あらすじ
「どうせ、……いつかはお互いに、戦場で死んでしまうんだ、それなのに……それなのに……」
志願兵として「不沈艦」に乗り組んだ少年・北野が直面した海軍の現実とは? 1943年春、いまだ戦火から遠い播磨(武蔵をモデルとした架空の船)はトラック島へ入港、同型艦大和から連合艦隊旗艦を引き継ぐことになる。帝国海軍の旗印として聳え立つ「海の城」の上では、法外な私的制裁、理不尽な罰直、性的虐待が横行していた。北野たち新兵は、剥き出しの暴力を必死に切り抜けるが、やがて同胞の命を失うことに……。銃火も爆撃もない、知られざる地獄を描く無二の戦記文学、復刊!
◆毎日のように甲板に整列させられ、棍棒で殴られる
◆自殺した同胞の遺体に暴行する憲兵
◆同年兵同士を殴らせ合う「対向ビンタ」
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Posted by ブクログ
一応、小説の体裁。帝国海軍の戦艦に、水兵として乗るということが、いかに精神的、肉体的に辛いことであり、甚だしきは、戦闘でなく上官によって嬲り殺しになることもある、というリアリティに溢れている。
戦争の最前線に臨む兵というものは、それぐらい理不尽な鍛錬?によってスクリーニングされていなければ、ここが切所というときに逃亡などをはかり、全軍にダメージを与えかねない、というのが、制裁・しごき・・が指導層によって黙過されてきた理由ではある。しかし、古年兵が初年兵に精神注入棒を見舞うときの感情は、もはや野獣めいた感覚でしかなかろう。兵隊と人権は、もともと相容れないものだということ。