【感想・ネタバレ】誰がためにその手はのレビュー

あらすじ

救いか、殺人か。

世界的権威の名医による6件の安楽死――
凶行の裏に何が?
魂を揺さぶる社会派ミステリー!

その日、速水哲平は食い入るようにテレビのニュースを見ていた。世界的権威である脳神経外科医・大道寺が殺人罪で逮捕されたのだ。彼は三ヶ月ほど前から立て続けに六件の安楽死を行い、そのうちの一人は速水の最愛の妹だった。なぜ妹は標的になったのか?〝神の手〟を持つと言われた男は、なぜ突如悪魔と化したのか。真相を探ろうとする速水だが、事件は予想もしなかった展開を見せ……。傑作医療ミステリー!

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Posted by ブクログ

越尾圭『誰がためにその手は』ハーパーBOOKS+。

最近、珍しくハーパーBOOKSから日本人作家の作品が刊行されているなと思ったら、新レーベルのハーパーBOOKS+が出来たようで、その新レーベルからの刊行のようだ。

越尾圭と言えば、『協力者ルーシー』『シスター・ムーン 協力者ルーシー 2』『なりすまし』と立て続けに面白い作品を刊行している作家で、個人的に注目していた。

本作はこれまでの作品とは全く違う路線の安楽死を巡る社会派医療ミステリーであった。単なる医療ミステリーだけに留まらず、安楽死の是非、安楽死を巡る関係者たちの人間模様と安楽死を実行した医師の死亡というミステリーが複雑に絡み合うストーリーである。

安楽死や延命治療については度々議論になる重い課題である。もしも自分が回復不能の病気や怪我で人事不省の状態に陥ったらば、安楽死を選択したいと思う。それが不可能であれば、延命治療の中止でも良い。昨年末に老衰で亡くなった父親も延命治療は不要と書いた手紙を家族と主治医宛てに残していた。立派な覚悟だと思う。


世界的な脳神経外科の権威で、国立東京脳神経外科病院の総部長を巡る務める大道寺輝彦が3ヶ月前から立て続けに6件の安楽死を行ったという内部告白により、殺人罪で逮捕される。

フリーライターの速水哲平は大道寺の手により安楽死した6人のうちの1人が妹の彩音であったことを知り、愕然とする。速水の妹の彩音は国立東京脳神経外科病院の看護師であったが、夜中に轢き逃げ事故に巻き込まれ、脳に深刻なダメージを受けたことから勤務先の病院で大道寺の手術を受けることになったのだ。

大道寺逮捕により、国立東京脳神経外科病院の院内は大騒ぎとなるが、そんな中、第一外科医長の星名達也の元に『大道寺輝彦医師の無実を訴える会』の代表を名乗る露木僚子という女性が現れ、星名に入会を勧めに来る。

一方、速水の元には安楽死に反対の立場を取るノンフィクション作家の田丸という男が接近して来る。また、国立東京脳神経外科病院の医療秘書で彩音の友人だったという北村志保が速水の元を訪ね、彩音が交通事故に遭う前に一緒に食事をしていたことを打ち明ける。何故、彩音は食事の後、馴染みのない千駄ヶ谷で交通事故に遭遇したのか、速水の頭の中で様々な疑念が渦巻く。

数日後、大道寺が東京拘置所内で突然倒れ、悪性脳腫瘍を患っていたことが判明し、国立東京脳神経外科病院で星名の執刀により緊急手術を受ける。手術は無事終わったのだが、その11日後に大道寺は死亡し、血液から一連の安楽死に使われた短時間作用型のバルビツールが検出される。

定価902円
★★★★★

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2025年11月19日

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