あらすじ
ついに封印を解かれたのは、著者初の「ノワール小説集」。嗜虐と背徳によって黒く塗りこめられた衝撃作!
深海魚 Secret Sanctuary
高校生の真央は友だちも彼氏もいないうえ、クラスメイトからいじめられていた。そんな真央が安息を得られるのは押入れの中だけだった。真っ暗にすると「海の底」のようで……。
楽園の破片 A Piece of Paradise
ニューヨーク発の急行列車は遅れていた。ボストン美術館での講演会でスピーチをする予定の響子は焦る。もうひとりの話者のレイとは7年間の不倫関係を清算したばかりだった。
指 Touch
私は私大の日本美術史博士課程の2年生。家庭を持つ彼の研究室で助手をしている。ある週末に奈良の室生寺を訪れ、ずっと手をつないでいる私たちは、どう見ても不倫カップルだ。
キアーラ Chiara
アッシジには10年ぶりの再訪だった。亜季は文化財の修復科のある芸術大学を休学して20歳で渡伊し、長年フレスコ画修復の修業をしていたところ、中部の大地震に見舞われ……。
オフィーリア Ophelia
わたくしは絵の中の囚われ人。水に浸ってあとひと息で命が絶えるその瞬間を、生き続けています。ロンドンから日本へ連れて来られたわたくしが目撃した、残虐な復讐とは……。
向日葵(ひまわり)奇譚 Strange Sunflower
超売れっ子の役者・山埜祥哉の舞台の脚本を書きたくて、脚本家の私は、ゴッホが主人公の脚本を完成させる。が、脚本が仕上がった直後に、ゴッホらしき人物の奇妙な写真を入手して……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これほどまでに心を奪われた短篇集に出逢ったのは初めて。
それぞれの作品で描かれた、闇の中に潜むエロス•絶望•希望•永遠。そのどれもが魅力的。
闇に溶け込んでいるため、外から見ると何も見えない。ただ、物語の中に入り込み、自身も闇の一部になるからこそ際立つそれら。
読みたて補正もあるけれど、一番好きな小説は何ですかと聞かれたら、本作を挙げるかも。
Posted by ブクログ
ちょっとまってーーと内心悲鳴が出ながら一編目を読み終えた
いつもひだまりのような温かみをくれる小説家として認識している原田マハ、読ませるなーーーこんな黒い一面を知らなかった、こっちもいけたんだ
だけど、締めくくり方は原田マハだ、どうしようもない胸糞ではない、ちゃんと彼女なりに救ってくれる
私はそのセンスが好きだ
Posted by ブクログ
美しく官能的な絵画に近づけば、途端に心奪われ沼地へ誘われる。黒々とした色はよく見れば血。著者初めてのノワール小説ということで、一篇目からかなりの衝撃。これは...私の知ってるマハさんじゃない(いい意味で)
Posted by ブクログ
『深海魚』
『楽園の破片』
『指』
『キアーラ』
『オフィーリア』
『向日葵奇譚』
ほの暗さを感じる6編。
原田マハの『サロメ』が好きなので楽しみにしていたのですが、読み始めてみるとその暗さとも違う。
こんな原田マハは初めてだな~と。
テイストは好きなのだが、正直思ってたよりハマらず。
いつもは読むスピードが上がる原田マハ作品が、少しずつペースが落ちていってたのですが、後半2編は私好みで読みやすい。
そう思ってたら、前半4編は作家1~2年の頃の作品なのだとか。
そう知ったら読み直したくなってしまうのは、やはり原田マハが好きなのだ。
オフィーリアは芥川龍之介『地獄変』を下敷きに創作されたそうです。
Posted by ブクログ
文庫化まで待とうとずっと待ち続けてようやく文庫化!原田マハさんの著者初めてのノワール小説ということで、これまでとはまた違うダーク感漂う雰囲気でのめり込んで読めました。この後味の悪さも面白かった、、、
Posted by ブクログ
