あらすじ
強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎は,戦争を生み出す人間の内なる暴力性と権力性を死のまぎわまで問い続けた.彼はシベリアでいったい何を見たのか?抑留者たちの戦後を丹念に追った著者が,シベリア抑留の実態と体験が彼らに与えたものを描きだす.人間の本性,私たちが生きる意味を考えさせられる1冊.
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Posted by ブクログ
石原吉郎という人を知りたかった。彼の詩、エッセイに感銘を受けた。この本は、「シベリア抑留」ではなく、「石原吉郎という人」にフォーカスを当てているように思う。その点では私にとってすごく良かった。逆に言えばシベリア抑留を知りたい人は少し物足りないだろう。石原吉郎の作品を何作か読んでから読むことをお勧めする。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎は、戦争を生み出す人間の内なる暴力性と権力性を死の間際まで問い続けた。
彼はシベリアでいったい何を見たのか?
石原を軸に抑留者たちの戦後を丹念に追った著者が、シベリア抑留の実態と体験が彼らに与えたものを描き出す。
人間の本性、生きる意味について考えさせられる一冊。
[ 目次 ]
プロローグ
第1章 封印された過去
第2章 ラーゲリの記憶
第3章 戦後社会との断層
第4章 詩人へと連なる水脈
エピローグ
付録 三編の詩・石原吉郎
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
こういうテーマの本がジュニア新書で出るとは予想もしませんでした。
ええっと、岩波ジュニア新書は中学生・高校生むきに書かれた本ですが、読みやすく平易に書かれているだけで、内容的・質的にはレベルダウンしていません。
私も数十冊持っていますけれど、未知の分野で教わることの多かったものが随分あります。
ラーゲリ(強制収容所)とは何か?
地獄の方がまだましと言われるラーゲリから生き帰った詩人・石原吉郎が、生涯にわたって問い続けた、戦争を起こす人間の内部にある暴力的なものと権力をめぐる問題。
人間の本質的なもの、生とは何かを探りつづけた彼が、シベリア体験から行きついた「死者を掘り起こす」ということが、もうひとつ私たちには理解しにくかったのですが、数えきれない生還出来なかった死者を見て、死の一歩手前=生の極限を味わった者として、出来ることの唯一のことであるということかもしれません。
そういえば、このことに似ている気がするのは、1984-85年に澤地久枝が、『海よ眠れ』や『記録 ミッドウェー海戦』で、日米両方の全戦没者を特定するというとてつもない行為を完遂したことがありましたが、高校生の頃にこのことを知った私は、澤地久枝という人の戦争に対する憎しみと悲しみの深さを、全身で受け止めようと努力しました。