【感想・ネタバレ】母の友2024年5月 特集「絵本と出あう」のレビュー

あらすじ

特集は「絵本と出あう」です。世の中にはたくさんの絵本があります。その中から、どうやったら読みたい絵本、読むべき絵本と出あえるのでしょう。絵本との“出あい”に注目します。五味太郎さんや美村里江さんのお話も。童話欄は阿部結さん作「おかあさんのうみ」。「絵本作家の元気のもと」欄には北村人さんが登場です。

*電子版には巻末付録のカレンダーはつきません。
*電子版では、掲載されないページ、マスキングされた画像が含まれる場合がございます。
*この作品はカラー版です。お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 まずは気になった連載をいくつか。


 「読んであげるお話のページ」は、みやこしあきこさんとの対談も記憶に新しい、阿部結さんの「おかあさんのうみ」で、阿部さんの絵本読むのは初めてでしたが、対談でも仰っていた、子どもに迎合しない雰囲気を彼女の絵に感じられて、その飾らないありのままの佇まいが、却って、子どもの活き活きとした姿をリアルに映し出しているようでありながら、お話がまた、不思議な感覚の中に少し切なさが漂うといった、現実ではまず体験できないような夢のあることを、絵本で体験できた素晴らしさを改めて教えてくれて、これを読み聞かせされた子どもは、はたしてどう感じるのか、とても気になる。

 「えほんのきほん」は、特集でも登場する、科学絵本について取り上げており、私も勘違いしていたけれど、勉強するための絵本というよりは、身近にある知らなかったことや不思議さを見せてくれることによって、驚きや新しい視点で世界を改めて見るきっかけとなり、子どもたちの様々な好奇心を満たしてくれる、そんな親しみやすさがあることを教えてくれて、私も何冊か読みたいものがありました。

 「わたしのストーリー」は、今号から井戸川射子さんになり、第一回目のエッセイは、かつて幼い二人のお子さんを、二人乗りのベビーカーに乗せて連れて行った公園についての回想録で、その時は子どもたちに何かあってはいけないと、常に気を張っていられた井戸川さんが、改めて淡々とその時を振り返ったときに、初めて自分自身の姿を垣間見ることができた、その姿には感情的でないからこそ、より刺さるものがあった。


もりやままなみさん、齋藤陽道さんの
「ひょうひょうかあちゃん」

 何度見ても、心が洗われる瞬間。
『ただ、ひたすら今を生きている子』に、かつての自分を重ね合わせてみたくなる。


連載小説
「線の上のママとぼく」 第二回
山崎ナオコーラ

 『ノンバイナリー』という言葉が登場することには、前回同様、世の中にはいろんな人達がいることをそっと伝えながら、それとは対照的に、本編は少し重い展開になっていきそうで、努めて冷静に構えていた「一(はじめ)」も、やがては・・・こうした矛盾と、今後どのように向き合っていくのか、これは注目してしまう。


 そして特集は、絵本が好きな私にとって、前々から楽しみだった、『絵本と出あう』。

 まずは保育士として長い間、子どもと絵本に携わってきた、中村柾子さんの「絵本と出あうということ」で、楽しむと共に、是非勉強にさせてもらおうと興味深かった内容として、赤ちゃん時の絵本は、ストーリー性のあるものは分からないので、まずは「もの」と出あうことから始めるけれど、そこには、『~のような』といった不確定なものではなくて、『はっきりとわかる』感覚を持てる絵本が大事だそうで、そこでまずは事実を見る目が養われると、多方面から見ることや不思議なことを受け止める感覚も次第と身についていき、それがストーリー性のある絵本を感受性豊かに捉えられるきっかけになるのだそう。

 ただ、小さい子は抽象的な絵本も大好きということも書かれており、そこは読み聞かせする順番であったり、大人が読んで何も感じないからといって、子どももそうかというと、決してそうではない、あくまでも子どもがどう感じ取るのかが大切だということなのだと思い、こうした絵本の見え方がそれぞれで違うように感じられる点に、私はとても惹かれるものがあって、だから絵本は止められない。

 その他に印象的だったのが、「えほんのきほん」でも書いた、科学絵本についてであり、可能なものはなるべく実際のものと突き合わせてあげることで、『外の世界と絵本の往復が豊かに』なり、それが『本で知ったことと実体験がかみ合っていく』素晴らしさに変わってゆく、そんな素敵な体験には、改めて人生に於ける本の存在価値のあり方を実感させてくれたようで、どれだけ便利な世の中になろうとも、絵本にしかできないこともきっとある、そんなことを教えてくれたような気がする。


 それから、もう一つ心に残ったのが、五味太郎さんの「俺が出あった絵本の話」であり、ディック・ブルーナの「うさこちゃんとうみ」に感じられた、『子どもの意志にゆだねる姿勢がある』ことには私も共感しながら、貝のページだけ上からの視点で描かれていることにはハッとさせられて、そういえばそうだと、ちゃんとうさこちゃん目線で描いてあることに初めて気付いたときには、思わず家にあるそれを見直してしまうくらい嬉しくて、その他にも、『「わかる」必要よりも「これはなんだろう?」って考えている時間が一番楽しい』ことには、絵本の持つ奥の深さと、その解釈やどう感じ取るのかは、子どもそれぞれで異なることも改めて教えてくれた、正解のない面白さだと感じられました。

0
2024年05月11日

「暮らし・健康・美容」ランキング