あらすじ
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ? 「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。社会に適応しつつも、常に違和感を抱えている人たちへ贈る全3話。芥川賞受賞第一作。第74回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
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Posted by ブクログ
まず、読後感は良くない。この後直子はどうなってしまうのだろう。こんなにいい子に生きてきたのに、まるっきり直子だけが悪いわけではないのに、悪者になって、大地も直子を変な目で見て、別れて、女子アナ系と付き合って、「元カノ、実はサイコだった」みたいな話をするのだろうか、と考えると、悔しさのような、とてもいたたまれない感情が襲ってきた。
そんな気持ちになるくらい、直子に入れ込んでいたのだと2回読み終わって気付く。客観的に引いた図で見ると、直子も直子だし、ちょっとおかしいと思う。でも直子という名前の通り、彼女は彼女なりの真っ直ぐで突き進んで生きてきたのだろう。
「心は、どうしてこんなにばらばらなんだろう。ばらばらで、全部が全部本当であるために、引き裂かれるというよりは、元々ばらばらだったものを集めてきて、心のかたちに並べたみたいだった。」
あとは直子が、裏とか表とかじゃなくて、どれも全部私。というようなことをいっていたのが印象的だった。人間ってそうだよね、って。この物語は、人間の人間らしいところ、ばらばらだけどひとつなところ。人間の嫌なところ、だけどそれでいて本質的なところ。それがつまっていた気がした。
読後感がいい訳じゃないのに、なんだか安心する。また読みたい、この世界にいたい、と思う。
Posted by ブクログ
何ができたらいい子なんだろうかと考えさせられる。自分だけが嫌な思いをするのは割に合わないという考えは非常に捻くれた考えだが、わからないでもない。
ぶつかってくる自転車を避けずにあえてぶつかる。自転車に乗っていた中学生のTwitterを特定して時々リプライする。よろけた中学生に車がぶつかる。車に乗っていた女性が働くスーパーを見つけ出し、アンケートに書こうとする。あまりに陰湿すぎる。でも、それを自分以外に見せることを憚る気持ちは持ち合わせている。
職場の人にも彼にも友達にも話す内容を選ぶ。結婚する相手にもそこまで気を遣っていたら疲れてしまうよな〜と思いつつ読み進めたところで発覚する浮気。本性を見せすぎないようにしていると、人の心は離れてしまうのかなぁ。
誰しも、相手によって自分を使い分けていると思う。友達に話すことと恋人に話すこと、職場で見せる自分と家で見せる自分が違うのは、悪いことではないし、生活していくために必要な配慮でもある。
ただ、相手に合わせて自分を調整することと、相手に嫌われないために自分を抑え込むことは、似ているようで違うということなんだと思う。
前者は、自分の意思で関わり方を選んでいる。後者は、相手からどう見られるかを優先するあまり、自分の感情や欲求を表現できなくなってしまう。
自分を使い分けていても、全員にいい人だと思われることは難しい。自分を守るために選んだ振る舞いが、かえって自分を苦しめ、人とのつながりを損なってしまうこともあるのだろうな。
Posted by ブクログ
文庫化してくれて嬉しい。
めちゃくちゃ共感した。私も高校生の時に自転車に乗っていて車の運転手が絶対こっち見てないと思ったから体当たりでわからせてやると思ってぶつかったことがある。その時も警察には通報しなかったけど、すればよかったなぁって思った。
私の旦那も大地タイプでめちゃくちゃいい人。(大地は浮気してたけど)一緒にいると自分はごみみたいな人間だなぁ、なんでこの人は自分を選んだんだろうって思うこともある。
自分の思ってること直子が全部思ってくれてる。この感情がわかる人がいるんだと思ってなんかスッキリした。いい人に見えても実際その人が何を考えてるかなにをしているかなんてわからないし、人を見た目で判断しないように気をつけようと思った。
会う人によって話す内容、話し方を変えるのは自然なことでは?と思った。どの自分が本当の自分とかない、表も裏もない全部自分。