あらすじ
津軽海峡を舞台に、老練なマグロ釣りの孤絶の姿を描く表題作。四国に異常発生した鼠と人間との凄絶な闘いの記録「海の鼠」。名人気質の長良川の鵜匠の苦渋を描く「鵜」など動物を仲立ちとして自然と対峙する人びとの姿を精密に描いた傑作小説四篇を収録した作品集。
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Posted by ブクログ
動物をテーマとした短編4作を収録。
海の鼠は瀬戸内の島で大量発生した鼠に対応する人々を描いた実話にもとづいた話。
鼠取り機、殺鼠剤、蛇など、鼠駆除に様々な方策が講じられ、一定の効果はあるものの、結局人間の力で鼠の群れを壊滅させることはできず、島民は鼠の害にあいつつも、状況を諦め、受け入れていく。そのうち、人口の減少と共に鼠は自然に減っていく。
これはウィズコロナになっていく今の状況にも似ており、自然の力に対して、人間はどうにもできないことを知らされる。
そのほかの話はフィクションだが、いつも淡々とした文体のノンフィクションを書く筆者であるが、心理描写も上手いと思った。