あらすじ
在日コリアンの家庭に生まれた著者がさまざまな劣等感、生きづらさを抱えながら成長していくプロセスを振り返って描いた初の「自伝エッセイ」。キムチ、寿司、焼肉、チョコレートなど、さまざまな食べ物をキーワードにした連作短編集でもあります。タイトルの「はざま」とは日本と韓国という2つのアイデンティティのみならず、親と子、男と女、仕事とプライベート、妻と母・・・・・・など、さまざまな「はざま」の中で、いわばもがき苦しんできた彼女の生き方を象徴的に示す言葉です。
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Posted by ブクログ
辛かった、悲しかった思い出の鮮明さたるや。
在日コリアンへの日本人からの差別ももちろんだが、家族の繋がりが読んでて苦しい。断ち切ってしまえと叫びたくなる。
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著者である深沢潮さんとの出会いは、アジア・太平洋戦争中の沖縄戦と慰安婦問題を巡って2人の女性を綴った「翡翠色の海へうたう」であり、とても感銘を受けた。著者からのお薦めも頂き、複数の書籍を読ませて頂いた。今回は、著者のエッセーであり、在日コリアンとして、また両親の民族意識や家父長制による価値観の押しつけ体験と葛藤を「食」を通じて振り返ります。恋愛観などの葛藤と人としての成長、人生観の変化などを韓日の「食」文化を手がかりに、韓日のかかわりを紐解き、想像を巡らせます。また、韓国への来訪を中心に、アメリカへの留学体験や様々な国々への訪問・旅行を通じて諸外国の方々との人間関係や交流など、世界の食文化と韓日の関係も紹介し、韓日との関係に思いを巡らせます。韓日との「はざま」で揺れ動く「わたし・女性」を追体験することで、懐かさが蘇ったと共に、在日や外国籍の方の心情を顧みる貴重な機会となった。
追伸
「週刊新潮」7月31日号(7月24日発売)では、韓国にルーツを持つ作家の深沢潮さんを名指しで差別対象にしたコラムを掲載したとして、8月4日(月)国会内で同誌版元の新潮社に抗議する記者会見を開いた。深沢さん側は、コラムの内容は事実でなく「外国にルーツがある人が日本を批判することを敵視するもの」だと指摘。「創氏改名」は植民地時代の朝鮮半島での日本への同化政策で「度し難い人権侵害のコラム」だとして、日本全国に広めた新潮社の責任を問うとしている。会見で、深沢さんは「心が打ち砕かれた」として、出版社がレイシズム(人種差別)を放つとは「文学そのものへの毀損(きそん)、文学界への極めて無責任な態度」だと批判。在日コリアンは長年差別され、「みんな隠れて生きている。声を出せる立場だから」と、抗議した思いを語った。日本共産党の吉良良子参議委員議員が連帯のあいさつ。立憲民主党、社民党、れいわ新撰組の議員が参加した。なお、明日香さんがコメントを寄せ、多くの作家・著名人が、深沢潮さんに連帯したメッセージを寄せており、昨今の参議院選挙で跋扈した排外主義に対して、満身の怒りを込めて抗議したい。
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このエッセイは深沢潮さんの人生の棚卸しだと終わりに語っている。独裁的な父と支配的な母の元、厳しく暴力的に育てられたそうだ。学校では自分のアイデンティティに苦しみ、ルッキズムに支配され続け、恋愛願望と過度な他人への奉仕、両親の束縛から解放されるために見合いを繰り返したことなど、赤裸々に「食の思い出」と共に語られている。いろいろな食べ物が美味しそうに描かれていて僕も食べたくなった。特に豚肉を白菜で包んで食べるポッサムをさっき妻にリクエストしたばかりだ。
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ネットで連載されていたタイトルが「李東愛(イドンエ)が食べるとき」なのだが、その冒頭で、自分を偽らないで書きたいと書かれていた。李東愛とは、深澤潮さんが日本国籍を取る前の本名。そもそも、日本国籍を取ったのも、就職や結婚などで、大変な苦労をしたからだそうだ。
本書は、食を軸にして、自分の越し方を書いているが、現在ではともかく、在日であるというだけで、相当な差別があったということだ。
たぶん、朝鮮半島が日本の植民地であったことで、日本人が朝鮮人を見下していたことに加え、日本とは違う風習や文化に眉をひそめる日本人が多かったからではないだろうか。
韓国人であることがばれないように、ビクビクしながら生きていた著者。また病弱な姉や、すぐに手をあげる両親、ひねくれ者の思春期の自分自身のことなど、洗いざらい吐露している。
また、韓国が民主化する前は、在日イコール スパイとみなされ、韓国に住む韓国人が在日韓国人と交流するのも躊躇われたそうだ。
韓流がブームになるなど、著者も言うように、そう言う意味ではいい時代になったと思う。86歳のお母さんが、堂々とキムチを買えるようになったのもよかった。
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作者の書いた本のエピソードや子ども時代や子育てのエッセイで性格が似ているので同調しながら他作品も読んでみたくなる。
読みやすい文章で回りくどくないのはすごくいい。
当たり前と思っていたのは国が違えば不思議となる。ブラジルから来ている同僚のキツさや考え方の違いもブラジルでは当たり前なんだろうなぁと自分の生活に置き換えて考えてしまった。
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全編が自己紹介のような本。環境や立場は違うけれど、わが家の食事風景や時代の記憶まで呼び起こされ‥懐かしさ誇らしさに恥ずかしさと申し訳なさ‥わたし自身にも身に覚えがあり過ぎて胸の奥がチクリと痛い。
以前、経歴もなにもまったく予備知識のないまま『乳房のくにで』を読んだ時の、物語全体から受けたどんよりとした閉塞感がどこから来るのか謎だったのだが‥ようやくその理由が少しわかったような気がした。web連載だったそうで文章はとても読みやすいが、なかなかハードな人生。書くことで自分を保ち生き延びてきた人なのかも。本書で紹介されたほかの作品も読まなくては。
Posted by ブクログ
「食」にまつわるエッセイだが、在日コリアンの家庭で育った著者の来し方を綴ったものである。
要所要所に著者の小説が出てくるのも興味深い。
アイディンティティを拗らせた中高時代の頃の韓国への複雑な思いも感じながら上手く食に繋がっているのも読みやすい。
家父長制度が強いのが国がらなのか、時代なのかそのどちらなのかもしれないが、似たような時代に育った自分にもよくわかると感じることがあり、いろんなところで懐かしくなった。