あらすじ
地震の発生原因は、地球内部の熱移送であり、大地震発生前には必ずその周辺で熱移送と火山性群発地震が起きています。プレート説に基づいて地震予知研究をしているのは日本だけ。活断層が動いて直下地震が起きると思っているのも日本だけ。ほとんど信仰と言っていいプレート説を真剣に見直す時期が来ていると思います。
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Posted by ブクログ
南海トラフ地震が懸念されている地域に暮らす私は、小学校のころから避難訓練や防災訓練をやってきた。
自治体全体で取り組んできたため、地震に対する意識が他県の人に比べると高いと思うし、体に染み付いていると言った感じ。
地震予知も不可能であると言った説の本は読んだことはあるが、本書ではそれとはまた違った視点で南海トラフに地震について書かれている。
3.11の悲劇を目の当たりにして、実際に起きてみないとわからない「想定外」のことは起きると思い、『備えあれば憂いなし』と日々生活している。
Posted by ブクログ
熊本、北海道胆振東部、能登半島。東日本大震災以降も予知できなかった地震の数々。都度設定される境界面。形や数が確定しない。動く理由もしっくりこない。疑問が噴出するプレート説。引導を渡したマントルトモグラフィー。冷たく固い岩石層はとびとびにしか存在していない。ぶつかりあいは起こらない。変わって浮上してくるのは熱伝導説。多くの疑問を解消する。…予算獲得手段として、利権化する南海トラフ地震予測。原理はまだまだ藪の中。仮説は否定しないが、妄信もしない。無知の知を知り、恐れ過ぎず、油断せず、憂うだけでなく備えておく。
Posted by ブクログ
地震など地殻変動の仕組みとしてほぼ定説となったプレートテクトニクス説(プレート説)を「キリスト教との親和性が高く、地動説に等しいイデオロギー」と切って捨てる筆者が代わりに唱える「熱移送説」。
中国四川の地震など、プレート界面から遠く離れた場所で発生する地震はプレート説ではうまく説明できないが、熱移送説では整然と説明できる。
プレート説では想定外の場所に地震が起きるとそれに整合するようにマイクロプレートを追加して説明するが、筆者はそれを「目的と手段が逆転している」と批判する。
プレート論の紹介書の著者中島淳一氏も著書に書いていたマントルトモグラフィという、MRIの技術を応用し地震波により地下の硬度分布を測定する技術により地球内部の温度分布が明らかになり、地球内部の外核から地表に向かう高熱の通り道「スーパープリューム」の存在が確認されたという。
日本近辺ではマリアナ諸島から太平洋を経て日本に至るMJライン、フィリピンから台湾を経て日本に至るPJライン、スマトラ島から中国に至るSCラインの大きく3つのルートがあり、四川地震はSCラインによって発生すると考えられる。
1970年頃プレート説が紹介される以前、日本の地質学者、地震学者は地震や火山活動は地中のマグマが原因という熱移送説と整合する説を取っていた。
米国からプレート説が紹介されるとさまざまな経緯(小説「日本沈没」も一役買った)でそれに席巻され、地震(予知)研究はそれを前提に長い時間と巨額の費用が費やされたが特に目ぼしい成果は上がらずにいる。
熱移送説であれば、移送路の上流で起きた地震や火山活動を注視し、年約100キロという移送速度から到着時期を導出すれば、どの経路にいつ影響が出そうかは大体の予測がつく。
プレート説の基づく研究や防災体制は即座に見直すべきと筆者は主張する。
正直どちらか正しいのか即断は難しいが、プレート説で全てを説明できない以上、それだけに賭けるのではなく両方の説に沿った動きをしていくべきではないか。
どちらの説がより説明力が高いかは今後自ずと明らかになっていくだろう。
Posted by ブクログ
著者角田史雄氏は、「プレートテクトニクス」説が誤りであり、それが地震予測・防災政策を誤らせてきたと主張している。著者は「熱移送説」を主張しているが、学術的に受け入れられているものではないと思われる。南海トラフ偏重の防災政策に対する批判は首肯できる点も多いが、理論については注意して読む必要があると思う。
【目次】
はじめに
「プレート説」は真理なのか
1億2000万人の信者を擁するプレート説は現代の「天動説」
50年を無駄にした日本の地震学
第1章 プレート説は「現代の天動説」
プレート説とは何か
米ソの冷戦中に誕生したプレート説
プレート説の誕生
プレート説の骨格
宗教色が強いプレート説
プレート節への疑問が噴出
大陸移動説の誤り
大陸はプレート説どおりに動いてはいない
プレートはなぜ動いているのかわからない
イデオロギー化するプレート説
状況を一変させたマントルトモグラフィ
地球内部を明らかにしたマントルトモグラフィ
プレート説に引導を渡したマントルトモグラフィ
その場しのぎの言い訳に終始する地震学者
存在が証明されていないアスペリティ
第2章 日本地震学の「黒歴史」
東日本大震災後の地震学者の反省
地震学者と地質学者
問題の本質はプレート説導入の経緯にある
プレート説の普及に決定的な役割を果たした『日本沈没』
地学団体研究会の誕生と発展
地質学者の主張は間違っているのか
活断層は地震発生の原因ではない
活断層が自ら地震を発生させることはできない
3つの地震が統合されて「南海トラフ地震」になった
江戸時代のデータもある南海トラフ地震の確率根拠
マグニチュード9シンドローム
利権と化した南海トラフ地震対策
第3章 地下の「熱移送」が地震を引き起こす
松代群発地震
地震の謎に迫った松澤チーム
地震を人工的に起こす
熱移送説
プレート説では説明できない四川大地震
地球内部の熱の流れ
高温から中温の場所でしか地震は起こらない
二十数億年前に起きた最初の大地震
日本列島形成の主役もマグマ
東日本大震災発生のメカニズム
南海トラフ地震の危険性をどう見るか
地震と火山の噴火をセットで考える
富士山の噴火は当面ない
富士火山帯の東縁の伊豆半島近辺も危ない
西日本における要注意地域
九州や北陸、東北における要注意地域
第4章 日本の防災対策を抜本的に見直せ
プレート説に依拠した地震予知
予知研究を行っているのは日本だけ
転機となった阪神淡路大震災
把握が難しい地球内部の動き
地震予知の体制を自治体ベースで再構築する
地域の「揺れの癖」を知る
高速道路を倒したのもドスン揺れ
ユサユサ揺れで二重のダメージ
地域の特性に即した対策を
相模地域では山崩れや土石流に要警戒
湘南地域は津波に要警戒
京浜・京葉地域と埼都地震帯はドスン揺れが狙い撃ち
わが家の地震カルテをつくる
「机にもぐれ」には問題あり
おわりに
日本の地震学
「プレート説の呪縛」を解いて自由闊達な議論を
Posted by ブクログ
地震発生メカニズムとして主流のプレートテクトニクスを全否定、地震の原因は地球内部からのマグマ熱昇流《マントルプリューム》の流れであるとします。確かにプレートテクトニクスは疑問が指摘されているなか、プリュームテクトニクスから導いていく興味深い考え方です。地下で見えないエネルギーの話なので、なかなか理解が追い付きませんでした。本文中の個別地震との関係性の説明は、紙幅の関係からか、やや牽強付会な印象を受けましたが、熱伝導の理屈を火山と地震の関連性に適用し、エビデンスを補強して立証していけば、あるいは、この考えが正しいのかも知れないと思いました。