あらすじ
《山の国》の公爵令嬢ヴァレリアは王太子妃になるため、ひたむきに努力してきた。
しかし妹の計略で処刑が決まる。
運良く《麦の国》の青年アルバに助けられ、行き着いたのは小さなスープ店だった。
傷ついたヴァレリアの心は、あたたかいスープと無償の親切にほどけていく。
そしてシーナと名を変えて、店で働くことに。
具だくさんの日替わりスープと、焼きたてのパンに手作りジャム。
不慣れでも誠実なシーナの料理は、アルバや訳ありのお客をほっと癒やして――
追放された公爵令嬢の、おいしくてやさしいスローライフ。
==登場人物==
○シーナ(ヴァレリア)
《山の国》の名家の長女。
地味でつまらないと言われ、華がある妹と比べられてきた。
婚約者の王太子も妹を愛するようになり、処刑されてしまう。
○アルバ
《麦の国》で農業に携わる青年。
エルザが営むスープ店の隣家に住む。
懸命なシーナを支えるが、彼にも何か事情があるようで――。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
崖から落とされたのによくぞご無事で。
そこからは名前を変え、生まれ変わったかのように第二の人生を歩み始めたシーナ。
王太子妃の教育の賜物で知識はあれど、料理の経験のなかった彼女が、パンやスープの作り方を覚え、店を引き継ぎ、最初こそ苦労はしたが、町の人たちに受け入れられ、本来の表情すら取り戻していく。
彼女を最初に助けてくれたアルバ、料理を教えてくれた老夫婦に町の人々、そして終盤に手紙をくれたかつて修道院で字を教えていた子など、人との縁の大事さ、その尊さを強く感じた。
出てくるスープも美味しそうだったが、料理の印象より人との関わりの方が印象強かったので。
だからこそ、そんな人との縁を断ち切ってくるような終盤の展開は心が痛んだ。
折角得た居場所をなくしてしまうのかと。
案外抜け出した先でもうまくはいっていたようだが、幸い彼女の先手が上手に働いたようで、これまた案外あっさりと解決してよかった。
シーナを陥れた妹も自ら白状したようだし。
初手のシーナへの所業こそえげつなかったが、終盤の展開は作者さまの優しさを感じた。
あっさりと行かなかったのは、アルバの恋心か。
シーナも少なからず思ってはくれているが、アルバほどの執着はまだなさそう。
周りにはバレバレなので、そのうちどうにかなるとは思うが、もう少しアルバは頑張らないと駄目らしい。
ファイトだ、アルバ。