あらすじ
今まで何を聞き書きしてきたのか――。厳しい自己認識から再出発した著者は、土地の記憶を掘り返し、近代の残像を探りつつ、剥き出しの海辺に「来るべき日本の姿」を見出していく。津波から逃れた縄文貝塚、名勝松島の変貌、大久保利通が描いた夢、塩田から原発、そして再び潟に戻った風景……。日本列島の百年を問う渾身の一冊。
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Posted by ブクログ
前半の「新章東北学」が素晴らしい。著者はご自分のことを中途半端なフィールドワーカーと言うが、それは専門職だからこそ言いうる。その謙遜、ある意味での沈黙こそが本書を豊穣なものにしている。
後半は、民俗学がベース。前半との重複も散見される。
・そこで見たこと、感じたこと、考えたことを起点にして、これからの表現がはじまるはず。
・時給300円の仕事場。もの作りの拠点の現実。
・原発から自然エネルギーへの転換は、東京一極集中の中央集権的なシステムを地域が主役となる地域分権型のシステムへ変えることにつながっている。
・「までい」。汚染の中にというのではなくて、この困難な状況のなかに踏みとどまって、覚悟を決めて、すべてを引き受けようとしている。
・分断のラインは幻想的。グラデーションの中に無理やり裂け目をいれて、あちらとこちらを分断する。
・犠牲者の2/3が60才以上の高齢者だった。
・世代間の対立。個と家、ムラ。
・「どんな発現にも敬意を持って耳を傾けよう」
・一本の線で自然と人間を分けられるという建築や土木の手法は間違いだった。
・所有と入会。新しい公共のモデル。
・「大丈夫だ、きっと立ち直るから」
Posted by ブクログ
非常に読みやすい文体で書かれていて、さらっと読めます。
時々胸につまるような体験者の記録が書かれている。
時が流れるにつれて、薄れていく被災地の記憶は、風化ではなく浄化で
あるべきだという一文に気を惹かれた。
浄化の意味で忘れていくことは、決して罪ではない。
被災地に限らず、誰かを喪った体験を持つすべての人に、
訴えるものがある本だと思いました。
Posted by ブクログ
東北学の赤坂先生の被災地をめぐる軽いエッセイ。
ときどき光る言葉あり。
(1)この泥の海に回帰した干拓地をいかに復興するか。誰もが描く水田への復旧のシナリオには、すでにリアリティが失われていることを、あきらかにしておく必要がある。(p195)
(2)民族芸能はなぜこれほどまでに素早い復興をとげることになったのか。おそらく、東北の夏の祭りや民族芸能が、多くは鎮魂、供養、そして厄払いをテーマとしていることと深いかかわりがあるにちがいない。(p160)
(3)被災地の現実はこの国の未来図です。(p66)
復興に苦しむ東北のことは、いつか全国でもっと高齢化が進み経済力が衰退している日本が直面する課題だと思って取り組もう。