【感想・ネタバレ】沸騰大陸のレビュー

あらすじ

「生け贄」として埋められる子ども。
78歳の老人に嫁がされた9歳の少女。
銃撃を逃れて毒ナタを振るう少年。
新聞社の特派員としてアフリカの最深部に迫った著者の手元には、生々しさゆえにお蔵入りとなった膨大な取材メモが残された。驚くべき事実の数々から厳選した34編を収録。
ノンフィクション賞を次々と受賞した気鋭のルポライターが、閉塞感に包まれた現代日本に問う、むき出しの「生」と「死」の物語。心を揺さぶるルポ・エッセイの新境地!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

もう何から書いていいか分からないくらい、濃い内容の本だった。
私はこのアフリカの問題に何が出来るだろうか。多分何も出来ない。知ることしか出来ない。

アフリカのいろいろな問題が提示されているが、共通するのは、人が不幸を感じるのは「貧しさ」ではなく「格差」、ということ。
アフリカにある豊かな資源を奪い合う。スマートフォンやゲーム機を使う私たち日本人も決して全くの無関係ではない。

ボコ・ハラム、イスラム過激派、ということは知っていても、ナイジェリアにいることを知らなかった。

ウガンダでは生け贄が求められ、子どもが犠牲になる。「ウガンダの人々から見れば、一部の富裕層は牛を増やしたわけでもなければ、農地を広げたわけでもない。にもかかわらず、都市部に億万長者が次々と現れるため、人々は「きっと呪術によるものだ」と信じ込んだ」そこでより強い魔力を持つとされる、性経験のない10歳未満の子どもを生け贄に求める。

こんな深刻な話なのに私の頭の中に出てきたのは吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」が思い出された。そして次に出てきたのは事件名は忘れてしまったが昭和の冤罪事件で冤罪となった人が無罪になったときに「故郷で牛を飼いたい」というような発言をしたが、長い間拘束されている間に故郷がもう都市になっていて、牛を飼える状況ではないことを知らされて、発言を変えた、という話だった。
「俺ら東京さ行ぐだ」がヒットしたのは都会の人が田舎の人の無知を笑っているところにあると思う(意地悪な見方かもしれない)。
理解が出来ないことが目の前で起こっているときに自分でも分かる説明を信じてしまうのは、誰でも思い当たることがあるのではないだろうか。ウガンダの人々を糾弾するだけでは問題解決にはならない。


コンゴでは2018年ノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲのインタビュー。
「ここで起きている紛争は、欧米で言われているような民族同士の殺し合いなんかじゃない。国と国とが領土を奪い合う戦争でも、宗教的な対立でもない。豊富な地下資源をめぐって引き起こされている、純粋な経済戦争なんだ」
「私も「祖国を誇りに思う」とここで言いたい。でも、いまはそれができない。十六年間、五十万人の少女たちがレイプされ、六百万人の少年少女が殺害されているというのに、、明確なビジョンも掲げず、敵と戦うこともしない国家に所属することを、誰が誇りに思えるでしょうか」

このノンフィクションの中では女性がレイプされる、という話がたくさん出てくる。なぜこんなにレイプをするのだろう、と疑問に思うほどに。レイプなんて簡単にできるものなのだろうか。動物でも昆虫でも交尾の間は無防備になるので、捕食者に狙われる率が格段に上がる。こういった兵士による集団レイプは捕まる危険性がないとわかっているから簡単にできるのだろうか。

男尊女卑の考え方が根強くあるのだろう。「兵士が女性を汚す」とムクウェゲさんも言っていたが、レイプにあった女性を汚れている、というのは間違っている。汚れているのはレイプを行った兵士だ。性器に木の枝を入れられ、喉まで貫通し亡くなっていた、という女性の描写がこの本には出てくる。狂っている、としか思えない。

それでも知らなくていいこと、とは思えない。何も出来ないなら、知っておくべきことだ。ぜひ多くの人に読んでもらいたい本だ。

0
2025年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

朝日新聞の記者をされていて、特派員としてアフリカ駐在中の2014年8月から2017年8月までの3年間での取材の記録をもとにしたエッセイを収録しています。

10年たっているから、当時の取材対象になった人々や社会の状況は今はまた変わっているのだろうけれども、

個々のストーリーはとても短く、本当に取材しきれなかった断片、という感じで、具体的な社会的背景や全貌を知りたくなるようなところで終わってしまうのですが、著者の鋭い着眼点や、人間への強い好奇心を感じました。

圧倒的な現実を前に、つまり、ことが絡まりすぎて混沌すぎて圧倒されるような状況を感じるのですが、直視し続けるのは皆ができることではないなーと思う。

また、アフリカというと最近はビジネス界を中心にポジティブなストーリーを強調するようなトーンが目立っているように思っていたので、そしてこの本のタイトルもそのようなノリな雰囲気があったので、内容が全力で負の側面押しだったので逆に新鮮でした。

0
2025年09月23日

「ノンフィクション」ランキング