あらすじ
戦争を未然に防ぐために、女性には何ができるか? 貴重な三ギニー貨幣をどこに寄付すればよいのか? ヴィクトリア朝の家父長制の偽善とファシズムのイデオロギーを比較・批判し、反戦の基本的な構想を展開する。女性と文学を扱った『自分だけの部屋』と並ぶ、ウルフの代表的長編エッセイ。
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Posted by ブクログ
【三つの役割、一つの目的】戦争を防ぐためという目的で、とある「教養ある男性」から「私」に対して手助けが要請された。手持ちの三ギニー(注:かつてイギリスで使われていた貨幣単位の一つ)をどのように平和のために用いようかと考えた「私」は、寄付を三つの異なる相手に対して申し出るのだが......。著者は、『夜と昼』や『波』などで知られるヴァージニア・ウルフ。訳者は、本作以外にも複数のヴァージニア・ウルフの作品を訳出されている出淵敬子。本題は、『Three Guineas』。
月並な言い方になってしまいますが、いろいろと考えさせられることの多い作品でした。書簡による返答という形式をとっていることからも明らかなように、戦争を防ぐということに対して理路整然とした考え方が打ち出されている一冊というわけではないのですが、著者の並々ならぬ熱意と情念は読み手にはっきりと読み取れる作品です。
〜アウトサイダーは続けて言うでしょう、「なぜかと言えば、実際のところ、女性として私には祖国がないのです。女性として、私は祖国が欲しくはないのです。女性としては、全世界が私の祖国なのです。」〜
次は著者の小説を読んでみようかな☆5つ
Posted by ブクログ
1938年出版のウルフの長編エッセイ。
ヒットラーやムッソリーニなど全体主義の台頭、そして戦争の足音が近くなかでの戦争と女性の関係について論じている。
が、視点は、国際政治というより、イギリス国内、中産階級的な世界のなかにおける男女差別、家父長制の偽善というところにフォーカスされている。
そして、全体主義、戦争と家父長制、女性の抑圧といった問題がフラクタルであることを多くの具体事例をまじえながら、論じられていく。
1930年代のイギリスにおける女性という「階級」の扱いが、今から考えると、「まだこんな感じだったのか〜」と驚くと同時に、現在の日本はまだこれに近いのかもなどと思った。
エッセイは、戦争を防止するために、どこに三ギニーのお金を寄付するのかということを書簡の形で表現するスタイルをとっているのだが、具体事例が多くてリアリティがあると同時に、当時の状況が今ひとつわからないこともあり、今ひとつ理解が難しい。
ロジックの展開も、行きつ戻りつ、螺旋状に議論が高まっていく、あるいは深まっていく感じで、なかなか読むのに苦労する。
とても重要な作品であると思うが、訳者による解説を読んで初めて、全体的な内容がすこしわかった気になる感じかな。。。