あらすじ
13歳の少年は密航者としてシベリアに送られた。
彼が故国の地を踏むまでに40年以上が過ぎていた。
敗戦後、ソ連に占領された南樺太。日本に帰ろうとする人、逆に家族との再会を目指し樺太に行く人は密航者とされた他、不当逮捕された人も多い。彼らは如何に生き延びたか?
8年強の取材で明かされる“この国”の秘史。
鉄道員、炭鉱夫、大工、運転手……。敗戦後の南樺太で彼らは突然逮捕された。彼らや密航者は囚人としてラーゲリに連行され、苛酷な労働の刑期が明けてもソ連各地に強制移住させられる。
更に組織も名簿も持たないため引揚げ事業の対象外となり、生き延びるためにソ連国籍を取得すると、日本政府は数百人にのぼるシベリア民間人抑留者を「自己意思残留者」として切り捨てた。
ソ連崩壊後、彼らは“発見”される――。
国がなくとも何者でなくとも生き抜いた男たちとその家族の、格闘と尊厳の軌跡。
【目次】
はじめに 荒野に四七年、名前の漢字だけは覚え続けたーー小関吉雄
序章 もうひとつの抑留史――南樺太から囚人としてシベリアに抑留された民間人
第一章 “幽霊”からの帰還――植木武廣
第二章 “再会”という苦悩、女たちの抑留――木村鉄五郎
第三章 母親は一三年間「戦時死亡宣告」を拒み続けた──佐藤弘
第四章 六六年を経て日露の家族がひとつになった日――結城三好
第五章 一三歳の密航者、カザフスタンで「サムライ」となる──三浦正雄
第六章 たった独りの日本人収容者──伊藤實
第七章 決死の脱走、KGBの監視下に置かれ続けた男――熊谷長谷雄
第八章 受け入れなかった故国、死去二四年後の死亡届――圓子賢次
終章 シベリア民間人抑留者群像
おわりに
シベリア民間人抑留者未帰還者一覧
主要史料・論文・参考文献・映像一覧
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦後の混乱期に南樺太で逮捕され,その後ソ連の収容所で強制労働された人々.
1950年代に帰国事業が始まるが,様々な理由で(大抵は現地の人との結婚)帰国をしなかった人もあった.彼らはその後長い間忘れられ,日本政府にも見捨てられていたが,ソ連崩壊後に再発見される.
ある人は一時帰国を果たし,ある人は日本国籍を取り戻し,しかしロシアを脱出するのには50年もかかったわけであり,それらを果たせた人はごく僅かであった.
本書はそんな人たちを描く良質のルポタージュである.
Posted by ブクログ
p32「樺太ではこうして戦後数年間、多くの民間人が“囚人として“ソ連本土の収容所に送られていった。その数は、3000人とも4000人ともいわれ、実態は何も把握されていないことを物語っている」
こんな時代に、苛烈な人生を送る事となった人物1人1人をつぶさに取材、その内特に9人について詳述したルポルタージュ。シベリア等内陸部に送られる理不尽さ、日本人家族との別れ、連絡の途絶え、ソ連やウクライナ等大陸の女性との出会い、子供や家族との生活、その後の日本への帰国にまつわる話など、淡々と描かれるのだが、何故か読むのを途中で止められない気にさせるものがあった。
「愚かな戦禍によって人生を翻弄された、名もない人々の貴重な魂の歴史がそこには息づいていた」からなのだろう。
Posted by ブクログ
戦争が産んだ悲劇と言うか、ますますロシアが非道な国に感じる。ロシアでなければここまで酷い状態にならなかったのではと思う。
日本の敗戦がほとんど決まった状態で日ソ不可侵条約を一方的に破棄して攻め込んで来て領土強奪はおろか非人道的な抑留を行う。火事場泥棒と言っても過言ではない。
ウクライナ侵略も歴史は繰り返すでもないけどロシアと言う国家の体質は変わらないなぁ。