あらすじ
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人は他人を完全に理解することなどできない。でも、あなたの傷が癒えるまで守ることはできる。
心のギプスを求めるあなたへの物語。
――あさのあつこ
滑稽で醜い、むきだしの自分も、悪いものじゃない。
そう心から感じさせてくれる物語に、初めて会いました。
――彩瀬まる
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間宮朔子はすべてをあきらめている。
「若い女の子」の役割をまっとうするだけの職場、善良だが気が合わない実家の家族、なにより、なんの魅力もとりえもない自分のことを。
無難にやり過ごしていた日常に飛び込んできたのは、中学の同級生・あさひの姉を名乗る女性だった。
あさひがいなくなったので一緒に捜してほしいという。
親友だったはずの彼女とは、ずっと連絡をとっていない。
裏切られて、早く忘れてしまいたいのに、ふと思い浮かべてしまう存在――それがあさひだ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
少女のお母さんとおばあちゃんの造形が説得力がある。なんかおばあちゃんに感情移入して読み、お母さんに感情移入して読み、くるくる回りながら何回か読み直す。いや、そこじゃないんだけど。レモンスカッシュの話が妙に印象に残った。こういうお母さんでもお母さんやってるつもりなんだけどね。
Posted by ブクログ
間宮朔子は何を望むわけでもなく、すべてを諦めている。
職場のブックカフェでもただ淡々と仕事をし、無難にやり過ごしていたが、ある日中学の同級生・葛原あさひの姉だと名乗る鳴海が、あさひがいなくなったので探してほしいとやって来る。
中学の一時を過ごしただけで、それから以降は全く存在すら忘れていた彼女のことが蘇ってきたのだが…
彼女とは親友だったはずが、ある行き違いがあって疎遠になっていた。
彼女と出会った頃と現在を交互に物語っていく。
朔子の家庭は、口癖のように「普通」を強調し、両親と妹の三人だけがわかり合っているという家族で、あさひも歳の離れた姉だと言っていたのが実母で、ずっと祖母が母となり暮らしていた家族だった。
ちょっとクールで人と群れない朔子とあさひは、気があっていたのだろうが、ちょっとしたすれ違いで大人になってしまったのだが、もともと全てを理解するなんて中学の頃では難しいだろうと、大人になれば感情をセーブできるし、寄り添うことや許せることもできるのだろう。
島の港で見えた赤い傘…話できるのだという気持ちが伝わってきた。
Posted by ブクログ
『未知生さん』で心掴まれた片島麦子さんの新作もしみじみ良かった。
主要人物は間宮朔子と葛原あさひ。
現在と学生時代を交互に描きながら物語は進む。
人生を諦めたように日々を過ごしている朔子の元に突如現れたのは中学の同級生・あさひの姉を名乗るギプスをした女性。
ある事がきっかけで亀裂が入った朔子とあさひの人生の歯車が再び動き出す。
きっと誰もが経験した事があるに違いない幼さゆえ取った行動に後悔を抱えている人も多いだろう。
心の鎧を脱ぎ去り解放された二人の再会が待ち遠しい。
鮮やかな赤い傘の下で微笑むあさひの姿が目に浮かぶ。
Posted by ブクログ
後悔と痛みを抱えて大人になったかつての親友同士は、目に見えるものが全てじゃないと分かるには幼くて、行き違ってしまった過去があった。
今なら分かり合えるかもしれない、会って話をしよう。心のギプスを外して、一歩踏み出した彼女たち...その先に鮮やかな日々が待っていますように。
Posted by ブクログ
思春期に、人は良くも悪くも色々な感情を手に入れることになる。傷つき、誰かを傷つけてしまう。それを越えて大人になる。
諦めて生きることに慣れてしまっても、そうさせてくれない出会いがあったりもする。人とのつながりって不思議だなあ。
Posted by ブクログ
初読み作家さん。
ギプスが本心を隠す鎧のようであったり、弱い心をなんとか支え守ってくれるものであったり、場面ごとに様々なものに感じられた。
話の展開とともに、拗らせ、凝り固まり、諦めてしまった心が、ゆっくりと解きほぐされていくようだった。
なにものにもなれなかった白がラストに色づく描写には痺れました。