あらすじ
魔術が終わる時代に、ふたりは戦場で出会った。
17世紀、イングランド。母と暮らした幼い頃から、オスカーの願いは〈世界のルールを解き明かす〉ことだった。数学の才を持つ彼は、ケンブリッジ大学でニュートンに師事する。けれど、王位継承を巡る反乱が勃発し、戦場へ。窮地に陥った彼の命を救ったのは、人知を超えた力を操る謎の男、アズ・テイルズだった。物理法則に従わない未知の存在を解き明かそうとするオスカーと、自分が解き明かされる日を待ち続けるアズ。ふたりの出会いが、人類の〈科学〉と〈戦争〉の歴史を動かす。
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Posted by ブクログ
ヴァンパイアが出てくるのでファンタジーではあるが、イギリスの17世紀の歴史とニュートンなどケンブリッジの学究や科学発展の側面が融合していて面白い。また主人公オスカーの美しい世界、学問への信仰が揺るぎないことに感動しました。ヴァンパイアのアズとの友情は、唯一無二の愛と言ってもいいでしょう。アズの孤独を思って涙が出ました。
Posted by ブクログ
ヴァンパイアと数学者の話なので、この感想が適切かどうかは分からないんだけど、すごく言葉の定義が綺麗な話だった。
怪物という言葉に未知という意味を重ねて、最終的に無知という意味も添えられて、読み終わる頃には「怪物を殺し尽くす存在」という序盤に出てくる言葉が違う意味になっていく過程を読んでいくのが素敵。
終盤になるにつれてアズとオスカーの結末から目が離せなくなるし、最後の1ページまでじっくり噛みしめるように読んでた。面白かったです。
Posted by ブクログ
河野裕作品は初でした。
絶妙に史実を織り交ぜつつヴァンパイアというファンタジーの生き物と人間の友情の儚くて切なくてとても美しいお話でした。
作中に出てくる「怪物というのは、無知につけられた名前なのだと思う。知らないことを、知ろうともしないまま、ただ恐れている言葉」という台詞は現実を生きる人達にも刺さるというか、言える言葉だよなぁと。無知であることの怖さというか…だからこそ知的好奇心が旺盛で知ることを幸せだと言えるオスカーはアズを最期まで"怪物"とは呼ばなかったしそう呼ぶことを拒んだし、オスカーの強さでもあったんだろうなぁ
Posted by ブクログ
終盤は、泣きそうだった。
学問の未来のために命を差し出そうと決めたオスカー。
「世界はこんなにも魅力的な未知で溢れているのに、どうして。どうして僕は、死ななければならないんだろう」
この国の未来よりオスカーひとりを生かそうと決めたアズ。
「私は、また救えないのか。」
美しい未知に手を伸ばしたくて仕方がない人間への敬愛にあふれた物語だった。
私たち人類は確かに、無数の今を越えて、遠い未来まで進み続けている。
Posted by ブクログ
17世紀イングランド。無血革命に繋がる時代、永遠を生きるヴァンパイアと、学者の青年オスカーの友情のお話。
学問というものへの見方がかわる。
すごく尊くて美しい物語だった。
ヴァンパイアの名前が、もう素敵だ。アズ・テイルズ。
特にエンディングが素晴らしく美しくて好き。
オスカーとの約束通り、75年後のハレー彗星を確認するアズの姿が、自然と浮かび上がってくる。
本当に綺麗な画が頭に浮かぶ。
ハレー彗星の夜空を見上げながら、愛した友人と人間への賛美を語るヴァンパイアの結末、美しいの一言だった。
Posted by ブクログ
学者が領主のために命を懸ける姿に凄さを感じた。
ヴァンパイアは飄々としていたけど、最後は主人公のことが好きだったのだろうな。
私は科学のことは分からなかったけど、この時代は学者は研究だけに集中することは出来なかったのだなと、少し悲しさも知った。
Posted by ブクログ
少し理系の人が読むと
楽しい物語です。
「対比」がキレイだと思いました。
・科学と非科学(ヴァンパイア)
・父と子
・ニュートン力学と量子力学
(確定性と不確定?(存在するけど曖昧…的な))
そして
名誉(無血)革命にヴァンパイアが絡んでるという仕掛け!
爽やかな読後感を残す作品でした。
アリソンが…。
終盤でアズが殺戮を開始するシーンで、アリソンも巻き込んだのが悲しい…。
アレってオスカーがアズと交わした約束を破ったからだよね…。
最初読んだ時は約束をすっかり忘れてて巻き添え食らったアリソンが不憫でならなかった…。
オスカーも考えるのに忙しくて約束の事失念してたみたいだし…。いや、それとも覚悟の上だったのかな?
まぁ…、あの状況じゃアレが最善だったのかな…
何にせよ、最初から最後まで酷い目にあわされっぱなしで結局死んじゃったアリソンが一番心に来た。
いやぁ、生きてて欲しかったなぁ…。
Posted by ブクログ
科学とファンタジーが組み合わさった物語で、評判も良さそうだったので読んでみました。(勝手な表紙のイメージから)ハラハラドキドキ系かと思っていましたが、予想と違い、淡々としたストーリー展開でした。でも最後の方はページをめくる手が止まらず、切ないもののタイトルと伏線の回収が見事だったと思います。
Posted by ブクログ
本作は、自然科学の数学的原理の範疇を超えた存在であるヴァンパイア、アズ・テイルズと、その不可思議な【現象】の解明を目指す自然科学の徒、オスカー・ウェルズの物語です
学問の本質は天才による大きな前進よりも人類の総体としての知の集約と漸進にあるという考えが、本作品全体の基軸になっています
その考えは、大学院・企業の研究所に身を置き、自然科学の一端を探求したものとしてある種当然でややありきたりでした
より広く解釈して、生命の進化の結果として人類が生まれ自然法則を紐解きこの世界の理に挑んでいることそのものが科学の神秘であると感じます
河野裕作品の大ファンですが、本書よりも他のシリーズのほうが言葉の美しさや思想の清廉さが感じられ、私は好きです