【感想・ネタバレ】侵蝕列車のレビュー

あらすじ

変異する悪夢の地を列車は走る──新鋭の第一長篇

1899年、北京発モスクワ行きの列車に乗りこんだ偽名の女マリヤ。異形の〈荒れ地〉と化したシベリアで列車に謎の少女が現れるが!?

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Posted by ブクログ

英国の新鋭サラ・ブルックスのデビュー長篇。

改変歴史ものSFで、北京とモスクワを結ぶシベリア横断急行の機関車の中で繰り広げられる物語。

人間が安心して暮らせる土地はターミナルである北京とモスクワに限られており、路線の途中の土地は<荒れ地>と呼ばれていて、未知の生命体が蔓延っている、という世界観。三人の語り手がおり、視点が章ごとに入れ替わる構成になっている。

これはかなり個人的な好みの問題だけど、この三人の語り手がいる、というのがちょっととっつきにくかった。後半になると章が細かく、視点人物の入れ替わりが激しくなって位置関係が把握しづらい。章ごとに切り替わるので、あまりに突飛すぎる視点変更というわけでは無いのだけど。

ゲームを進めていたら急に操作キャラクターを変更されちゃうような感じ。

ストーリーにも色々な要素の片鱗が混ぜ込んであり「危険な土地を走り抜ける超巨大列車」という奇抜な設定一本だけに頼って書かないぞ、という意欲は凄く感じた。多角的で多要素。この辺りは作者のテーマであろうとも思ったので、この目まぐるしさこそ意図であるのかもしれない。

この驚異的な<荒れ地>を旅行する人向けのガイドブックからの引用が章のエピグラフとして添えられている。この列車に乗る人間たちから一番信用されている本、という設定のガイドブックだ。

旅行に行くとき、見るべきものを見逃すことが無いよう、危険な目に会わないよう、人はガイドブックを読むけれど、旅行とは今までに無い体験、予想外の出来事も一緒に期待する。そうした人間の矛盾した欲望と行動力が渦巻き、異形たちも蠢く、生命力のあふれる物語だった。

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2025年12月20日

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