あらすじ
「なぜ『あんな絵』に高い値段がつくのか?」「これって本当に『美しい』のか?」。ピカソの絵を目にして、そんな疑問がノド元まで出かかった人も少なくないだろう。その疑問を呑み込んでしまう必要はない。ピカソをめぐる素朴な疑問に答えれば、素人を煙に巻く「現代美術」の摩訶不思議なからくりもすっきりと読み解けるのだから――。ピカソの人と作品に「常識」の側から切り込んだ、まったく新しい芸術論。
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Posted by ブクログ
『ピカソは本当に偉いのか?』
★★★★★★★☆☆☆
本書は、以下の疑問を投げかけている。
1. ピカソの絵(「アビニョンの娘たち」を中心として)は本当に美しいのか、どこがうまいのか
2. 見るものにそういう疑問を持たせる絵がどうして偉大な芸術とされるのか
3. どうしてこれほどの高値がつくのか
4. ピカソのような絵は誰でも書けるのではないか
5. そう思わせるような絵を偉大とする美術界はどこかおかしいのではないか
6. そういう絵にこれほどの高値をつける美術市場もどこかおかしいのではないか。
それらに対する返答。
1. ピカソの絵は、それ以前の美術の基準に照らせば美しくない。 しかし、ピカソの絵は、超絶なデッサン力に支えられており、非常にうまい。
2. ピカソの絵は当時求められていた前衛芸術であり、衝撃によって人々に従来の基準への疑問を抱かせることを狙っていた。
3. ピカソが現れた時代、それ以前の教会を飾ったり貴族の家を飾 るという実用性のある美術と異なり、美術館に入れるための絵が求 められており、美術品自体の主張が必要とされていた。 はその需要に応えていたから、高値がついた。
4、ピカソの作品は、高い技術と巧妙な市場戦略に支えてられており、亜流の作家では真似ができない。
5. ピカソの絵は、絵がもっぱら美術館に飾られるものになったと言う文化の変化に対応するものであり、その方向をうまく追求しているために偉大とされている。
6. 美術が儲かるとする投資家、画商、オークショニアの力により美術市場が支配されているため、高値がついている。また、新しい作家を育てるよりも、既に定評のある作家の作品の値を上げる方が、投資として効率的であると言う戦略に基づいて、ピカソの絵の価格が上がっている。
まあ、特に今の日本に生まれ育っていて、わざわざ現代アートなんかにハマる人ってのは相当変だし、ぶっちゃけ物の善し悪しをよく分かってないと思いますねー。
#読書 #読書メモ #読書感想 #ピカソは本当に偉いのか #現代アート #現代芸術
Posted by ブクログ
「自分語り性」と「前衛性」
美術史上、ピカソほど生前に経済的な成功に恵まれた画家はいないらしい。そんな彼の「偉大さ」を問い直すといった内容だ。ピカソファンとしては改めて彼の「偉大さ」に敬服することとなった。ピカソの作品は、油絵だけで1万3千点、版画や素描や陶芸など、油絵以外の作品は13万点を超える。
16世紀の宗教改革を契機として、絵画の買い手が教会から市民となる。主題を失った画家たちが描き始めたのが市民の肖像や市民生活の一場面や静物や都市景観や田園風景といった世俗的な題材で、風景画や静物画といったジャンルはこの時期のオランダで生まれた。画商のおこりもオランダである。(17世紀)そして、18世紀終わりのフランス革命で絵画彫刻が王侯貴族というスポンサーまでをも失い、市民経済(市場)に頼るしかなくなる時期に、印象派という前衛絵画が登場する。印象派絵画が「アメリカ値段」で取引されるなどして絵画バブルが起こる。そこに現れたピカソは、絵画史上初めて登場した「最初から投機目的で買われる絵画」を象徴する存在となった。美術史の流れの中でのピカソの存在を捉えることができた。