【感想・ネタバレ】なぜ東大は男だらけなのかのレビュー

あらすじ

「男が8割」の衝撃――。女性の“いない”キャンパス。
現役の東大教授による懺悔と決意。
これは大学だけじゃない、日本全体の問題だ!

2023年現在、東大生の男女比は8:2である。
日本のジェンダー・ギャップ指数が世界最下位レベルであることはよく知られているが、将来的な社会のリーダーを輩出する高等教育機関がこのように旧弊的なままでは、真に多様性ある未来など訪れないだろう。

現状を打開するには何が必要なのか。
現役の副学長でもある著者が、「女性の“いない”東大」を改革するべく声を上げる!
東大の知られざるジェンダー史をつまびらかにし、アメリカでの取り組み例も独自取材。
自身の経験や反省もふまえて、日本の大学、そして日本社会のあり方そのものを問いなおす覚悟の書。

【目次】
序 章 男だらけの現状
第一章 東大は男が八割
第二章 女性のいない東大キャンパス――戦前
第三章 男のための男の大学――戦後
第四章 アメリカ名門大学の共学化
第五章 東大のあるべき姿
終 章

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

東大は男性が8割。男性が多いのは、東大入学者に中高一貫の男子校が多いから。その子の家庭は、父が働き、母が専業で家庭をサポートする。そんな家庭から官僚などになり制度が作られる。これではジェンダー格差が解消されないとのことだった。

こんなにも男性ばかりになっているとは知らなかった。そして、その環境を生み出す中高一貫の男子校があるということも。社会的に、男性優位な歴史があるから、それが脈々と受け継がれているのだと思った。このような状況が本で書いていただいたからこそ、少しずつ変わってきていると思った。

筆者の矢口祐人さんは、東大で研究をおこなう教授で、10年以上、東大に男子が多いことに違和感をもたなかった。それが当たり前だと思っていたから。しかし、海外からの学生を受け入れる役割を担い、自身がアメリカに留学していた経験があり、よい環境をつくろうと奔走する。

そんな中で、受け入れた海外留学生女子がサークルに入れない事態が発生する。東大には、東大女性お断りのサークルがある。今では少なくなったが、本を出版前の2012年は大半だった。

「もともと男性しかおらず、今でも圧倒的に男性の多い大学の伝統は男性中心のものにならざるを得ない。「東大の伝統」や「旧制一高の伝統」というのは立派な響きはするかもしれないが、結局は男の伝統」
女性にも同じ事がいえるけれど、伝統は考え直す必要があるケースだと思う。

東大にいる立場で、東大を非難するような本を出すことに何度も迷ったが、日本社会の大きな問題であり、日本の研究者として解決すべき問題として本を出版されている。その勇気に心から敬意を払いたい。東大だけではなく、社会として考えるべき問題だと思った。

0
2025年05月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

■どんな本か
自らもマジョリティ(男性日本人)側に立つ東大教授が、東大における男女不均衡をその歴史紹介・米大学との比較等を通して、問題提起する本。

■内容
・東大の男女比は8:2
・そしてその比率は20年間ほとんど変わらない
※女性の大学進学率は5割を超えたというのに
・日本に高校は4856あるのに、トップ20校の合格者が4割以上を出している
・特に開成始めとした男子校10校で25%を占める
・教員の男女比は多少改善したものの16.7%
・サークルで東大女性が敬遠される理由は、女に求めてるものが華やかさやサポート、そして頭の悪さだから
・銅像にも女性はいない(いても現世とかけ離れてる)動物像も雄(苦笑)
・戦後、1946年には女性入学するも(1.9%)、準備できてないから女子トイレも十分にない有様
・女子学生亡国論なるものがあった
・東大闘争ではひたすらおにぎり握らされた学生も
・プリンストン大学は、経営判断としての危機感から共学化進んだ

■著者の主張
問題を大学全体で共有して、解決に努力せよ。
女性以外のマイノリティ含め、ブレイクスルーに貢献せよ。クォータ制導入せよ。

■印象に残った文章
【クォータ制を導入することで、女性だから採られたと思われたくない人も少なくない。(中略)しかし忘れてはならないのは、これまで採用されてきた男性教員は多分に男性であるというメリットを享受してきたということだ。『自分が男性だから採られた』という意識を持つ男性教員はほとんどいないだろう。女性にはそう思わせて、男性は思わなくても良い構造、それこそが問題である。】

■感想
東大の副学長さんだそうで、いわばトップ層の人がここまである種自虐的に(銅像の動物が雄しかいないとかネタでしょ)、紹介してるのは興味深い。実際、書き進めていいのか迷いもあったことがあとがきで明かされる。

改めて、悔しい思いを重ねてきた多くの女性の苦難を思う。頑張って優秀な成績取って大学に入って、トイレがなくて男子トイレに駆け込むとかほんとありえない。自分が失敗しても、女性全体のせいにされがち、という傾向は今の時代にも大いにある。
東大の男女不均衡問題は、社会と同じ縮図。東大卒は特に力を持つ・影響力を持つ人が多いだろう。こんな閉ざされた世界で育ったら、おかしな感覚のままな人がいるのも納得。

中高一貫男子校がこれだけ多いのは知らなかった。(とはいえその事実は、5年でカリキュラム終えて高3を受験に当てられるやり方が今の受験に有用であるという裏付けでもある。)数日家を空けて、洗濯物をほっぽって出かける、そしてそれをよしとする母親像も容易に想像できる。結婚したらそのサポートが嫁に代わるだけだから、こういう育ち方をした人が育児しないんだろうなと邪推。

ただ今の学生は男性でもリベラルか感覚の持ち主も多くいるだろう。その感覚が潰されないといい。

男だけの単一社会で何が問題なのかはきっとマジョリティ側だとわからない。それこそ、日本トップの教育で気づきを作り出してほしい。
女だらけの会議とか、留学生だけのサークルに参加、とか機会作らないと無理かもだけど。

努力をして実力で入ったと自負してるだろう学生に、頑張ったことが報われると思えることは環境のおかげである、と入学式で言える上野千鶴子は最高だし、その人選ができる東大も変わってきてるとも感じた。

男女差別が語られれる一方、自殺は常に男性が多い現代社会において男性ならではの生きづらさもあるかとは思うがそこには触れられていない。

性別という括りで、選択肢が縛られたり、容姿をとやかく言われたり、不要なプレッシャーを感じることのない世の中にしていきたい。

今は小さな娘が、将来性別に関係なく(頭がよくなるかは別にして!)どんな選択も取れるように願う。

0
2024年04月03日

「社会・政治」ランキング