思ってたのと違った。原田マハさんっぽくない話だなと思った。
深海魚の、思春期の描写が、私を見ているようではずかしくなった。原田マハは思春期女子の心情描写にも長けているのか、と驚いた。
向日葵奇譚が1番面白かった。
Posted by ブクログ
1から4作目までは物語の狂気が無理に書いたもののように思てしまって没入出来なかった。
5、6作はそれぞれゾクっとするフィクション作品として楽しめました。
Posted by ブクログ
ノワール小説と聞くと、犯罪や異常心理をテーマとした暗黒なストーリーを思い浮かべたが、これは黒画用紙に黒で絵を描くような見える人には見える暗黒さのように感じた。
原田マハさんの作品を読むのはこれが初めてなので、著者のもう一つの顔、禁断の小説と言われても、いまいちピンと来なかったから、この感想になったのだろうか。
大雑把な真っ暗ではなく、目を凝らすと暗闇に浮かび上がる更なる黒を美しく描いている。
特に深海魚と向日葵奇譚がホラー感があり、ぞわぞわとした黒さでよかった。
絵画に詳しくないため、実際の絵をネットで調べながらストーリーを読むと、より一層黒い世界に耽溺できるかもしれない。
Posted by ブクログ
原田マハ『黒い絵』講談社文庫。
著者初となるノワール小説集ということだ。7編を収録。
ノワールでも原田マハは手加減しないようだ。しかし、『深海魚 Secret Sanctuary』と『楽園の破片 A Piece of Paradise』こそ、原田マハの新たな面白さを感じたが、他は並以下の出来だった。
『深海魚 Secret Sanctuary』。
ノワールを通り越してホラーの世界に誘うような短編。高校で激しい苛めに遭う真央は押入れという海の底で深海魚となる。そんな中、小学生時代に離れ離れになった友人の流花が現れ、かつてのように禁断の遊戯に没頭する。今の時代の苛めは加減を知らず、もはや犯罪レベルのようだ。
★★★★
『楽園の破片 A Piece of Paradise』。
非常に残酷な短編だ。誰もが不倫という楽園の先にあるものが何か知っているのだが、それを描く残酷さ。ボストン美術館での講演会で『楽園の断片』というテーマでスピーチをする予定の43歳の響子は焦っていた。ニューヨーク発ボストン行の急行列車は霧のため遅れていたのだ。
★★★★
『指 Touch』。
またも不倫物。赤裸々の女性の立場から見る男性の自分本位なセックス。主人公の女性は私大の日本美術史博士課程の2年生で研究室で助手をしていたが、その研究室の先生とは不倫関係にあった。自分本位なセックスに満足する彼に指の使い方を教えようとする主人公。歳上の男性を取り替え引っ変えしていた主人公が本当に求めていたものは。
★★★
『キアーラ Chiara』。
やや長い短編。長い割には実のあるストーリーではない。絵画の修復師を辞めた主人公が過去にばかりこだわるのがどうにも受け入れられない。
アッシジを10年振りに再訪する亜季は、10年前に文化財の修復科のある芸術大学を休学し、20歳でイタリアに渡り、フレスコ画修復の修業をしていた。そんな中、イタリア中部が大地震に見舞われ、貴重なフレスコ画が壊滅的な被害を受ける。★★★
『オフィーリア Ophelia』。
絵画に描かれた女性の視点で語られる物語。意欲的な短編ではあるが、面白いとは思わない。ロンドンから日本に渡り、ショーウィンドウに飾られることになった絵画の中の女性が見たもの。
★★
『向日葵奇譚 Strange Sunflower』。
狂気に駆られたという悲劇の天才画家のゴッホにまつわる奇譚。超売れっ子の役者である山埜祥哉の初舞台の脚本を書くべく、脚本家である主人公がゴッホが主人公の脚本を完成させる。しかし、脚本が仕上がった直後に、ゴッホらしき人物の奇妙な写真を入手する。★★
本体価格700円
★★★