【感想・ネタバレ】冤罪 なぜ人は間違えるのか(インターナショナル新書)のレビュー

あらすじ

無実の罪が相次いで産み出される真の原因を「冤罪の科学」が解き明かす――◎人間は間違いから逃れられない ◎人の心には「盲点」がある ◎黒の捜査、白の捜査 ◎なぜ「直感的判断」は危険なのか ◎ノーベル経済学者が指摘した「結論バイアス」のリスク ◎ジェンダー・バイアスが生んだ冤罪事件 ◎裁判官も陥ってしまう偏見と差別 ◎正義感が冤罪をもたらすわけ ◎人間は自己正当化する生き物だ ◎「引き返す勇気」は持てるのか ◎「集団浅慮」のリスク ◎失敗が放置される「現状維持バイアス」のトラップ

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Posted by ブクログ

人間は誰でも間違える。そのことを深く刻みながら裁判に捜査に対処する事の大切さ。特に死刑冤罪の理不尽さについて具体的に述べられ、また死刑廃止論も主張されている。
他人事のように感じてしまう冤罪、自分や親しい人に降りかかったらと思うと本当に恐ろしい。国家権力による公正な、証拠捏造などのない捜査も疑わしい上に、正しいと思われる捜査もバイアスがかかる可能性もあるとなると、死刑はとりあえずやめた方がいいと感じた。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

この新書で取り上げられている事件はすべて知っているし、
原著も読んでいる。
つい先日はノンフィクションも読んだばかり。
気が付けば検察の冤罪の本は相当読んでいるということだ。

また仕事柄、人は誤るもの、不正に走るもの、という、
人の弱さに関する知識もそれなりにある。

つまりこの本に書いてあることはたいていわかっている。
でもこの新書には意味があった。
気づきがあった。

古今東西どの国も昔は拷問で自白させる、なんてのは当たり前だった。
それがどんどん近代化されていった。科学的になっていった。
科学的、、、これも曲者で、初期のDNA鑑定には誤りがあった。
しかし、新しい手法を取り入れ、より、所期の目的である、
真犯人のみを罰する、ために新しい手法は取り入れなくてはいけない。

しかし検察はそれができていない。
相変わらずの人質司法。
なぜか?
若手は疑問を持っても、過去の成功体験があるベテラン、
新しい土俵では自分の優位性が発揮できないベテラン、
当然新しい知識は取り入れようとしない、
ともすればそういう人間が偉くなっている、
そういう立場の人が命令すれば、
組織としては従わざるを得なくなる。

・・・これ、検察だけでなくどこの組織でも起こりうる。
大きな組織はなおさら。
だから機転の利く小さな組織が大きな組織を食うことがあるのだな。
私の前板会社の社長は科学的だったといえる。
確率論で、若手を大量導入して、数をこなして土地を買い、建物を売った。
科学的体育会だった。
それにひきかえ今の会社は、、、うーん。

話が逸れた。
まして、成績優秀な偏差値エリートの官僚の端くれの方々、
自分が間違えるとは思わない。
正しい答えに確実に導く、と信じて動いている。
国家権力を持ちながら。
だから冤罪が起こる。

死刑廃止は大賛成だ。
被害者感情はもちろんわかるとしても、
100%の犯罪者にしかそれは適用してはいけない。
そして100%なんてありえないのだ。

よくまとまった本だ。


序章 人は誤る
第1章 冤罪とは何か
第2章 「負けへんで!」山岸忍さんの戦い
第3章 なぜ人は間違えるのか
第4章 組織もまた誤る
第5章 なぜ人は同じ間違いを繰り返すのか
第6章 「冤罪」はこうして生まれる
第7章 どうして教訓は活かされないのか
第8章 冤罪学から死刑廃止論を考える
第9章 イノセンス・プロジェクトという試み

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

本書をひらいて、まず序章からびっくりなのが
現在の日本には「冤罪事件の原因検証制度はない」という事。勿論、警察官や検事、裁判官だって「人間」だから、間違えることもあるだろう。でも、いつどこで、誰が、なぜ間違えたのか?それを検証しなければ、反省、学習する事も世間に知られる事もないまま同じ過ちは必ずや繰り返されてしまうだろう。昨年は長い間、無実を訴えて闘ってこられた袴田巌さんに無罪判決が出て、それ自体は本当に良かったけれど、(警察か検察が証拠捏造したのでは?)とまで疑われ、大きなニュースになったのに‥。未来の冤罪を防ぐために、今こそ仕組みづくりをしなければ。

