印象が強い。外野からそう見えるのだから中にいる人達はもっと熾烈な印象を覚えていたって可怪しくない筈で。
これはプロだけでなくアマの世界にも見えるね。互いの棋力を確かめる意味もあるのだろうけど、名前を名乗るのと併せて級数を名乗り合うなんて将棋以外ではあまり見られない光景だろうし
ただ、プロとアマだとその級数に纏わりつく重さがかなり異なるようにも見えるね
本作は悠月の挫折から始まる。それは実力が否定されただけに留まらず、彼の”好き”が変色していたショックも含まれていたのだろうな
それは向き合う事すら難しい感情だから露凛の誘いにも向き合えない。反面、将棋の教本は捨てられないし箱も閉じられないのだから未練は有る、というか未練が有ると自分自身に伝えようとしているかのようだったね
そんな彼にとって少し無理矢理な形で、勝利の報酬も有る勝負はとても都合が良いものだったんじゃなかろうか?あそこまでの条件が揃っているなら話を受けるのは”仕方ない”から
露凛の実力はかなり不足、悠月の感情を揺らがすものではない。だから悠月が揺らいでしまったのは実力ではない部分、負けそうな局面なのに楽しそうな表情。それは悠月が奨励会で忘れてしまった将棋への”好き”の具現だね
露凛は悠月が無くしたものをとても大切に持ち合わせている。彼の小さな「僕も楽しかったよ」には久方振りの眩しい感情が籠められているように感じられたよ
露凛と出会ったばかりの頃の悠月には奨励会的な価値観が纏わりついたままに見える
だから露凛との対局で将棋の楽しさは思い出せても、将棋会館で同じ楽しみは味わえない。というか、露凛とがそうであったように盤面上の実力では彼は楽しめない
その象徴が夜野達との対局か。三面指しで奇襲B級戦法なんて無茶苦茶を仕掛けられても悠月は楽しさを覚えない。露凛も混ざり夜野達と並んで対局する姿にようやく心の高揚を覚えるんだよね
それは悠月が奨励会よりも部活動方面に適性があったというより、そうしたワイワイ楽しむ将棋をこそ彼は好いていたのだろうと思えるシーンだったよ
最初に述べたように、私の中で将棋作品ってもっと棘々しているというか、どうしたら上へ行けるかとピリピリした雰囲気が漂っている印象が強い
それだけに棋力としてはそこまで高くないメンツが集まって部活動として将棋をする本作の雰囲気は独特に感じられるね
ただ、その為にピリピリした雰囲気でやって来た綺莉香に対して悠月の拒否反応が出てしまったのは仕方ないのかもしれない…
そもそもその前に話に出ていたのは高校竜王なんて上を目指す話だったわけだし
罅割れそうな心の行き先を再設定するにはやはり露凛との対局が必要で
というか、この娘は本当に悠月の”好き”を揺り戻してくれる良い子だね。でも悠月が露凛のそういう面を知ったのは対局を通してで、翠峰も同じように対局を通して露凛の人柄を知っている
それに倣うなら綺莉香に今の自分を正しく伝える為にはそれこそ対局の場へ向かう必要があり
タイトルを目指す戦いだけど、奨励会のような上を目指す戦いとは少し違う高校竜王。この部活動は悠月の将棋人生にどのような彩りを齎す事に成るのだろうね?