あらすじ
蝶の翅が生えた人型アバターが生息するVR空間〈バタフライワールド〉、通称BW。BWでは非暴力が徹底され、アバター同士が傷つけ合うことは不可能だ。現実生活の辛さからBWに住み続けたいと願うアキは、ログアウトしない者たちが暮らすという〈紅招館〉に、相棒のマヒトと共に向かう。アキとマヒトは、館に宿泊させてもらえることになるが、翌朝、住人の一人がナイフの刺さった死体となって発見される。さらに第二の事件が……。非暴力が絶対のルールの世界で起きる不可解な謎に、重厚なロジックで挑む傑作本格ミステリ!
※本作品は2021年8月に小社より刊行された単行本『Butterfly World 最後の六日間』を文庫化に際し、改題したものです。
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Posted by ブクログ
VR世界・Batterfly Worldを舞台に、ずっとログアウトせずに暮らすアバター達に会うべく、現実に疲れた少女アキと謎の少年マヒトが訪れる。この世界では非暴力を掲げ傷つけることが不可能なのだが、そこでナイフで刺されて絶命するアバターが発見される。そしてサイバー攻撃によって館から出られなくなる中で、さらなる寺家が発生し...、という展開。
アバター内で起きるはずの無い"殺人事件"が発生し、それを解き明かすという物語。今のアニメに多いVR世界を舞台にしながらもミステリーとしての面白さと、ルッキズムや差別、命の尊厳など考えさせられることの多い内容で骨太な印象を受ける作品でした。容姿の事に苦しみ引きこもりになってしまったアキ、命の尊厳と隠された秘密を守ろうとする犯人、アキを苦しみから救い出そうとする男達。謎の裏に隠されたドラマが切なくて、それぞれが選択し決断していく過程がとても良かったです。最後の別れが凄く切なかったですが、それによってアキが新たな道を選べたこと、現実世界でも別れを選べたことが彼女にとって良い区切りになったのかなと思いました。複線もしっかり回収され大団円で終わったのだが、欲を言えばマヒトが現実世界ではどこに居る人なのかという所でドラマを作っても面白いのかなと思いました。
最後にこの作品をアニメ化したときの声優陣を自分なりのキャスティングにしたので読むときの参考にしてください。
アキ(花沢亜紀):鬼頭明里
マヒト:岡本信彦
クリス:沢城みゆき
狩人:杉田智和
百合:早見沙織
うさぎ:釘宮理恵
ブーメラン:藤原夏海
歯車:逢坂良太
ステラ:くじら
ミニー:湯屋敦子
P3/クライド:福島潤/安元洋貴
灰:大塚芳忠
花沢守:花江夏樹
西園寺和馬:石川界人
福間美幸:日笠陽子
前崎尚道:飛田展男
Posted by ブクログ
VR空間で起こった殺人事件を描いたミステリー作品で、初めての世界観でした!
多様性を受け入れようとか、差別や偏見はよくないという世の中だけど、まだまだ自分達って見た目の美しさで人を判断したり、評価したりしてる気がしました…
また見た目が美しくないからと、自分自身に劣等感を感じてる人も多いだろうなとも感じました。
そんな中、VRの世界に居場所を見つけて救われた登場人物が、仲間や居場所を守りたいって
考えるのはすごく共感できました!
Posted by ブクログ
蝶の翅が生えた人型アバターが生息するVR空間、バタフライワールド。
バタフライワールド内では非暴力が徹底され、アバター同士が傷つけあう事は不可能だ。
現実世界から逃避し、バタフライワールド内で暮らし続けたいと願うアキは、相棒のマヒトと共に、ログアウトしない者たちが暮らしているという<紅招館>に向かう。
トラブルから館に宿泊させてもらえることになった2人だが、翌朝住人の一人がナイフの刺さった死体となって発見される。
非暴力が絶対ルールのVR世界で起こった殺人事件の真実とは。
非暴力が徹底されたVR空間内で起こる殺人事件を描いたミステリ小説です。
縛りの多い特殊設定ミステリですが、そこまで複雑ではなく読みやすいです。
紅の謎には割と気づきやすい気がしますが、人を傷つけられないという制限のあるなかの事件はミステリアスで、ワクワクします。
また、ルッキズムをメインにいじめや差別といった社会問題にも切り込んでいて、ミステリとしてだけではなく、登場人物の癒しと成長の物語としても結構好きでした。
辛い現実ではなく、自分に対して優しい世界に耽溺していたいという気持ちはとても分かる。わかるからこそ、アキの聡明さと獲得した強さに心惹かれます。
爽やかさもありながら物悲しいラストシーンも好みでした。
3DとかVR系酔いまくるので全然馴染みがないんですが、こういう本を読むとやっぱりちょっと興味が湧きます。
Posted by ブクログ
初めの方の世界観の説明のところは結構強引だなぁとは思いましたが、全体的には読みやすくて面白い作品だったと思います。
紅の謎は察しがついてましたが、VR空間の制約をどう破るのかは自分はわからなかったので最後の解決編はとても楽しく読めました。