【感想・ネタバレ】流れのほとりのレビュー

あらすじ

1931年の夏、麻子たち一家は、炭坑技師である父さんの赴任地、樺太の奥地に向かいます。柳蘭の花咲く北の原野を汽車でゆられていったその先に、麻子を待っていたのは、きらきら光る川でした……。幼いころの作者の目に焼きついた北の自然と、子どもたちの生活を描いた回想の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

梨木香歩さんのエッセイに何度も出てきたので、懐かしくなって再読。
私は北方民族の物語への興味から、北方民族の人たちの文化や生活を学び始めたので、麻子が時に現実に直面して、怯える姿がわかるような気がした。自分も北方へ行ってこんな現実に出逢ったら恐ろしいと思う。ましてや小学生の麻子には。
物語も北方の少年たちを描いた「ちびっこカムのぼうけん」や「ヌーチェのぼうけん」のような明るい基調はなく、麻子の視点で当時の生活がリアルに描かれていく。
「つつみ」に巻き込まれて命を落としたり、氷の穴に吸い込まれて行方不明になる幼い子供。タコと呼ばれる人たちが奴隷のように扱われる様や、結核など病魔に侵されること。恐ろしい山火事。
麻子は穏やかな川の流れや木々の木漏れ日、ひだまりの光などに思いを馳せ、物語もよく読む、とても感受性が豊かな子だ。それだけに、目の当たりにする現実の恐ろしさにいつも怯え、涙をためる。子供なりの劣等感も普通にあるし、子供ゆえに気づけない大人の事情に傷ついたりもする。子供の麻子の視点を、大人の作者が外さないまま、真実を描いていくゆえに、残酷さがかえって際立つ。
物語は家族とともに樺太にやってきた小学二年生の麻子が、きょうだいや友達とともに成長し、町の女学校へ受験に行くところで終わっている。
麻子が感じていた「女の子だから」という理由で許されなかったことを、神沢さんはのちにカムやヌーチェになって思い切り描いたのかもしれない。

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2023年03月08日

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