あらすじ
「歪(いびつ)に見え実は巧みなフランス語でヴェールを纏(まと)ったサロメの姿を、初めて日本語で見た。クイアに美しく、リリカルな声に身震いがした」ロバート キャンベル(国文学者)
日本初演から110年。
「本当のサロメ」とは?
最新研究に基づく画期的新訳×新解釈で、物語の真の意味が明らかに!
日本初演から110年。私達は「本当のサロメ」に初めて出会う。
――月夜の晩。エロド王に請(こ)われ、妖艶な踊りを披露したサロメ。王に求めた褒美は美しき預言者ヨカナーンの首だった。少女の激情を描き、男性同性愛の記号(モチーフ)を潜めることで、当時の西欧社会の抑圧を挑戦的に描いた本作は、実はワイルドの抵抗(レジスタンス)!? 仏語原文を忠実に読み解き、見過ごされてきた男達の意外な葛藤を示し、真のドラマ性を見事に新訳! ビアズリー画18点掲載。
【日本初演から110年。新訳で物語の真の意味が明らかに!】
ポイント1 今まで見過ごされてきた男たちの意外な葛藤を訳出
人との距離感を表す、仏語の二種類の語法――ヴーヴォワイエとチュトワイエ。それを原文通りに丁寧に訳しわけることで、ヨカナーンらの意外な葛藤を表現!
ポイント2 サロメに隠された男性同性愛の記号(モチーフ)
劇中に登場する「緑のお花」は、実は男性同性愛の記号。そのためラストの悲劇的展開には、キリスト教による弾圧への抵抗(レジスタンス)の思いが込められている。後に男性同性愛で裁かれ、客死するワイルド自身の悲劇をも予言した。
ビアズリーの名画を18点掲載!
目次
サロメ 一幕劇
訳者あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本書の挿絵を描いた画家、オーブリー・ビアズリーに関する展示「異端の奇才ビアズリー展」に行き、興味が湧いたため手に取った。
戯曲を読んだのははじめてだったが、事前に展示を見てあらすじを知っていたため、違和感なく読めた。リズミカルな表現が多いためか、劇の情景が浮かぶ様であった。妖艶な表現が多く、不思議なドキドキを感じられる。
本編が90ページに対して「あとがき」が50ページもあるが、この「あとがき」が面白い。翻訳者によるオスカー・ワイルドとサロメの解説がわかりやすく、もう一度本編を読みたくなった。
Posted by ブクログ
ビアズリー展のミュージアムショップで購入し、展覧会の余韻に浸りながら帰りの新幹線で読破。
そう、今こそその口にキスをするわ、ヨカナーン。
……ああ!ヨカナーン、ヨカナーン、おまえだけなのよ、私が愛したのは。
同じ言葉の繰り返しが多用されていてサロメの激情がひしひしと伝わってくる。きっと劇で見ると迫力がもっとあるんだろうな。
オスカー・ワイルド本人はビアズリーの挿絵を「日本的だ」と嫌っていたみたいだが、サロメの退廃的で耽美的な世界観にはビアズリーの美しく繊細ながらも不気味な絵柄が合うな…と思ってしまう。
訳者あとがきも面白かった。フランス語の二人称の使い分けと心理的距離の変化が連動してるなんて。いつか原語でもチャレンジしてみたい。
Posted by ブクログ
絶対読むべきと思いながら数年経ってしまった。が、読んだぞ!よかった!サロメが毒婦というよりはどこか切実で必死な感じで、翻訳の効果もあるんだろうけど、とにかくよかった。
Posted by ブクログ
挿絵もストーリーも薄気味悪く悪趣味。だが、美少女サロメが、浮浪者のような預言者ヨカナーンに魅力を感じ入り、狂気かつ妖艶の状態となっていくさまは、人間の感情のミステリアスな部分をとても巧みに表現している。マタイの福音書がモチーフだが、よくこんなの思いつくなと、つくづく思う
Posted by ブクログ
ああ!おまえの口にキスしたよ、ヨナカーン、おまえの口にキスした。おまえの唇は苦い味がした。血の味かしら?でも、恋の味かも。
耽美的・退廃的な世界観とはこういうものなのだろうか。
ファムファタールの代表格と言われるサロメだが、どちらかというと力強く直動的で雄々しい。
訳者あとがきも、初心者でも分かりやすくワイルドの世界観に触れることができ、良かった。
Posted by ブクログ
ピアズリー展、観に行かれなかったなぁ~と思いながらピアズリーによる挿絵の『サロメ』を読む。
古典戯曲というのは本当に読みにくいけど面白みは深い。
サロメの自己中っぷりったら。
エロド王の気持ち悪さったら。
ところでこれは新訳とのことだけど、戯曲ならではの言い回しに加えて、おそらく原作の言語の古典的な文法によるのだろうけど複雑な言い回しや不自然な言い回しが多くて、果たしてそれは新訳なのだろうか。
これ以上かみ砕いてわかりやすくするのは超訳になってしまうの?
さて、次はどの企画展で、もしくは美術館で、誰が描いた『サロメ』に出会えるか楽しみだ。
Posted by ブクログ
読んだ本 新訳サロメ オスカー・ワイルド 20250505
「異端の奇才 ビアズリー展」でインスピレーション受けて、ビアズリーがこんな独創的な挿絵を描いた「サロメ」ってどんな話なんだろう、今度買おうと思ってたら出口のスーベニアショップに挿絵入りの文庫が置いてありました。見事に商法にはまった感はありますが。
ビアズリー展の話になっちゃいますが、無名の作家が抜擢を受けたサロメの挿絵で、ワイルドを虚仮にしたり性器を連想するような絵を没にされたりと、どういう神経してるんだろうって思うんですが、この時の絵が灰汁が強くて独創的でホントにいい。25歳で夭折してるんですが、晩年?の作品になると変にまとまって見えて魅力が薄れて感じました。
で、興味本位で読んだ「サロメ」ですが、なんかよくわかりませんでした。こういうのを舞台で観て当時の人は面白かったのかな。でも、ビアズリーの挿絵の背景が理解できてよかったです。
Posted by ブクログ
ピアズリー展が良かったら、そのままのテンションでこちらを購入。
でも新訳過ぎて、ちょっとついていけない…
薄暗い、濃厚な雰囲気がなくなった気がする。
せめて、「キス」は「口づけ」のままにしてほしかった。
訳者あとがきによる解説は良かった。
オスカー・ワイルドがフランス語に込めた意味、描きたかったもの、なるほどなぁと思った。