【感想・ネタバレ】見えない壁 北方四島の記憶のレビュー

あらすじ

日本で最も大きな島、択捉島、二番目に大きな島、国後島。そこに色丹島、歯舞諸島の面積を合わせれば実に沖縄本島の4.2倍にもなる。
これらの島々は、北海道の目と鼻の先にある。最も近い歯舞群島の貝殻島までの距離は、北海道根室市の納沙布岬からわずか3.7kmだ。
この国境の島々にはかつて、人々が暮らしがあり、1万7000人もの人々が生活を営んでいた。
しかし日本がポツダム宣言を受諾し、降伏を表明してから約2週間後、ソ連はこの島々に侵攻、平穏だった島民の暮らしは一変する。
そこから人々の運命は大きく分かれていく。脱出して北海道にたどり着いた人、船の中で命を落とした人、あるいは現地に残り後にロシアに渡った人……
新聞記者として30年以上にわたって根室に住み、当時の記憶を持つ人を訪ね続けてきた記者による唯一無二の調査報道。
戦争が人々にもたらす負の影響を見据え、北方四島の解決策を見通す。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

感情タグはまだありません

Posted by ブクログ

くまざわ書店の新刊コーナーで見つけた。筆者のライフワークの集大成とも思える力作。
北方領土問題は、北海道以外の(というより根室地方以外のと言ってもよいのかも)場所に住む人には縁遠くなってしまい、知らない人すら居そうだ。
しかし、領土の大きさで言えば、択捉島だけでも沖縄本島より大きく、全体では福岡県より大きい。加えて周辺の海洋資源も踏まえれば、忘れてよい問題ではないはず。
ロシア(ソビエト)という国は、当時もいきなり侵攻して不当に占領し、既成事実化しようとしている。そして今、ウクライナでも全く同じことをやろうとしているとは、恐ろしいことだ。そう考えると、ウクライナとの和平でも絶対に領土の割譲など許すべきではない。
本書の最後に提案されている解決策が素晴らしい。
領有権の日本への返還を前提として、現在ロシア人が住んでいる地区はそのまま住んでもよいとし、日本人居住区と自然環境の保全区域を作る、という案。
実質的な権利を大幅に譲歩しているが、これくらい大胆な提案によって事態の打開を図っていかないと、不当侵攻から既に80年が経過してしまっているので、本当になし崩しになってしまうだろう。なんとか機運が高まるとよいのだが。

0
2025年12月07日

「学術・語学」ランキング