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Posted by ブクログ
鎌倉時代、かつて名うての盗賊であった小殿は穏やかな隠居生活を送っていた。そこに訪れる様々な人たちに小殿が語るかつての悪行と、それにまつわる不可解な謎解き。読みやすくしかし読みごたえもある連作歴史ミステリです。
謎解きの魅力はもちろん、小殿の話を聞きに来る歴史的有名人たちのキャラクターも面白いです。特に上皇さまのお茶目さがツボでした。そして「明けの明星」もまたきっと有名な誰かなのだろう、と思っていたら……!
お気に入りは「?倒」。かつて救われた少女に恩を返すため、正倉院に盗みに入った小殿。そこで出くわした殺人事件の謎を描いた本作ですが、しかしその後明かされた別の謎が何とも切なくて印象的でした。
「妖異瀬戸内海」は、海賊船の上で仲間が一人ずつ殺されていく、というサスペンスフルな物語でもあります。犯人当てとしての出来も見事だけれど、そこからさらに一歩踏み込んだ真相もまた見事。そして「雪因果」からラストにかけての物語があまりにも……まさしくこれは因果なのでしょうか。
Posted by ブクログ
最近お気に入りの作家さんの新刊。
これまで平清盛の異母弟・平頼盛、歌人・藤原定家を探偵役として謎解きに挑む形式の作品が続いてきたが、今回は趣向を変えてある。
主人公はかつて伝説の盗賊・小殿(ことの)と呼ばれ、今は検非違使の奉公人となった老人。
彼が盗賊時代のエピソードを客人である橘成季、明けの明星と呼ばれる訳ありの若き僧侶らに語りながら、謎かけをする。
貴族の家から身体検査を潜り抜けいかにして真珠を盗み出したのか。
刃物を持たぬ悪僧が、どうやって仲間の僧の喉を切り裂いたのか。
船の中で次々仲間たちを殺していくのは敵対する海賊なのか、それとも船の中にいる仲間の誰かなのか。
書庫に閉じ込められるという窮地に陥りながら、いかにして源氏物語全巻を盗み脱出したのか。
そして盗賊になるきっかけとなった叔父殺しはどのようにして成し遂げたのか。
聞き手が運慶、栄西、慈円、後鳥羽上皇に、かつての探偵役まで登場して楽しい。
ただ何となく明けの明星はあの人なのかな、と思いつつ読んでいたら、最後の話がまさしくあの歴史的事件を彷彿とさせる話だったのでやはりそうかと思ってしまった。
小殿はかつての自分の所業を深く悔やみ、武勇伝としてではなく悪行悪果として語っているのだが、周囲の人々、特に明けの明星にとってはそのようには受け止めてはいないようだ。
毎回謎かけを楽しみに聞いているし、結局は解けないのだけれどああでもないこうでもないと考えることを楽しんでいるようだ。
一人上皇はいくつかの考えを披露し、近いところまで行っているが真実を言い当てるところまでには行かない。
小殿がどのように自分の悪行を悔やみ、自ら検非違使の元に名乗り出ることにしたのかは明かされていない。
だがそれなりのきっかけがあったのだろうとは思われる。
通りすがりの女性が心配し優しくかけた言葉が小殿を盗賊にし、その悪行を悔やんで検非違使に名乗り出れば、罰せられることなく許され、検非違使の元で穏やかに暮らしている。
だがそのことで小殿は余計に苦しみ、そのエピソードを語ることで悪行が何かしらの善果になれば良いと願っている。
だが結局それは違う方向に行ってしまう。
何とも不思議な読後感の物語だった。
その中でもかつての探偵役が年を取ってもそのままのキャラクターでいてくれて、彼らしい罰を小殿に与えたのは少し救いだった。
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