【感想・ネタバレ】日本語の宿命~なぜ日本人は社会科学を理解できないのか~のレビュー

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Posted by 読むコレ 2013年04月08日

 私の長年の「日本の翻訳文化・翻訳語」についての関心・疑問に十分答えてくれており、感動しました。それは、柳父章さんの「翻訳語の論理」を知ってからのことですが、これには、大江健三郎さんの「あいまいな日本の私」が一定答えてくれてもいました。
 ついては、この著書がその「あいまい主義」をより明確にしてく...続きを読むれましたので、日本語の「宿命」を切り開くべく、再度読んでみようと思います。

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Posted by ブクログ 2013年02月26日

この本はすごい!!!!日本の国語教師は全員読むべきだ。
・野球のストライクと労働のストライキは英語は同じだが、日本語になると全然違ってしまう。
・動画とは、日本では昔アニメのことだった。
・日本で外来語を翻訳する際につくった造語が独り歩きし、元の意味とは違う独自の意味を帯びるようになっていく。
・『...続きを読む全訳 漢辞海』
・『現代に生きる 幕末・明治初期漢語辞典』
・コミュニティーとササイエティの違い。
・フランス語では、炊き出しの場所もマクドナルドもレストランと呼ばれる。
・「小説」は坪内逍遥による造語。ノベルは「新話」とでも。


・2012年4月29日。フランス大統領選挙にのぞんだオロンド候補は、一方の手にフランス国旗、もう片方に欧州旗を持ち「私がナショナリズムに対置するのは愛国心である」と主張した。
→ナショナリズムと愛国心は異なる!
フランス語の場合、愛国心の対象はnationではなくpatrie(祖国)である。フランス国歌でも、要するに自分たちの国家体制を転覆する運動が祖国の名の下で遂行された。祖国を愛するゆえに君主を処刑したのだ。ただし元来のナショナリズムもまた、フランス革命を契機にヨーロッパに広まったもので、基本的には左派的な系列に属するものだった。その背後には、君主への忠誠から、国家や国民といった集合体への忠誠心という価値転換があった。しかし19世紀末ごろから、ナショナリズムの意味が変化していく。民主制や共和制といった価値ではなく、民族の伝統や血統を重視する思想となっていった。これが今日まで続く右派的なナショナリズム。
一方愛国心は祖国を愛することであり、君主崇拝でもないし、現行の国家体制を支持することでもない。自国民の優越性を掲げることでもない。郷土愛に近い。ちなみにフランス人は愛国者を自称するが、フランス国歌を歌ってみろというとたいてい1番で終わってしまう。
・riverとrivalは関係がある。川をめぐって争う人というのが原義だから。
・首都と資本はcapital。何の関係があるか。両者とも中央集中という共通性がある。
・明治時代、学歴主義という言葉は、藩閥主義に対抗する良い意味を持っていた。
・共和国という表現が、フランスのジャコバン派による恐怖政治を連想させたので、ドイツでは代わりに法治国家という表現が用いられるようになった。
・漢語の「民主」は民の主、つまり君主を指す表現。
・民主はギリシャ語由来で、共和国はラテン語由来という違いがある。共和国とは「みんなのもの」という意味で、君主政体でもその国がみんなのものなら共和国と呼べる。たとえば皇帝ナポレオンと刻まれた硬貨の裏面にはフランス共和国と刻まれている。
・NGOは非政府組織とするなら、宗教団体も暴力団も入るのか?NPOはアメリカ起源、NGOは欧州起源。NPOはコミュニティ型で、NGOはソサイエティ型。
・日本国憲法中の「恵沢」とは神の恵みのこと。
・インディビジュアルとは、全体を前提とした個であって、全体から切り離した個ではない。

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Posted by ブクログ 2022年02月20日

関心が高いテーマだったので、大変興味深く読みました。

文字を発明できなかった日本人は、漢字を輸入した際に、抽象語の殆どを漢語に任せてしまいました。当然、真に理解などできません。

日本語の二重の悲劇は、西洋の概念を翻訳する時に、同じく外来語の漢語に訳すしか方法がなかった事です。

民主主義など、「...続きを読む日本では中身の理解を伴わず、具体的な”やり方”すなわち形式や手続きだけが一人歩きするようになった」と本書は述べていますが、概念が理解できないから具体的な方法を知りたがるのか、もともと概念に興味が無い民族なのか。どっちなんでしょうね。

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Posted by ブクログ 2014年02月01日

惜しい。
着眼点は良く、取り上げる言葉も社会学者としての専門性と一般人の興味がちょうど重なる領域のものが選ばれていて、そこから日本人の思考の流れの癖のようなもの、そして議論の方向性のようなものに関する考察が提示されるものと期待した。
しかし、内容はほとんどが語義の解説に割かれ、備忘録に集めたメモを集...続きを読む約しただけのものになった。
惜しい。特に「民主主義」のところを深堀りできていれば極めて有益な日本語論、日本人論に発展できただろうに。
著者が社会学者であるだけに残念。ここまで気づけていながら…
新書ではなく、単行本での大幅増補を求む。

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Posted by ブクログ 2015年01月07日

西洋のシステムを移植するということと翻訳とは同時であり、その瞬間に誤解は始まっている。そして、私たちは本著者のように何度も何度も鏡を見てはselfreflectionを健気にも続けるのだ。漱石先生が胃痛とともに持ち帰ったコンプレックスは反芻され、「日本」の「近代」との居心地の悪い同床異夢はやがて「宿...続きを読む命」として自覚されるということになる。このコンプレックスは丸山昌男などに典型的に見られるが、図式は今も変わっていないということだろう。反対に西欧人の方が、日本のシステムに新しい成熟の形を見るということが時折あるというのに。ともかく、西洋に「個人」「民主主義」「共和国」への「正しい」理解と「正しい」構築があるのだというのは、もう、ちょっと、いただけない文脈である。まあ、こうやって、いつもいつも、せこせこせこせこ鑑み、顧み、省みしているのが、「慎んで怠ることない」日本人の姿勢を表しているとも言える。

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Posted by ブクログ 2012年12月27日

社会、市民、民主主義、権利…といった用語は翻訳語だが、日本語や漢語の語感にひきずられることで、原語のニュアンスから離れ理解が難しくなってしまう、という話。確かにそうだなと思う。

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