あらすじ
ラクサリア王国の浄化を終え世界を救う旅を始めたハルカ。
そんなハルカのため、そして世界のため聖女送還と瘴気溜まり対策の研究を続けるマルティナの下に、異国の古代遺跡にその手がかりがあるかもしれないという情報が届く。
絶対に迷い奥にたどり着けないという古代遺跡の謎の解明のため、知識と記憶力を買われて調査団の一員に抜擢され、遺跡のあるハーディ王国へと赴いたマルティナだったが、遺跡探索の前にまずは解決すべき問題が立ちはだかり……!?
※本作品の電子版には本編終了後にカドカワBOOKS『家を追い出されましたが、元気に暮らしています ~チートな魔法と前世知識で快適便利なセカンドライフ!~』(著:斎木 リコ)のお試し版が収録されています。
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Posted by ブクログ
シルヴァンに萌えました。以上です。
……では短すぎる!という毎回のお決まりで始まりました。本作は、健気で素直で明るいマルティナさんに元気をもらえる冒険活劇となっています。本が好きな人には共感できることが多いはず!もちろん1巻から読んでもらうことを勧めますが、3巻からでも読むことができます。
※以下、ネタバレ、政治的主張を含みます。
感想兼個人的雑記・散文となります。
時間の許す方のみお付き合いください。
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第3巻では、シルヴァンさんとナディアさんは、どちらも貴族ゆえのこだわりを持つ家族との、考え方の違いがあるために悩んでいる様子が描かれました。とはいえ、貴族たる者の責務と報酬をしかと理解しているか否かは、2人の親の間でずいぶん差が開いているように見えました。
シルヴァンさんの兄の場合、貴族階級にこだわり、それ以下の身分の者と交流を持とうとする思想そのものを憎んでいるようでした。対話や議論の余地が初めからありません。
ですが、ナディアさんの父の場合、貴族として、女として、など、言葉の選び方が致命的に下手であっただけで、これからも娘が安心して暮らせるよう、幸せになって欲しいと願う気持ちは、間違いなく、愛情の為せるものなのです。そして、ナディアさんが父を説得させるために、貴族の女が自立して生計を立てていった希少な例を集めてくる努力もまた、自分の正しさを誇示するためというよりは、父の愛を理解し、安心して欲しい、自分の生き方を信じて欲しいという愛情の返歌であったと思いました。こちらはずいぶんと、不器用ながらも、希望のある間柄です。
しかして現実の自民党の派閥を見ているとめちゃくちゃであるように、悲しいかな、令和7年時点の日本の力関係というのは、シルヴァンさんの兄のような思想がよほど根強いのです。身内だけがよければよい、という具合です。それはそれで愛情ではありますが、少なくとも身内がそれ以外の可能性を示したのなら、裏切り者と誹るのではなく、建設的に向き合おうとする方が、私にとっては好ましいです。……とはいえ、イエス様は、ユダヤ教を壊すつもりなどなかったものの、結果として、ユダヤ教の戒律よりも人の生き方を優先し、彼らの倫理観を歪めてしまったため、当時の過激派から粛清されてしまった歴史があります。数千年前のキリスト教の成り立ちの時点で、それまで当然であった思想に背く者が身内に現れたとき、これを許さず裁くという例はあったわけです。しかも、こんなにも国際的に有名な逸話の中で、です。であれば、清く正しく平和を祈る気持ちや行動というのは、なかなか簡単には、受け入れられないというのは、歴史に学び、一度はしかと受け入れるしかないでしょう。正しいことをする人は必ず、それを妬み陥れようとする者によって責められるといった旨は、古くは法華経にも記されています。
それでも諦めず、より広く分かり合っていければいいと、祈り、願い、そのために行動し続ける。それが人間らしさだと思います。シルヴァンさんは敬虔な信徒であるかどうかは、作中の描写のみでは分かりませんが、そういった教えの影響を受けていなくても、自然とそうした、身分の異なる人たちの「和を以って尊しとす」を実践できているあたり、まさに聖徳太子さん、徳川吉宗さん、そしてイエス様のような生き方ができる方だと、尊敬しております。※この三方はいわゆる聖典を読まず、自身の生き方の実践をするだけで、後に御利益があるとされた書物に記されたことを悉く成し遂げていたそうです。法学部を出ていないけれど人の愛に厚いドナルド・J・トランプ大統領や、儒教・論語を諳んじることは出来ないけれど、その内容をほぼ成し遂げていた吉宗さんは、共通点が多いです。
