あらすじ
いつか崩れて自然へと回帰していく姿に魅せられ、「私」は廃墟を作り続けてきた。時の経過によって醸成される廃墟こそが、その国の文化的成熟度を表すのだ。だがある時、「偽装廃墟」が問題となり…。(「廃墟建築士」)。七階での事件が多発し、市は七階の撤去を決定した。反対する市民は決起集会を開くが…(「七階闘争」)。意識を持つかのような建物に現実と非現実が同居する、不思議な4編の物語。
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Posted by ブクログ
廃墟が好きで、たまに見に行く。
廃墟に突如行きたくなる。
廃墟は結構怖いところなので、なかなか行けない。だから、写真集を買って、眺めたりする。
完全な自然の姿なんて、目に触れられるところには存在していないと思っていて、
もし探検家が未開の地に行ってその風景を私が目にしたとしても、探検家の目というフィルターが入った時点でもう自然の風景ではないと思う。
廃墟の魅力は、もとは生きた町として存在していたものが、死にゆく姿をみることができるという点だと思う。
表題の小説を含め、廃墟に対する思い入れが、尺者と一致して気持ちよかった。
蛇足になるが、生きた町が死にゆく姿を見せるという点に関して言えば、世界遺産に認定された町は、その時点で、それ以上成長が制限されるので、これ以上ない廃墟だと思った。
Posted by ブクログ
なんとなく感想が書きにくい。そんな読後感の本。
『失われた町』が良かったのでこれを買ったが、最初の短編を読んだときには「(買ったことを)間違ったか?」と思った。
「最初に本書を読んでいたら他の著書は買わなかったかもしれない」と思いながら読み進めたが、読み進めていくうちに、短編の順番はこの順で良いと思うようになった。
本文も良いが、解説が秀逸で、まさに"何かが書いてある"だ。
むずむずとしたものがあるのだが、それを感想として文章に吐き出しにくい。それをうまく表現したのがその言葉だ。
名詞や概念を入れ替えることで不思議な世界観を演出している本作だが、最初の短編(『7階闘争』)は、私が戦っている側に感情移入できない(解説に言わせれば、"すぐに別の階に移っていく多くの人々")ので変な話だと思ったのだろう。
さみしさ(哀愁かもしれない)を感じる不思議な雰囲気の話は良かったが、一方で『失われた町』と同じ作風で、「作品の幅がない人なのかもしれない」という疑念も生じたので、前作ほどの感動がなく、4点ではなく3点となった。
Posted by ブクログ
ただの7階ではない「特別な7階」とか、
「廃墟になるために建てられた建物」とか、
不思議な事象なんだけど、その世界の住人には当たり前のこととして描かれている。
7階がなくなるはなしは、最初から仕組まれていたのでは?というあたりがじわじわくる。
表題作の連鎖廃墟がとにかく美しい。文化としての廃墟は、あったら見てみたいけど…でも「見なし廃墟」の方が魅力的じゃないかなあ。