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2025年01月24日

Posted by ブクログ

咄嗟の判断で逃げ切る。生存競争に勝つために備わった本能。それは現代社会で暴走する。生き物として働く直感のバイアスが間違った見立てにつながる。認知的不協和を避けたいがために反証を否定し、誤りは正されることなく増幅する。自白強要、証拠改ざん。動機は正義感。悪意からではない。…人は必ず間違える。間違えることが前提で仕組みを作らなければいけない。失敗は学びの機会。責任追求より原因追求。過ちが起きたら振り返り、再発を防止する。当然のことが、日本の司法ではできていない。冤罪被害はまた起きる。他人事では済まされない。

某局の性接待疑惑、芸能人のスキャンダル、裏金問題。渦中の誰かを責めるだけでは、似たようなことがまた起きる。メディアの流すことを安易に享受しすぎていなかっただろうか。タレントも一人の人間であることを忘れていなかっただろうか。政策ではなく金で作られたイメージで投票していなかっただろうか。自らを振り返りできたことを考えてみる。死刑制度のある国。実行者を消せばすべてが終わりではない。起きない前にできたことはなかったのか。考えることを放棄してはいけない。亡くなった人は戻って来ない、被害者も加害者も冤罪被害者も。

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2025年01月22日

Posted by ブクログ

冤罪はなぜ起こるのか、そしてどうやったら防げるのか。多くの実例や心理学、認知科学、社会学等の知見を総合して、『冤罪学』としてまとめた著者。本書は、その成果を一般読者にもわかりやすく説明している。
本書は、日本での冤罪事件、そして日本の司法システムの構造的な問題点を取り上げる。前提として、人は必ず間違える。だから、冤罪も必ず起こってしまう。悪意ではなく、正義感によって。
読んで不思議に思うのは、冤罪を引き起こした警察・検察や裁判官が間違いを認めようとしない、頑迷さ。官僚として、国家や体制に対して盲目的に忠誠を誓っているのか。あるいは小役人として、自分の保身が第一なのか。少なくとも、冤罪被害者の人権をあまり重視してはいないように感じる。
だが、本書のような書籍が出版され、冤罪救済の取り組みも行われているという。ほんの少しずつだが、社会は進歩している。そう信じたい。

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

学問としての冤罪学の入門書として秀逸である。内外の理論や定説をほぼ網羅している。ただし、その分、自分が冤罪リスクに遭遇した時(例えば痴漢など)に役にたつ一冊かと言えば、そうではない。

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2025年01月31日

Posted by ブクログ

人は過ちを犯す。それは検察や司法に携わる人びとも同様であり、重要なのは、そこで立ち止まり信じ込んでしまったバイアスから抜け出せるか否か。体裁や保身で問題を看過する姿勢は不誠実極まりない。そこで犠牲になるのは他者の尊厳であり、最悪の事態として冤罪を放置する。あってはならない悲運をどうやって防ぐか、自尊心という厄介な主体が適切な振る舞いを心がける。過ちは決して無くならないが改めることができる。"聞く力" は決して為政者の謳い文句でおさまるような言葉ではない。耳を傾けない、顧みない姿勢こそ本当の過ちといえる。

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2024年12月31日

Posted by ブクログ

数々の気の毒な冤罪の事案をしると、本人だけでなく家族の人生まで奪ってしまうことがわかる。
あーそんな人間心理で冤罪が生まれて、さらに真実が意図的に、だけでなく知らぬ間に隠されていくのか、とよくわかる本だった。

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2025年09月09日

Posted by ブクログ

「冤罪」に関する本だが、ほとんどは人間の認知バイアスに関する話だった

冤罪が起こる原理は
1. 人間の認知バイアスによる誤った見識の発生
2. 組織的なエラー増幅
3. 冤罪に対してのフィードバック欠如
により起こる

これは、司法の話だけでなく、普通の失敗に関しても同じだと思うので、「人間は間違える生き物だ」ということを忘れずに、常に別のシナリオの可能性を疑う必要があると感じた

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2025年01月13日

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