あらすじ
児童養護施設で育った元不良の翔太は先輩の誘いで「カタラ」という会員制バーの従業員になる。ここは言葉巧みに女性を騙し、惚れさせ、金を使わせて借金まみれにしたのち、風俗に落とすことが目的の半グレが経営する店だった。〈マニュアル〉に沿って女たちを騙していく翔太に有名私大に通いながら〈学び〉のためにカタラで働く海斗が声をかける。「俺たち一緒にやらないか……」。二人の若者を通して日本社会の歪み、そして「本当の悪とは何か」を描くベストセラー社会派小説、待望の文庫化。〈解説・豊崎由美〉
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Posted by ブクログ
作中の翔太に影響されて、稚拙ながら人生初レビューです…笑
海斗のような"グレーな人間"こそ"人間の真の邪悪"なのではないかというメッセージは、地域や歴史を問わず存在する"人間の醜さ"を的確に表現していると思います。
自分ごとですが、私の身の回りにも「法で裁かれないことをしてなんで悪いの?」といった論調で、悪意を持たずして他者を傷つける人がいました。私は「なぜ悪いのか」を上手く伝えることができず、納得もされなかったため、今でも違和感と不快感が残っています。ラストシーンの翔太と海斗のやり取りには、当時の私達の会話に通じるものを感じました。
"誰にも裁けない悪"を"悪"とも思わない人間に対する不快感や諦め。本作では、私達が普段の生活で確かに感じているにも関わらず、上手く言語化できない感情が描かれているように感じました。
Posted by ブクログ
面白かったです。
翔太の話が特に良かった。
逆に海斗については生きる世界が違い過ぎて興味深かったです。
海斗に似た人として特定の方を思い浮かべる人も多いんじゃないかなと思います。
私は翔太のような人よりも海斗のような人の方が思い浮べやすいので、その事実に少し悲しいなと思いました。
そして海斗は恵まれた環境で育ってきたのに…という書かれ方ではありましたが、海斗にとって本当に恵まれた環境だったのか?というところは疑問に思います。
海斗が突き進んだのはお手本となる人達、そしてそれを助長する人達がいるからでもあると思います。
もちろん海斗が選択してきた結果ではありますが、海斗もある意味被害者なのではないのかなと思っちゃいました。
海斗の幼少期なども気になります。
Posted by ブクログ
本作は単なる半グレを題材にした犯罪小説ではなく、「本当の悪とは何か」を読者に突きつける重厚な社会派エンターテインメントだった。暴力や搾取だけでなく、その背後にある社会の歪みまで描き切る筆致には圧倒される。
物語は終始重苦しい空気に包まれている。それでもページをめくる手は止まらず、一気読みせずにはいられなかった。息苦しい展開の連続なのに、不思議と目を離せない吸引力がある。
特に印象的だったのは、翔太と海斗という対照的な二人の存在だ。同じ世界に身を置きながら、異なる価値観と選択によって歩む道が大きく分かれていく様子は見応えがあり、人は何によって形作られるのかを考えさせられた。
また、作中で描かれる半グレや権力構造、人間の欲望はフィクションとは思えないほど生々しく、現実の社会問題を連想させるリアリティに満ちている。ただスリルを味わうだけでは終わらず、読後もしばらく「本当の悪」とは何なのかを考え続けてしまう一冊だった。重厚で読み応えのある社会派小説を求める人には、ぜひおすすめしたい。