あらすじ
【感涙のノベル大賞準大賞受賞作!】
――甘さがわからなくても美味しいやつ、作ります。
「甘味だけを感じられない」という味覚障害の大学生・茜。そんな茜が住むアパート「みなと荘」に、料理上手の男子高校生・千裕が引っ越してくる。彼がいつも振る舞ってくれる美味しいおすそ分けを食べるうち、少しずつ食事の楽しみを見いだしていく茜。優しくて健気な千裕の背中を見ていると、どうしても昔の愛犬・ちーちゃんの姿が重なってしまい・・・・・・。
一つの食卓が二人の過去を繋ぐ、ぬくもりと癒しの再生ものがたり。
感情タグBEST3
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茜さんと千裕の過去には重い部分もあるけれど
ほっとする作品。
茜さんと千裕がもしもっと年が近かったらすぐに恋愛!!みたいな雰囲気になっていたかもしれません。しかしほどよく年が離れ、お互いでお互いを支えていた家族愛のようなあたたかさが胸にすっと入ってきました。ごはんを通して、心の傷を少しずつ埋めていく2人がとても愛おしかったです。
この作品はすごく素敵な終わり方で、続きができると野暮なのかもしれません。
でも個人的には茜さんや千裕、綾乃さん、志摩くんのその後も読んでみたいなと思いました。
Posted by ブクログ
味覚障害の主人公茜と、料理が好きな男子高校生千裕の交流のお話。
茜も千裕も虐待をされていた暗い過去がある。
そんな2人のおいしいものを絡めた再生の物語。
茜と千裕が互いに支え合っている感じが好きだったし、
終わり方も好きだったなぁ。
恋愛になるのかな?と思ってたけど、ならずに
お互いに応援し合ってるところが良かった!
Posted by ブクログ
なかなか塞がらない傷口にそっと優しく触れて、おまじないをかけるような、切なくて温かい話だった。
重たい話ではあるけれど、絶妙な距離感の登場人物たちの触れ合いに心が温まる。
結局甘さは失ったままだったけど、千裕くんや綾乃さんのおかげで、美味しいという感覚を取り戻して、美味しいという気持ちを分かち合う居場所ができた茜がとても幸せそうでよかった。
Posted by ブクログ
幼少期のある出来事から"甘さ"を感じられなくなった茜は、ある日路上で体調を崩していたところをアパートの大家・綾乃の孫の千裕に助けられる。成り行きから"甘さ"を感じられないことを打ち明けた茜に、千裕は"甘さが感じられなくても美味しいものを自分が作る"と宣言する。
面白かった。茜や千裕、綾乃さん、茜の周りの人々(バイト仲間やゼミ仲間など)の関わりは穏やかで優しい。現在の話のなかで悪い人が出てこないという点では穏やかに読める。一方で、茜や千裕の過去は胸が締め付けられるような苦しささえ感じる。ラスト近く、茜が見た"ちーちゃん"の夢は泣いてしまった。
茜や千裕のこれからが幸せだったらいいなと思う。
Posted by ブクログ
帯と表紙に惹かれ購入。表紙からは分からなかったが、中々重めな生い立ちや出来事がそれぞれあり、胸が痛かった。私は動物ものが…(特に犬は…)
けれど大好きだからそうしたとか、楽しかった思い出とか切なさにもしっかり温かさや癒しもあって読んで良かったと思える作品だった。
Posted by ブクログ
表紙は割とほのぼのしているが、中身は決してほのぼのしていなかった。
茜も千裕もメンタルに傷を持つ同士。
そもそも茜がある事情で甘さの味覚を失っている身。
ただでさえ食生活や外食を伴う付き合いを難しいものにしているのに、作中は更なる追い討ちをかける展開まで。
まさかこれ以上酷くなるとは思わないじゃん。
終盤直前くらいだったから、ここで酷くなるとはと読んでいて絶望を覚えるほど。
ほのぼのとは一体。
それに、千裕くんもそうだが、茜の過去がかなり壮絶で。
そりゃトラウマで味覚もおかしくなる。
ただこのトラウマを克服できるかもしらないある場面は涙なしでは見られないという……たまらなかった。
再生のものがたりとあって、前述のトラウマの克服の場面は確かに再生に繋がるものではある。
ただ繋がるものであり、ご都合主義に味覚が全部ちゃんと戻りはしない。
「戻るかもしれない」という希望を見せた終わりで、その塩梅は好きにとれていいなと感じた。
気になったのは、茜が周囲に好かれすぎな点。
トラウマの件以外で彼女を嫌う人が出てこず、ゼミ仲間にもバイト仲間にも総じて好かれている点は疑問に思った。
優しいし仲間思いではあるが、結構重い過去持ちでややこしい性格してるのに、ここまで「みんな」に好かれる理由がよく分からなかった。