あらすじ
令和に生きる私たちは、あらゆる企業間競争において、「規模こそ正義」の洗礼を受けてきた。規模はスケールメリットを生み、物の値段を安くし、効率化を促進し、経済を発展させた。結果、小さな存在は小さな存在のままでは存続できなくなった。小は大に呑み込まれ、その大も、より大きな大に呑み込まれる。資本主義の行き着いた先だ。
しかし、小さな存在が小さな存在のまま存続する方法があるということを、岩井清吉は生涯をかけて証明した。壊滅的敗戦から経済大国に成り上がったものの、そこから再び脱落しつつある現在の日本で、清吉の「破天荒な」生き様に視線を向けることには、何かしらの意味を見いだせるものと信じる。
なお、「破天荒」は誤用の多い言葉で、本来の意味は「誰も成し得なかったことを初めてすること」だが、現代においては「豪快で大胆、奔放で型破り」の意味で使用する人があまりにも多いため、それはそれで一定の市民権を得てしまっている。そのような誤解も孕んだイメージの揺らぎ、辞書の正しい定義を越えて人々に与える印象の幅広さも含めて、「破天荒」は岩井清吉という人物に相応わしい形容であるように思う。
地を這う蟻の目から見た、日本人の国民食たるポテトチップスの誕生譚。手触り感のある戦後大衆史。正史に綴られざる口伝の秘話。そして、ひとりの破天荒な菓子職人の物語に、しばしお付き合いいただきたい。
(序章「蟻の目」より)
【目次】
序章 蟻の目
第1章 馬山村
第2章 東京
第3章 チップ屋
第4章 巨人
第5章 ゲリラ
終章 一時
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Posted by ブクログ
副タイトルの「破天荒ポテトチップ職人」に惹かれて読みました!
取材や調査を重ねて書籍の形に仕上げるのは相当大変だったと思います。筆者の丁寧で綿密な仕事ぶりが垣間見えます。全体的に、ビジネスマンとかが好んで手元に置いておくタイプの本だと思いました。
破天荒の正しい辞書的な意味を再確認しました。タイトルにも意味が込められているらしいです。
やはり戦争の時代を知っている人たちのバイタリティと熱意は(もちろん人によるが)現代人とは何か質が異なるものがあるのではないかと思いました。清吉のこれまでに培ってきたものを全部使って本気で生きようという精神に圧倒されました。
人間離れしたハングリー精神の塊を持つ情熱敏腕経営者という印象がある清吉だが、一方で身内や自分の子どもに見せる良くも悪くも人間らしい部分も記述されており、公平さを感じました。
記憶の限り評伝(?)を初めて読んだが、ただその人を持ち上げて賞賛するわけではないと知りました。
菊水堂の薄味でじゃがいもの味がするというポテチ気になります。