【感想・ネタバレ】母の友2024年11月 特別企画「こどもに聞かせる一日一話」のレビュー

あらすじ

短くておもしろい童話が一挙30話! 恒例の特別企画「こどもに聞かせる一日一話」をお届けします。絵本作家、小説家、歌人、ミュージシャン、今年も様々な方がお話を寄せてくれました。後半ページでは、絵本『くだもの』の作者、平山和子さんのお嬢さん、日菜さんのエッセイ「ニューイングランドの落ち葉の季節に ~母・平山和子を見送って~」を。

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Posted by ブクログ

 特別企画の前に、「母の友」はなぜ創刊号(1953年9月号)で子どもが耳で聞く話を載せようとしたのか、それはまだテレビが普及していない時代に、子どもから「何かお話してよ」とせがまれる忙しい親御さんのお役に立ちたいという思いがあったことと、創刊編集長である松居直さんの言葉、『幼児にとって耳から聞く言葉の体験こそ、親と心をかよいあわせ、言葉のふしぎな力や働きを感じとる貴重な育ちの土台なのだと確信しました』から、『子どもとおとなの心をつなげたい』、そんな願いが込められていたことを知り、それは子どもにとって嬉しいのはもちろんのこと、親御さんにとっても、大切なお子さんとの貴重な楽しい時間を過ごすためのコミュニケーションツールとなり、だからこそ途中でこの企画が姿を消しても、また復活したのだと私は思っております。

 そんな子どももおとなも待ち望んでいた、年に1度の特別企画がついにやって来ました!!


特別企画『こどもに聞かせる一日一話』

 というわけで、これ1冊でバラエティに豊んだお話が全部で30話入っていて、それぞれのお話は見開きの2ページ限定なので、その見開きだけを見ながら、子どもはじっくりと親御さんの声に耳を傾けることができるし(しかもそれぞれに個性的な絵もついている)、親御さんも2ページだけならばと手軽に取り組める、それを11月1日から11月30日まで毎日読み聞かせしたとしても、お話が全くかぶらない。これって凄くないですか?

