あらすじ
「神」とまで呼ばれた天才少女はなぜ、自身の手がける舞台の上演中に死んだのか?
演劇女子学校に入学した結城さやかは、劇作家を目指している。同学年には同じく劇作家志望で、学内一の天才と謳われる設楽了がいた。了は俳優の能力を引き出し、観客を魅了する舞台を作り上げる卓越した才能をもっていた。了の手がける舞台に上がりたい、了に認められたいと俳優志望の生徒達はこぞって渇望する。次第に周囲から「神」とまで崇められた了は、横暴な振る舞いをしても良い舞台を作るためだと許された。しかしそんな了は突然、自分の手がける演劇の上演中に舞台から転落死する。不幸な事故だと片づけられたが、翌年の春に入学してきた新入生・藤代貴水は全校生徒の前で高らかに宣言した。「わたしは、設楽了の死の真相を調べに来ました」――さやかは貴水に巻き込まれる形で、了と生前の関わりのあった生徒を調べることになり・・・・・・演劇を愛する生徒達が内に潜んだ「殺人者」を暴き出す、眩く鮮烈な学園ミステリー!
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Posted by ブクログ
女子生徒だけの閉鎖的な空間の中で、
なぜ神と崇められる少女は死んだのか?
神と崇められる少女が死んだ。その理由が分かった時、なんて無慈悲な世界なのだろうと思いました。
少女たちが抱える秘密が切なく重く、
少女たちが葛藤に苦しむ姿、とても切なく重く胸に残りました。
Posted by ブクログ
結城さやかが通う百花演劇学校は、演劇のプロを育てる名門校。それだけに生徒のレベルも高く、なかでも設楽了は神と崇められるほどの天才劇作家だった。そのおかげで、おなじく劇作家を目指すさやかは万年2位に甘んじていた。
さやかが2年生のとき、公演中に了が奈落へ転落するという死亡事故が起きてしまう。そのときは事故として処理されたが、翌年、了の死の真相を調べに来たという新入生が現れたことで、事件は再び動きだす。
果たしてそれは事故だったのか、自殺だったのか、それとも……。
という話。もうね、めちゃくちゃおもしろかった!
読みやすい文章と、真相がわかるまでのプロセスがきれいで、展開が滞りなく進むから中ダレすることもなくスイスイ読めちゃう。
登場人物たちの心理描写もすごく自然で、登場するのは才能あふれる子たちばかりで自分とはほど遠い存在なのに、それでも容易に彼女たちの気持ちが想像できる。「俺TUEEE!!」じゃなくて、なにかの才能に特筆していたり、なんでもそつなくこなす能力を持っている「だけ」のただの女の子だから。人間味あふれるキャラ像が親しみと共感をもてて良かった。
とくに主人公のさやかは真面目すぎるほど真面目で、おまけに超不器用。プライドは高く、驚くほど鈍感。だけどその実直さに嫌味がなく好感をもてる。凡人なりに天才に真っ向勝負するひたむきさとか、脅迫されながらもコンペに参加する芯の強さなど、魅力あふれるキャラだ。
かたや神と崇められる設楽了。彼女が書く脚本は誰もが心奪われるほどの作品で、演出をすれば絶対に良い舞台ができる。舞台以外のことは考えない完璧な劇作家だから、暴言を吐いても暴力を振るっても誰も文句を言わずに受け入れている。はじめは才能を盾にしたいけ好かないキャラだったが、のちに人並みに悩んだり悔やんだり、死を恐れたりしている「ふつうの」女の子であることがわかると、一気に親しみが沸いてくる。
どの生徒にも共感できるから没入感の高い作品となっているのだと思う。
いっぽうで登場する大人たちには腹の立つことばかりだった。氷菜の父親もそうだが、なにより教師陣よ。いままで生徒をちゃんと見てきたのかって、怒りを通り越して呆れた。プロとして活動している大人でも崇拝してしまうほどの魅力が、了の作品にはあったってことなんだろうけど。そこは切り分けて考えるべきことなのに……。
物語を作るのは生徒だけど、悪役は大人たちにもっていかせる。そこもまた上手いなぁと思った。
なにかひとつ文句をつけるとしたら、犯人(便宜上そう呼ぶ)に意外性がなかったことかな。王道ミステリの犯人像そのままの人物が犯人だったから驚けなかった。
Posted by ブクログ
演劇学校内で起きた転落死の真相を知る物語。
俳優志望の少女3人に事情を聞いた後の、「この人は犯人じゃないな」と、主人公があっさり認めていく展開が、単調に感じてしまった。
最後の舞台で真相を知る者と対峙している時には、マクベスをあまり知らないながらも、タイトル通り、マクベスを高校生に落とし込んだ物語だったんだと感じられた点は面白いなと思った。
コンペ用の台本を紙で印刷して、先生の机に置いて終わりなんて、「絶対すり替えがあるだろ」と思ったし、かつ先生が、すり替えを決めつけていたのは、「どんな先生だよ、コンペを失格にさせる展開が雑だな」と思った。
相手が自分を崇拝していたとしても、それが嫌だと感じるなら、嫌われる勇気を持って、伝えるのが大事だなと思った。
話題作だから読み始めたが、学園物の青臭さがなんとなく自分には合わないのかなと思い始めた。
Posted by ブクログ
読んでるときに「この子のこういう一面がマクベスに重ねられてるわけね、この子にとっての魔女はこの人な訳か」と思ってたら、あれこの子も、この子も、と続いて皆なにかしらマクベスだし、そういう意味では「マクベス」は皆が持つ不安定さを描いた作品なのかもな、と、思いました。
それとは別で、閉鎖された空間の中ではそこの空間で能力が高いだけで神のような扱いをされて神のような振る舞いをしてしまうことについて、「それはおかしい」とはっきり書かれていて、会社とかでそこの仕事が詳しいだけで人として偉いように振る舞う「偉いさん」を否定しているようなところが共感できた。