【感想・ネタバレ】ヘーゲル(再)入門のレビュー

あらすじ

ヘーゲルと聞いて、「西洋近代哲学を完成する壮大な体系を打ち立てた哲学者」というイメージを抱く人は多いだろう。しかし、実はこのイメージは専門家の間では過去のものとなっている。では、ヘーゲル哲学とは一体何か? 主著『精神現象学』『大論理学』を解読し、日本では受容が遅れている英語圏でのヘーゲル研究の成果を取り入れながら、著者は「流動性」をキーワードに新たなヘーゲル像を提示する。本書は前提知識を要しない入門書であり、同時にあまりの難解さに挫折してきた多くの読者のための(再)入門書でもある。

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Posted by ブクログ

3月のNHK Eテレ100分de名著はヘーゲルの「精神現象学」の再放送でした。たぶん前も視聴したはずですが、なぜか今回はよりわかったような気分になりました。講師の斎藤幸平の解説も鮮やかに思えて、ふむふむの連続でした。『絶対な実体である精神とはすなわち、「私たちである〈私〉であり、〈私〉である私たち」なのである』とかメモしちゃいました。たぶん同じタイミングで読んでいた野中郁次郎「野生の経営」のキーワードである「相互主観」との重なる部分を勝手に感じていたのだと思います。なので、勢いでちくま文庫「精神現象学」上下二巻をポチッとしてしまいました。届いてペラペラしたら、やばい…この本、難物過ぎ、ということで先ずは本書「ヘーゲル(再)入門」でトレーニング、という訳です。自分にとっては(再)ではなく(新)なのですが…このトレーニングも難しい割に楽しく読み終えることが出来ました。やはり〈流動化〉という一点に絞った著者の語りに引き込まれたからなのでありましょう。しかし、これでも、いざ「精神現象学」!という気分にはなれなく、100分de名著のテキストとか買ってグズグズしているのでありました。

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2025年04月20日

Posted by ブクログ

流動性、双方向性を重視したヘーゲルが、量子力学や歴史のとらえ直しが主流となる今の世の中にいたとしたらどう人間を理解するのか。そんなことを思った。

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2025年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難しくて、字面を追っているだけだった。正反合の弁証法はヘーゲルが言ったものではないということだけがわかった。

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2025年07月23日

Posted by ブクログ

『精神現象学』と『大論理学』のなかから、著者がヘーゲル哲学においてもっとも重要な意義をもつと考えている「流動性」にかかわる議論を紹介し、ヘーゲル哲学に対する従来のイメージを刷新する試みがなされている本です。

一般にヘーゲル哲学といえば、近代哲学の完成者であり、壮大な形而上学の構築者であるというものですが、近年の研究ではこのようなヘーゲル像は否定されており、日本でも加藤尚武がさかんにヘーゲル哲学の体系性を否定する議論をおこなってきました。しかし著者は、旧来のヘーゲル哲学のイメージに代わる、あらたなイメージはいまだ提示されていないと指摘し、「流動性」というキー・ワードにもとづいて、ヘーゲル哲学の概観を提示する試みをおこないます。

著者は『大論理学』の「本質論」をあつかっている章で、「流動性」についての説明をおこなうさいに、「同一性だけを見る目線と、差異だけを見る目線の両方を流動化させることで、私たちは根拠づけの構造を把握することができる」と述べています。このような見かたは、ヘーゲル哲学を完結した体系のようにみなすイメージを提示するためには有効だと感じますが、他方で「同一性と差異の同一性」をどのように理解するべきなのかという問題がのこされている気がします。

また最終章では、ヘーゲル哲学の現代的な可能性を論じたカトリーヌ・マラブーとロバート・ブランダムの解釈が、簡潔に紹介されています。なお、ここで著者は、ハイデガーの思想を「直接性を重視する基礎づけ主義的なプロジェクトそのもの」と評価していますが、個人的には受け入れがたいと感じます。またブランダムの思想の紹介においても、「流動性」に通じる側面だけが切りとられていて、義務論的な性格に触れられていないことも、すこし気になります。著者は、「心理だと思われた何かが実は心理ではなかったとわかる」というプロセスをヘーゲルが重視していたといい、「このプロセスそのものが真理である」とまとめていますが、それがまさに「真理」とされる理由は、本書の行論ではじゅうぶんに説明されていません。

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2025年06月28日

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