今上天皇陛下・徳仁様のように、日本人らしい、「祈り」の生き方が、さりげなく記されているのも、嬉しいところでした。
陛下と歴史の話といえば、今回の話の大きな展開点として、モモが扱われていたのも興味深い。日本のような環境でなくても育つことは、イザナギが黄泉の国のシコメたちに桃の育て方を教えた件でなるほど納得していす。ももがなる→桃が成る→百が済る→百済(くだら)、という具合に、朝鮮半島のような、日本と気候の条件が異なる場所でも、桃は成るのですから。
赤点病の元ネタは、崇神天皇の頃の疫病でしょうか。神社を建て、手水屋(ちょうずや)を構えたことで、大勢の人が、喉と手を潤し、やがて病が去ったとありました。それよりしばらく後に、梨を山で育てる事業を、天皇家に連なる方が始められるのですが、ちょうどそれに似たお話に思えました。果物は、山が多い日本にとっては、それはそれは素晴らしい水分・微量栄養・熱量の元である一方で、まさに本作のブルーバクの病原と同じく、病の元にもなり得るものでした。良薬と毒草は、よく似た形で隣に植生することが多いように、人にとって与する食べ物とは、ときに災いにもなり得るということでしょう。米や魚に含まれる、ガラス質、水銀、カドミウムは、それらの摂取に古代から慣れている日本人以外からすれば、猛毒にもなり得ますから。
ハルカさんの光魔法で、病の人も治せるかもしれないけれど、かりにそれがわかってしまえば、奇跡を求める人が殺到し、また、救えなかった人への後悔の念でハルカさんが精神的に追い詰められてしまうことを憂いたマルティナさんの様子もまた、非常に示唆的に思えました。
古代の魔法陣の方が、現存の魔法技術よりもはるかに進んでいたことを認めたマルティナさんの姿も含め、天皇陛下が受け継いでいる、祈りと呪術の秘技とは、本当はあらゆる人の災いを救えるものであり、それを成し遂げるオーパーツも実在し、けれどそれが人々に明らかにされれば、欲し求める人の諍いは歯止めを失い、絆が壊れてしまうことを憂いて、あえて陛下はそのことからお隠れになっているのかもしれないと、そんなことも夢想しました。
なんでも奇跡に縋って救われようとすることでは、この世に生まれてきて、楽しむことも、絆を、思い出を、愛を育むこともできなくなりますから。あえて不自由で、大変な状況があることを、切なく、胸を痛めながら、それでも私たちの幸せを祈り続けてくれているように、直観しています。
恩義がある人には素直に頭を下げて、己の過ちを認め、前に進もうとする人たちの姿が、貴賤を問わず、たくさん見られたことも、本作の嬉しいところでした。前述のように、断固として市井を認めないシルヴァンさんの兄のような人もいる一方で、国益や仲間の幸せを願いながらも手段を間違えてしまったことを素直に謝った、ギードさんやフィルヴァルト第三王子の様子が、胸を打ちましたから。
特に、部下が見ているメンツというものが厳しい環境であることは、居場所は違えど、2人とも共通していることであり、そうであるにも関わらず、素直に頭を下げられるのは、素晴らしいことだと思います。
まだ、この世界が国際法で支配されている前、中世に近い価値観だから、と言えるかもしれませんが……どんなに法が発達していようがなかろうが、己の過ちを認められるか否かというのは、一瞬の出来事です。その一瞬の中で、心を試され、見事乗り越えてみせるのは、なかなか簡単なことではないのですから、私は心の底から彼らを格好いいと思いました。
探検していると、鉱物や野草に目利きが出来るように成るといった展開も、野草研究家・山下智道さんや、遺跡探検家兼小説家・時海結依を慕う私としてはすごく見応えがありました。鉱物に詳しいと、地質や水質にも詳しくなりますから、植生、木の実、それを餌とする鳥、鳥のフンから広がるさらなる植生の分布図など、想像は無限大になれそうです。……あ、マルティナさんが好奇心が昂る気分、こういう感じか、と今納得しています。笑笑
