あらすじ
谷中霊園、日暮里駅、神田・お玉が池、神田~隅田川、東中野~中野一丁目、宮ケ瀬ダム、観音崎、群馬県&埼玉県・神流湖、秋葉原、面影橋、姿見の橋、歌舞伎町、品川橋~天王洲、葛飾区、旧三河島町界隈、淀橋、代々幡など。かつて事故や事件のあった場所に現れる幽霊たち。恨みを残して亡くなった場所、自殺の多い場所などを歩き、土地の記憶に耳を傾け、話を聞き、過去の新聞や歴史資料を集め、写真を撮る。史実と伝説のあわいを歩き、声なき声を蒐集した、怪奇ノンフィクション。「そこに『出る』理由。それは幽霊より怖い」京極夏彦(『東京の幽霊事件』単行本帯推薦文より)。怪奇探偵として知られ、幽霊物件や未解決の怪奇事件、心霊写真や心霊ビデオの調査、四谷怪談をはじめとする呪いの歴史的考察など、世間に流布する怪異譚を蒐集し、成立過程および社会史的背景をくまなく徹底的に調査し、執筆する作家・小池壮彦。『日本の幽霊事件』『東京の幽霊事件』を1冊にまとめた決定版。
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Posted by ブクログ
まさかのノンフィクションでした。
怪異の話の流れから、その裏話、事実、真実が報告される一方で、怪異そのものの解決には至っていない事件。
虐待された子の怨念みたいなのって、令和で嘯く奴がいたら大炎上するだろう。
凄惨な事件が必ずしも噂になるわけではなく、女子高生コンクリート事件のような日本が震撼した事件が幽霊話にならない理由として、個人的には「ネタにできない話」だからだと思ったりもする。
オチが弱すぎるエピソードはどんなに盛っても面白くなかったり、ギリ笑えない下ネタやモラハラが面白くないのと同じで、幽霊話も「ギリネタにできる話」しか、出回らないんだと思う。口裂け女やてけてけなんかはオチの弱い話に尾ひれがつきまくった最たるもので、四谷怪談なんかはすでに原型を留めていないほどだ。
怪談話にしやすい話は「非業の死」だろう。男女のもつれ、我が子を残して死ぬ母、冤罪、戦争など、ワンチャン同情を狙える話などはネタにしやすいのではないだろうか。
実際、この本に収録されている幽霊事件の大半は「非業の死」がモデルになっていた。
大衆がしたい噂話は大衆が好む話という、怪談話とはかけ離れた結論になってしまった。
Posted by ブクログ
小池壮彦『【完全版】日本の幽霊事件 封印された裏歴史』角川ホラー文庫。
『日本の幽霊事件』と『東京の幽霊事件 封印された裏歴史』を合本し、加筆修正の上、文庫化。
かつて事故や事件のあった曰く付きの場所に現れるという様々な幽霊。そんな幽霊が現れる曰く付きの事故や自殺が多発する場所、忌み地などを訪ね歩き、土地の記憶に耳を傾けながら、人びとの話を聞き、過去の新聞や歴史資料を集めては写真を撮り、史実と伝説との境目を埋めた極めて真面目な怪奇ノンフィクション。
現代は幽霊よりも、ネットや人間の方が恐ろしいせいか、余り幽霊の噂を聞かない。昔は大事故や悲惨な事件、大災害が起きる度に幽霊が出たとか見たとかの噂が飛び交った。現代のようにSNSなど普及していないから、まさに人から人へと口伝てに伝えられる噂が広まっていくのだ。
大昔からの大都会であった東京などは人間の欲望が渦巻き、夢破れ、願いがかなわなかった多くの人間の怨念が漂っているように思う。そして、人間の怨念が漂う所に奇怪な事件や犯罪が呼びそせられていくのだろう。
作中に稲川淳二の怪談でも有名な『追ってくる上半身』の話が紹介されているが、確かに様々なバリエーションがある。恐らく、噂が口伝てで広まる過程で巧い語り手により脚色されたりしたのだろう。
自分が30年以上前に聞いた『追ってくる上半身』の話は次のようなものだ。
厳冬期の北海道で夜、列車が何かにぶつかり、運転手が列車を停車させる。運転手が列車の外に出て付近をライトで照らしながら周囲を見渡すと血の跡があった。そんな時、暗闇の中からズリっズリっという音がしたので、その方向にライトを向けると髪の長い女性が上半身だけの姿で這いずりながら、運転手の方に迫って来た。運転手は驚いて、近くにあった鉄柱に登ると、上半身だけの女性も腕の力だけでゆっくりと鉄柱をよじ登って来るのだが、途中で力尽きるという話であった。
巧い語り手、或いはその仲間は、この話が一通り終わると、鉄柱を登っている途中で力尽きた実際の写真も残っているなどと駄目押ししてやれば、さらに効果的目となる。
『麻布一連隊跡地の兵士の幽霊』も、全国の旧陸軍練兵場跡地などに伝わる話である。自分の実家のある辺りは旧陸軍の演習などが行われていた場所なので、あちらこちらに旧陸軍の施設の痕跡がある。解体されぬままに残されている赤い煉瓦作りの旧陸軍の施設などは如何にも出そうな雰囲気である。
『円乗寺境内の八百屋のお七の幽霊』の中で、毎日数百人が幽霊を見に集まったとあるが、自分も大昔、似たような光景を見たことがある。
父親が職場で、沿岸部にあるトンネルで幽霊が出るという噂を聞き、日曜日の夜に家族でドライブしがてら見に行ったことがある。車中で父親が話すには自転車に乗った女性がトンネル内で車に撥ねられ、亡くなり、その後、髪の長い白い服の女性が自転車に乗ってトンネル内を走るということらしい。
さて、問題のトンネルに差し掛かるとトンネルの入口の両脇にカメラを構えた人の山が出来ていた。これは本当に出るのかと身構えながらトンネルを通過したが、何事も無く、やはりトンネルの出口にも多くの人が集まっていて、幽霊より何よりもそれに驚いた。
本体価格900円
★★★★
Posted by ブクログ
かつて事件や事故のあったいわくつきの場所の数々。心霊ドキュメンタリーの元祖が、因縁のルーツを辿る渾身のノンフィクション。
魂の存在があるとするならば、いわゆる"出る"場所は、行き場所なく彷徨う魂そのものだろう。出なきゃいけない理由を、今生きている私たちは理解すべきか。
Posted by ブクログ
幽霊事件を扱った本ということで、幽霊の存在の肯定を前提に書かれたエンタメ系の内容かなと思っていたら案外違ったという。
割とフラットな視点で描かれていたように思う。
安易に幽霊を肯定せず、かといってこれまた安易に否定もしない。
体験談を紹介しつつ、幽霊騒ぎが起きる下地となった事件、地元の歴史や風習などを掘り下げて、こういう背景があったから幽霊騒ぎが起きたとするスタンス。
だから幽霊ものでありながら、民俗学とか歴史を読んだ気になった。
興味深かったのは、八百屋お七に纏わる話。
あることを隠すために公文書から消えているとするその説は不謹慎ながら大変面白い内容だった。
その視点はなかったので。
あと太田道灌の登場率の高さが気になった。
やたらお名前を見た気がする……