あらすじ
「閉店って。店、やめるってことか」
私は無言のまま、ちいさくうなずいた。
昭和29年に待兼山駅の近くで、父と母が始めた書店と喫茶店。1階の書店を兄が、2階の喫茶店を弟が継いだが、時代の流れもあり、最寄駅の名称が変わるタイミングで店を閉じることに。
喫茶マチカネの店主・今澤敦己は、店を愛する客からの提案で、残された数カ月の間、心に残る不思議な経験をゲストが語る会「待兼山奇談倶楽部」を開催する。そこで語られた、人生におけるとっておきの出来事とは……。
心あたたまる連作短編集。
(第一話:待兼山ヘンジ/第二話:ロッキー・ラクーン/第三話:銭湯のピアニスト/第四話:ジェイクとあんかけうどん/第五話:恋するマチカネワニ/第六話:風をあつめて/第七話:青い橋)
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Posted by ブクログ
お初の作家さんです。
大阪大近くの待兼山駅にある「喫茶マチカネ」
駅名変更のタイミングで閉店するということをきき、長年の常連沖口さんがこの街で起きる不思議な話を語る会『待兼山奇談倶楽部』を提案する。
そして月一回開催され、語られた話は本にして残すことになる。
カレー屋のマスターが長年応援していた競走馬「ロッキーラクーン」の話
銭湯でピアノを弾いていた学生の話
戦後の貧しい生活の中 あんかけうどんを在日の子供に食べさせていた話などなど
どれも 切なくて、優しくて暖かい。
1つ1つが不思議で、でもその人の人生が詰まってて、聞きたくなってしまう
(読みたくなってしまう?!)
超感動!!とかいう 心の動かされ方ではないけど ほっこりとして優しい本でした。
Posted by ブクログ
優しく、心温まる話。
待兼山ヘンジの日、夕日に照らされると、並行世界が繋がる。
石橋駅のある世界から、並行世界に落ちた人が、その世界で暖かな人達に囲まれて、待兼山奇譚倶楽部を発足し、不思議な話を月に一回する。
応援してた馬らしき青年がお礼を言いに来る話。
ピアニストとストリッパーが一度夢を諦めても再度夢に向かって歩き出す時の、不思議な邂逅。
戦争から帰ってこない息子を待つ父親の元にフィリピン人の友人の子供として戻ってきた息子。
マチカネワニの二体目の化石を探す少年達。
戦後の高度成長期に、朝鮮戦争に反対した青年達が喫茶マチカネのオーナーの父だった事。
そして、待兼山奇譚倶楽部の発起人が石橋駅のある並行世界が来た話と、元の世界の妻に本を届ける話。
誰かが誰かを思い、大切にした事がわかる、優しい話。
「自分ができることで、少しは人に喜ばれるようなことを、それぞれが突き詰めていくしかない。そうしたら、その先の未来が、今より悪うなるはずない」
は、心に刻みたい名言。
Posted by ブクログ
何を隠そう私も阪急電車ユーザーなので、本書の舞台となっている駅を何度も利用したことがありますし、駅前の街並みや商店街の雰囲気もよく知っています。
ふむふむ、作中では「待兼山駅」と言い換えているんだな。
商店街を抜けた先にある橋は赤色だったはずだけど、作中では青色という設定なんだな。
そんなことを考えながら読み進めていきましたが、最後の章に差し掛かったときに全ての謎が解けました。
どの奇談も引き込まれましたし、本当にこんな出来事もあったりするのかも…と思わされました。
本書の内容を覚えているうちに、「石橋阪大前」駅をまたぜひ街ブラしたいですね。
阪大の豊中キャンパスにあるというマチカネワニの化石を見てみたいですし、夕日が落ちる瞬間を狙って待兼山ヘンジを体感したい!
もしかしたら願いごとが叶っちゃうかも…?!ですね。
Posted by ブクログ
なんだか不思議で、けれどとっても温かな気持ちになれる7話の連作短編集。
長年に渡り地域の人たちに愛され続けた『喫茶マチカネ』が閉店することに。そして同じく地域の人たちが長年利用してきた『待兼山駅』の駅名も改称されることに。閉店と改称を惜しみつつも、待兼山駅のある街の思い出を共有しようと、街で経験した不思議な話を語り合う会が発足した。
初めは語り合うような話が出てくるのか、と心配したけれど出るわ出るわ。しかもじんわり泣ける。
「こういう偶然は、きっといつでも、いろんなところで、いろんな人に、普通に起こっているんだ、と思うから。ただ、みんな、気づかないだけ」
もしかして本当にそうなのかも、と思わせてくれる作品だった。
それにしても最後のオチにはびっくり。初めはなかなか理解できなかった。
Posted by ブクログ
喫茶マチカネで月に一度開かれる待兼山奇談倶楽部で話されたお話を集めた本です。奇談倶楽部という名前の通り、少し不思議な体験をしたという話が多かったです。全7話あり、自分は「銭湯のピアニスト」が好きでした。最後の話にはパラレルワールドの話が出てきて、最初の話と繋がっていくところが面白かったです。
Posted by ブクログ
阪急宝塚沿線在住なので、ああ阪大ね、はいはい五月山ねと思いながら読み進め、肝心の待兼山だけが分からずもやもやしてたら、まさかのオチ
異世界ファンタジーで剣と魔法の世界に飛ばされました、よりも石橋駅じゃなくて待兼山駅の世界・・・だと?!の方がよっぽどぞっとした
ただ、これが鳥取駅の隣は鳥取西駅じゃなくて砂の丘駅だと?!と言う話でも、そうなの?砂の丘駅ってないの??位で、然程衝撃は受けないと思うので、多少読者を選ぶ作品かも
Posted by ブクログ
最後がこっちの世界とあっちの世界という2つの世界線の話になりファンタジーだった。そこまではそこで生きていた人たちの巡り合い的なお話。
私はファンタジーが苦手ななので、最後が、んー…