あらすじ
母親が自分に寄せる夢を体に溜め込み肥満化した節子。他人の秘め事を言い当てられるがゆえに高慢で孤独な絵理香。周囲の期待に応え続ける美貌の由季子。膨らんだ自意識は、彼女たちを苦しませるだけではない。生きあぐねる女子の生態と心理を辛辣かつユーモラスに描き、痛快極まりないラストへと誘う傑作長編。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
それぞれの話を読んでる時点ですごいと思ってたけど、最後のページでは気持ち悪くなるほどだった。女子の自意識こわい。夢の娘ってこんな恐ろしいのか。でも自分にも大なり小なり当てはまる部分はあるから気持ち悪くなったんだと思う。
Posted by ブクログ
久しぶりの朝倉節が効いていて満足。
初期の『ほかに誰がいる』のような激しい感じと
最近の奇妙な雰囲気が相まって3人の女を、まるでそこにいる人物に
言葉を紡ぐようにして描いている。
朝倉さんファンとしてはとっても安心する一冊でした。
Posted by ブクログ
読んでいて、河をわたったような気分になった。
気付いたら服の裾が濡れていて、
つぎに気付いたらすっかり腰まで浸かっていて、進むしかないという心地がする。
そして物語が進むと、もうすっかり足のつかない深い部分にひきずりこまれていて、どうしようと途方に暮れて、もがいていると、
突然ぐいっと向こう岸に引き上げられる。
そして、その先にはまた河があることを知る。
読んでいるときの感覚を表現すると、
上記のような感じになる。
朝倉かすみは、女性を描くのがうまい。
おそらくどんな女性も感じたことのあるであろう自意識、それを強調して描く。
そこに皮肉なタッチがないので、ついついこちらも
「ああ、こういうことあったな・・」「わかるよ・・」という苦笑いでもって、登場人物たちを受け入れるしかないわけだ。
この物語はすこし不思議で、
母親によって「夢の娘」という妄想を押し付けられた巨躯の娘、セツの視点から物語は始まる。
母親の望みをうけて、自分もそうありたいと願いながらもそうではない自分を痛切に感じている彼女は自分たち二人の思いが自分の体をどんどん膨らませているのだと思っている。
そんな彼女は、同級生の「絵里香」に自分の隠した本性の片鱗を言い当てられ、とことんまで愚鈍を演じることを決める。
その絵里香は、人の気持ちの中にある言葉を舌に乗せる能力を持った女の子だ。
彼女を支配するのは虚栄心、自尊心、嫉妬。
その絵里香がねたみ、
セツが「彼女こそ夢の娘だ」と確信する相手、それが由季子。
誰よりも美しい容貌をもち、理想の娘らしいしぐさをもち、
しかしその実、それはすべて他者の望む像でしかない、空っぽな娘。
彼女は、セツによって自分を「夢の娘」に仕立てあげられることを望む。
しかし、「恋」こそがより少女たちを完璧なものにすると信じたセツが、その思いをうけた由季子が起こした行動によって彼女たち自身に変化がおきる。
タイトルにあるように、それは「連鎖」する。
小説のつくりとしては、二か所ほどにミスリードが仕込んであって読み進めるわくわく感があっていい。
物語がどこに着地するのか、まったく想像できない不気味さもいい。
ああ面白かったなあ、と読み終わろうとしたら、
最後の最後でぞっとさせられる。
このためだけにこの一篇を書いたのでは、とすら思うような。
だから本を読むのはやめられないなと久々に思った一作。
Posted by ブクログ
2015/8/19
紹介文通り痛快極まりないかどうかはわからんけど。
節子が幸せならばそれでよい。
いかにも女性作家の作品。もちろんいい意味で。
ユーモラスなのに薄ら寒いのがいい。