 そんなお話たちに対する私の試みとして、宣言通り今年もやります、「30話ひと言レビュー」です。これが少しでも特別企画に興味を持って下さるきっかけになれば幸いです。


1.トラの畑のフキノトウ
文 黒﨑美穂 絵 鬼頭祈
 日本画とともに人情味あふれる展開。

2.ふしぎなお誕生会
文・絵 花山かずみ
 限定ならば、是非この幼稚園に入りたい。

3.のりきりめいじん、のりのすけ
文・絵 おくはらゆめ
 海苔がノリよく繋げるふたりの愛。

4.迷子のチュン
文 佐野由美子(三重県) 絵 ユカワアツコ
 子すずめにとってハサミが好印象に。

5.石ころぼうやのぼうけん
文 中村文 絵 松成真理子
 形が三角でもひとり立ちできたね。

6.あまのじゃくのチッチ
文 乗松葉子 絵 100%ORANGE
 あまのじゃくだって気持ちは伝えられる。

7.朝寝坊したかった目覚まし時計
文・絵 植垣歩子
 周りに目を向けて初めて知ることもある。

8.おふろてがた
文 いしだえつ子 絵 三好愛
 子どもならではの宝物をチケットに。

9.ピーナッツ、さかだちする
文 乾栄里子 絵 西村敏雄
 どこに行ってもありのままでいい。

10.天から落ちてきた龍 宮古島の昔話
再話 頭木弘樹 絵 伊野孝行
 龍と子どもの等しい関係性が温かい。

11.虫のおきゃくさん
文 安藤邦緒(岐阜県) 絵 得地直美
 虫の気持ちが分かると、こんなに繋がれる。

12.コブマキガニのドリル
文・絵 死後くん
 捨てる神あればなんとやら。

13.たらいねこ
文・絵 いぬんこ
 結構シリアスだけど、絵も含めてお気楽な雰囲気がいい。

14.おきたい神様 ねむたい神様
文 いちかわぴぃ(群馬県) 絵 鹿又きょうこ
 見事なコントラストがいろいろと染みる。

15.プーケちゃんとアイスのうた
文 向坂くじら 絵 コドモペーパー
 今できなくてもいい、という安心感。

16.リンリンアイーと、お母さんの言葉
文 温又柔 絵 ながしまひろみ
 生まれる前から今日まで続いてきた思いが築く言葉と絆。

17.父さんギツネと母さんギツネのばけくらべ
文・絵 藤重ヒカル
 さて、影の立役者は誰でしょう?

18.たまねぎのおしろ
文 くらささら 絵 佐々木未来
 カレー作りから思わぬ冒険に。

19.きみどりいろのバラ
文 津村記久子 絵 スケラッコ
 お母さんの子どもへの思いが、そのメッセージからよく分かる。

20.ホタルとオオカミ
文 神野紗希 絵 イケガミヨリユキ
 オオカミにとって確かに永遠に輝く光だった。

21.おむすびきょうだいと大男
文・絵 垂石眞子
 おむすび食べたくなります。

22.サビンカとマクルカお話を書く
文・絵 出久根育
 出久根さんの頭の中で描かれた奔放な飼い猫たちが可愛い。

23.山の娘っこ 山形の昔話
再話 八百板洋子 絵 辻川奈美
 擬人化したらその存在の儚さが分かるのかも。

24.秋の日の森で
文・絵 しんよんひ
 どんな状況でも、できることってある。

25.ひみつのとんぼ
文 くどうれいん 絵 nakaban
 とんぼが人の指に止まるのって、何かあると思うんだよね。

26.アンちゃんとふしぎなちから
文・絵 石田菜々子
 ちょっと不思議な絵に家族愛が独特。

27.泣き虫のしんかんせん
文 柴田聡子 絵 あけたらしろめ
 モノクロの絵だから想像できる臨場感。

28.お菓子サーカス
文・絵 堀川理万子
 このコラボ、ありそうでなかったなあ。

29.ねこそば
文 山崎ナオコーラ 絵 ちえちひろ
 皆に平等にやさしいお話はナオコーラさんならでは。

30.アナグマさんの春の上着
文 ふくしまはな(東京都) 絵 岡田千晶
 春を迎えるにあたって、この喜びは計り知れないものがある。


 そして、平山日菜さんのエッセイ。

『ニューイングランドの落ち葉の季節に
~母・平山和子を見送って~』平山日菜

 その内容は、2022年10月に逝去された、絵本作家で彼女の母である平山和子さんが、ニューイングランドの彼女の家で過ごされた最期の日々で、その内容の事細かさには驚き、おそらく普段からお母さんのことをとても良く見ていたのだろうなということがよく分かる、その文体から滲み出てくるのは、母である和子さんがどのような思いで、これまでの人生を生きてきたのかを克明に伝えているからこそ、死を目の前にしても幸せな気持ちでいられる、そんなできることは全てやったのだという満たされた気持ちが、まるで私にも伝わってくるような、死は悲しいのだけれども、それだけではないものも感じられた、そんな不思議なエッセイであった。

 それと共に、そこに掲載されていた絵本『落ち葉』の和子さんの絵も印象深く、そのどこまでも精密に描ききった写実的な落ち葉の絵を見ていると、まるで人が塗ったような奇妙な色の組み合わせのものもあるのが興味深く、それらの色合いはまるで落ち葉それぞれの個性的な生き様のようにも思われてきて、そんな一つとして同じものは無いが、どれも惹きつけるものがある、そんなところに和子さんはきっと自分と重ね合わせるものもあったのではないかと思われた、それは日菜さんの言葉である、『母は感動するのが好きだった』が何よりもよく表しているようで、和子さんの絵本は単に写実的に描いただけではないのかもしれないと感じられたことから、私もそれらの作品を読みたくなった。

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2024年11月10日

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