まさにその鉱物の知識から、ゴーレムを倒し、地下の貴重な情報(というよりマルティナさんが読みたい本たち?笑)を守ることが出来たというのも、経験と知識、体験と読書の両立の素晴らしさを描いた魅力だと思います。まさしく、ビスマルクのように。「賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」と倫理の教科書に訳されているのは、間違いなのです。正しくは、「賢い者は“他人の体験”≒歴史からも学ぶことができ、愚かな者は己の体験のみでしか学ぶことができない。私は賢い者でありたい」といった旨になるのです。つまり、自分の体験ももちろん大切である一方、それ以上に、他人の体験からも学ぼうとする姿勢が大切だと信じている、と伝えています。なぜなら、特権階級にとっての歴史とは、人類共通の成功体験談ではなく、失敗例を避けるために学ぶことが多いからです。成功例とは、その人、その環境にとって特別であることが多いです。かたや失敗例とは、人類普遍の共通例であることが多いです。ゆえに、その人しかできない成功例を無理に真似しようとするよりも、放っておけば必ず誰もが通る失敗を予め学んでおけば、おのずと成功や理想に近づけるということなのです。
マルティナさんは、その人が持つ特別な感情や思い出は、その人だけの体験があってこそであると知っていますし、そのことを大切に尊重しています。そのうえで、自分に役立つこととは、知識の保管であり運用であるということを強く自覚し、役割を果たすことに懸命なのです。まさに、日本の神の意識。日本の神々とは、神であるから特別なのではありません。その人が自覚した天命や役割を成し遂げたからこそ、その奇蹟を知る人が、神として敬い、語り継ぎ、今も愛されているのです。記紀を訳した本居宣長先生は文学の神になり、徳川の平和を作った家康もまた武勲の神になりました。
一生懸命働くと、理屈不要でなぜか清々しいのは、日本人が本来持っていた神の理想につながる、神通力を取り戻せるからなのかもしれません。マルティナさんは、そんな姿をさりげなく教えてくれているように思います。
それにしても、一巻からその兆候があったとはいえ、シルヴァンさんとナディアさん、ロランさんとマルティナさんが、なんだかいい雰囲気なのは、ドキドキのラブロマンスです!ここからどうなっていくのか、すごく楽しみです。
まだまだ語りたいことは尽きませんが、今回はこの辺りで。コミカライズともども、次巻が楽しみです!!
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以下、脳内劇場配役紹介。敬称略。
2巻時点までと若干の変更がありますが、基本的にはブシロードキャストです。笑
マルティナ:進藤あまね ハルカ:愛美
ナディア:高尾奏音 シルヴァン:木村良平
ロラン:逢坂良太 サシャ:福島潤
アレット:朴璐美 エマ:大野柚布子
です。
他にも多くの人が登場しますが、他の方々は適宜ということで。
進藤さん、愛美さん、高尾さんは言わずもがな、倉田ましろ、山手響子、豊川祥子のイメージです。シルヴァンさんはツンデレな木村良平さんが似合いそうなので。笑 逢坂さんは、日向晶也(あおかな)くんの雰囲気。福島さんは、朱島歩武くん(天空のユミナ)から。朴璐美さんは、映画ぽぴどりのソラ姉さんから。大野さんは、このはな綺譚・柚さんの印象です。
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ここまで私の散文にお付き合いくださり、ありがとうございます
あなたのこれからの日々が、明るく、やさしく、穏やかな時間になりますように__
Posted by ブクログ
読んだもの見たものを完璧に覚えられるマルティナのお話も3巻目。異世界召喚されたハルカは浄化の旅に、マルティナは新たな情報を元に遺跡探索へとなる今作。変わらずに本と読書を愛するマルティナの姿が本好きの人には自分が重なったり羨ましくなったりする事だろう。貴族と平民の立場からくる差別意識がチラホラあるものの、マルティナの豊富な知識と健やかさで前向きに解決していく場面もあり、読み心地は良い。話の続きが気になるが私もその他の本を読みながら待とうと思う。
Posted by ブクログ
知識の力と好きなことに対する情熱を知れる小説。
知らないうちに第3巻があったので読みました。
今作はダンジョンもあり他国へ行くなど自分の知らない世界に踏み入れる感じが、かなり楽しめました。
また、膨大な知識も使いようによってはすごい力になるって改めて感じることができる小説でした。
そして、自分に好きに情熱を持つことって素晴らしいとも感じました。
やはり知らないことを知る知的好奇心て本好きには堪らないですね。
Posted by ブクログ
面白かった。
ちゃんとマルティナの特殊能力を活かしたストーリー展開で
ぶれなくて気持ちいい。
そして、ハルカが強くなっててすばらしい。
浄化のほうはハルカに任されて、
マルティナは古代遺跡攻略、その前に医療サスペンスもちょこっと挟まる。
さっくりおもしろかった。