【感想・ネタバレ】賊徒、暁に千里を奔るのレビュー

あらすじ

鎌倉時代、都でつつましく暮らす老侍。その正体は、かつて都中の人々に恐れられた大盗賊・小殿だった。足を洗った彼に興味を持ち、話を聞きに来た下級貴族の橘成季と仏師運慶、少年僧侶明けの明星の三人に、小殿はかつてある貴族の屋敷から真珠を盗んだ話を語る。客人三人は不可能と思える盗みを成功させた手口の謎解きに挑むのだが……。後鳥羽院、慈円、大姫ら鎌倉時代の重要人物たちが彩る、伝説の大盗賊をめぐる歴史ミステリ。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

鎌倉時代、かつて名うての盗賊であった小殿は穏やかな隠居生活を送っていた。そこに訪れる様々な人たちに小殿が語るかつての悪行と、それにまつわる不可解な謎解き。読みやすくしかし読みごたえもある連作歴史ミステリです。
謎解きの魅力はもちろん、小殿の話を聞きに来る歴史的有名人たちのキャラクターも面白いです。特に上皇さまのお茶目さがツボでした。そして「明けの明星」もまたきっと有名な誰かなのだろう、と思っていたら……!
お気に入りは「?倒」。かつて救われた少女に恩を返すため、正倉院に盗みに入った小殿。そこで出くわした殺人事件の謎を描いた本作ですが、しかしその後明かされた別の謎が何とも切なくて印象的でした。
「妖異瀬戸内海」は、海賊船の上で仲間が一人ずつ殺されていく、というサスペンスフルな物語でもあります。犯人当てとしての出来も見事だけれど、そこからさらに一歩踏み込んだ真相もまた見事。そして「雪因果」からラストにかけての物語があまりにも……まさしくこれは因果なのでしょうか。

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2025年02月15日

Posted by ブクログ

鎌倉時代の大泥棒.小殿が、若き頃の犯罪を後悔し検非違使別当に許され、好好爺となりかつての悪行の話を貴族や仏師、上皇にまで語る物語。

元盗賊小殿の様々な悪行の顛末を面白がり、推理を伴った話にしてそれらを集まった人々が解き明かしていくが…。
今が後悔して正しい人間になっているから、過去の悪事を肯定してしまう、そんなおかしな状況なのだが、殺人も含まれた悪事に正当性まで与えてしまう話の運びが面白い。
時代の正義側にいる人々と悪事に染まりきった大盗賊の対話の妙味は、これまで読んだ事のない世界を見せられ面白く斬新な時代小説だった。

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2024年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったね~父の所領を叔父に奪われ石清水八幡宮の稚児となり仇を討ち、都で小殿と呼ばれる盗賊となり、真珠を盗って博多で売り払って海賊となり、東国で追い剥ぎを働き、都に帰って自首して許され、盗賊時代の話をして上皇とも知り合う~暁の明星が実朝を殺害した公卿だったというオチです

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2025年04月24日

Posted by ブクログ

舞台は歴史小説には珍しく鎌倉初期。鎌倉殿と言われた頼朝のむすめ大姫が登場したりする。
年老いた天下の大泥棒が昔語りを所望され語る相手はいずれも時代を代表する大物たち。その語りには謎が仕掛けられており、語り手の元大泥棒がみずから種明かしをしていく。いろいろな趣向があってなかなか楽しかったが一番の驚きは最後の1行だった。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

鎌倉時代、暗躍した盗賊が過去の盗みの話をする。客は橘成季、慈円、運慶、後鳥羽上皇ら。

面白かった。高価な真珠を盗んだり、正倉院に忍び込んだり、瀬戸内海で海賊に襲われたり、まさに波乱万丈。

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2025年01月12日

Posted by ブクログ

なかなか面白かった。
あまりミステリでは描かれない時代を書いてなおかつミステリ的面白さを出す。
いいですね。
2884冊
今年112冊目

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

推理小説の舞台が
鎌倉時代の不思議な小説。
面白く読めたが、謎解きのための
伏線がくどく感じられるところも。

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2025年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【収録作品】真珠盗/顛倒/妖異瀬戸内海/汗牛充棟綺譚/雪因果
鎌倉時代の都で暮らす、元大盗賊・小殿。
彼のことを聞きつけ、説話集のネタにしようと、橘成季が仏師運慶、少年僧侶・明けの明星と共にやってくる。

小殿の謎かけ部分と明けの明星の正体がミステリ。他愛もないトリックだが、時代背景とあいまって面白く読ませる。

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2025年01月19日

Posted by ブクログ

最近お気に入りの作家さんの新刊。
これまで平清盛の異母弟・平頼盛、歌人・藤原定家を探偵役として謎解きに挑む形式の作品が続いてきたが、今回は趣向を変えてある。

主人公はかつて伝説の盗賊・小殿(ことの)と呼ばれ、今は検非違使の奉公人となった老人。
彼が盗賊時代のエピソードを客人である橘成季、明けの明星と呼ばれる訳ありの若き僧侶らに語りながら、謎かけをする。

貴族の家から身体検査を潜り抜けいかにして真珠を盗み出したのか。
刃物を持たぬ悪僧が、どうやって仲間の僧の喉を切り裂いたのか。
船の中で次々仲間たちを殺していくのは敵対する海賊なのか、それとも船の中にいる仲間の誰かなのか。
書庫に閉じ込められるという窮地に陥りながら、いかにして源氏物語全巻を盗み脱出したのか。
そして盗賊になるきっかけとなった叔父殺しはどのようにして成し遂げたのか。

聞き手が運慶、栄西、慈円、後鳥羽上皇に、かつての探偵役まで登場して楽しい。
ただ何となく明けの明星はあの人なのかな、と思いつつ読んでいたら、最後の話がまさしくあの歴史的事件を彷彿とさせる話だったのでやはりそうかと思ってしまった。

小殿はかつての自分の所業を深く悔やみ、武勇伝としてではなく悪行悪果として語っているのだが、周囲の人々、特に明けの明星にとってはそのようには受け止めてはいないようだ。
毎回謎かけを楽しみに聞いているし、結局は解けないのだけれどああでもないこうでもないと考えることを楽しんでいるようだ。
一人上皇はいくつかの考えを披露し、近いところまで行っているが真実を言い当てるところまでには行かない。

小殿がどのように自分の悪行を悔やみ、自ら検非違使の元に名乗り出ることにしたのかは明かされていない。
だがそれなりのきっかけがあったのだろうとは思われる。
通りすがりの女性が心配し優しくかけた言葉が小殿を盗賊にし、その悪行を悔やんで検非違使に名乗り出れば、罰せられることなく許され、検非違使の元で穏やかに暮らしている。
だがそのことで小殿は余計に苦しみ、そのエピソードを語ることで悪行が何かしらの善果になれば良いと願っている。
だが結局それは違う方向に行ってしまう。
何とも不思議な読後感の物語だった。

その中でもかつての探偵役が年を取ってもそのままのキャラクターでいてくれて、彼らしい罰を小殿に与えたのは少し救いだった。

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2025年01月02日

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