あらすじ
『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』の次はこれだ! 圧巻の社会派青春群像劇
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。標的は大手自動車メーカー〈ユシマ〉の非正規工員・矢上ら4人。だが、突如発生した火災に乗じて4人は逃走する。誰かが警察の動きを伝えたのだ。所轄の刑事・薮下は事件に裏があると読んで独自に捜査を開始。さらに超法規的手段で日本を一変させようとするキャリア官僚が野心のために動き出す―。格差と分断の社会を撃つ、瑞々しく切実な社会派青春群像劇!
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Posted by ブクログ
天上の葦や犯罪者がとても面白かったので、期待して購入。労組潰しのために共謀罪を使う権力者の横暴という、他の作品と通底するテーマ。ただ、あれだけ団体交渉が進んでいて、ネットに副社長と団交した時の画像まで上がっているのに、全て無かったことにしようとするのは、現代の炎上の状況からして、権力者側としては、やや杜撰な戦法ではないかと感じた。また、矢上達が文庫の本で啓蒙されることが本作における重大な契機であるが、現実の矢上のような境遇にある人が同じ状況になったとしても、夏休みを満喫するだけで、おそらく文庫の本は読まないのではないかなと感じた。そういう意味で、少々野暮な感想ではあるが、リアリティに欠くなと感じた。
Posted by ブクログ
かなりのボリュームでかなりの大作!
これ働く人、選挙権のある人は皆読んだ方が良いのでは?と思うほど。
地元を支配下に置く大手自動車メーカーの非正規労働者の4人があることをきっかけに自分たちの世界に疑問を持ち闘いを挑むというお話。
いやね、もう病院も葬儀屋もあって警察もグルで地元民はみんなユシマの恩恵の上、生活が成り立ってるのならそら、声をあげるのも疑問に思うのも無理だよ。
読んでいて矢上たちを応援する気持ちが大半なんだけど、この国の在り方に、衰退途上国ということに愕然とした。
もー本当にクソだなという感じ。
言葉悪いけど。
こんなことが許されるのかとびっくりした。
でも本工、期間工、派遣工がひとつになってストライキを起こすところは泣いてしまった。
Posted by ブクログ
ルールはルールだろと思ってしまう部分があるので、従うだけでなく抵抗する選択も持たないとなと思った。平和にサラリーマンできてるのは、過去の血みどろの闘争あってこそというのを少し実感した。
自己責任論を振り翳して労働階級同士で蹴落としあい脚の引っ張りあいするのはSNSでよく見る光景であり、それへのアンチテーゼが含まれてるなと思った。村上とか五十畑とか紙コップ君とかに類する人よく見るもんな。資本家階級からしたら都合が良すぎる状況だよなと思う。奴隷の鎖自慢とか揶揄されることあるけど、あんまり変だと思ってない人いっぱいいる。
犯罪者シリーズと比べてエンタメ要素が少なくて説諭感強めに感じた。途中、4人の読書歴を探るところが評論文みたいで疲れた。少し勉強にはなったけど。
Posted by ブクログ
自動車の部品メーカーで働く非正規雇用の4人が労働組合作って会社と戦う話。
4人は「馬鹿」と色んな人に言われるけど、
思ったより難しい言葉が会話の中で出てくるな、、とか、今まで本なんて読む時間も興味もなさそうだったのに急に憲法とか雇用に関する本読めててすごいやん!がちょっと違和感だったのと、
私的に玄さんとの関わりがあまり描かれてない気がして(この人なぜこの4人を選んで家に呼んだ、、?何する気、、?という警戒心が私の中で強かった)、だから玄さんに対してあそこまで熱くなれるのもちょっと置いて行かれた感があった。
この本の内容をそのまま受け取ったら日本クソじゃん!ってすごい思うし、
やっぱ世界から見ても社畜文化なんだな〜とは簡単な思える。思えるけど、どこの国もこんな裏側はあるのでは?とかも思う。
みたいな感じですすっごくハマって読めた訳ではないけど、矢上たちの行動を見て勇気をもらった人たち、日夏と南美の存在が良かった。
見てくれる人は見てくれるんだな、と思って。
Posted by ブクログ
相棒の脚本家である太田さんの最新作。相変わらず社会問題と人物描写のリアリティ、的確さが素晴らしい。
この本は大手自動車メーカー、ユシマの生方第三工場に勤める非正規雇用4名、矢上、脇、秋山、泉原の逃亡劇から始まる。印象操作で、「この4人は一体何をやったのか?」という犯罪者としての見方から始まる。
だが読み進むにつれ、彼らは犯罪者どころか、ちょっと恵まれなかった善良な市民であることが見えてくる。そして2017年に新設された「テロ等準備罪」により捜査され、まだ何も実行しておらず、労働組合結成に伴うでっちあげをネタにされた共謀罪で追いかけられていることがわかる。
私自身は人材業界に5年ほどいたため、彼らの組合設立までにいたる様々な日本の法律は、心に刺さるものがあった。36協定、労働者派遣法、労働契約法など元々知識があったし、非正規雇用に対する保障や条件について、読むたびに身につまされるような気持ちになった。
労働者は搾取される相手ではなく、雇用主と対等であるべきで、権利は主張してよいはずだ。だが、なぜ日本ではいまの力関係が当たり前になっているのだろうか?「自らの労働対価や権利主張をしないで済むから」なのか、「思考停止してそういうものだと思っているから」なのか、と自分にも問うてしまう。
そういえば、私の元同僚が海外事業で担がれて労働組合を結成し執行委員長になり、社長の逆鱗に触れたという話を聞いたことがある。私も、そう言うことをやっている人を白い目で見てしまっていた人間の1人だったのではないか?そんなことを思い出した。
ストーリーとしては前半(だいたい4章くらいまで)はなかなか核心が見えてこず、導入が長すぎる印象だったが、後半は一気に展開が見えていき、最後はスカッとする終わり方だった。
実際には、非正規雇用で彼らのように立ち上がり、自ら勉強して自分の言葉で主張し、戦える人材は本当に少ないのが社会の縮図だ。でも、これからの自分は、そういう人が出てきて主張が良いと思えるものであれば、応援できるような人でありたい。