あらすじ
2023年1月に逝去した元一水会代表・鈴木邦男がウェブ週刊誌「マガジン9」に約10年にわたって連載してきた文章をテーマ別にセレクト。
「愛国心」「憲法」「表現の自由」「差別と格差」「宗教と政治」「憂国」「右翼と左翼」という7つの論点を、彼独特の軽妙でユーモアたっぷりの語り口で論じる、まさに鈴木邦男の「遺言」とも呼べる一冊。
その「遺言」の解説を、リベラル論客として知られる思想史家・政治学者の白井聡氏が担当。
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「朝まで生テレビ」などにも出演していた独特の雰囲気の論客で右派活動家の鈴木邦男氏の気骨ある文章が詰まった遺言とも言える一冊。
晩年は左右を超えるふしぎな立ち位置となった氏の思想に触れるには絶好の書とも言えましょう。
本書を読んで思ったのは、鈴木氏は「気骨ある人」に対しては左右の思想を問わず尊敬の念を抱くことができる懐の深さを持ち合わせた人だと言うことだ。氏のことを面と向かって罵倒する無頼漢に対しても「骨がある人だ」と称賛を惜しまず、格の違いを感じる。第一、本書自体左派メディアに寄稿された原稿であり、いわゆる右翼と呼ばれていた鈴木氏がいかに柔軟な考え方を持っていたかをうかがい知ることができる。ゴリゴリの「右翼」の方は本書を読んで「売国奴!」と罵るかもしれないが、きっとそれさえも雲の上の鈴木邦男は「敵と認めてくれてありがとう」と受け止めるのだろう。ほかの著作も読んでみたい。
Posted by ブクログ
2023年、つい一年前に逝去した鈴木邦夫氏が残したコラム集。
残念ながら生前の活躍はあまり把握しておらず、
せいぜい右翼から左翼に転向したとか、彼こそ本当の右翼だ、
程度しか聞いたことがなかった。
彼の文章を読んでまず感じたのは、何とも愛すべき人物であった、
ということ。「右翼」のイメージからか、こわもてを想像していた。
そして、こちらは本質だが、いまの「右翼」が、いかにえせ右翼か、
真に日本を愛する、ということはどういうことか、彼の文章からその本質を
読み取ることができた。
そもそも右左の定義もあいまい。
自称右翼、自称愛国者もそのあたりは分かっていないのだろう。
馬鹿の一つ覚えのように、日本は悪いことはしてない素晴らしい国、
周辺国は酷い国、と決めつける。
所詮人間のすること、集団のすること、ろくでもないことをするのだ。
私は昭和20年の欧米が日本の一般市民に対して行った仕打ちは決して許せないし、
同様に日本軍隊がアジアで行った蛮行も許してはいけないと思う。
先日謝罪論を読んだときに、安倍首相が米国議会で行った演説、
謝罪はここまでにしよう、に改めて違和感がある、とコラムに記したが、
鈴木さんも同様のことを書いていた。自分から堂々というなと。
要するに反知性なのだ。猛々しいことをおっしゃる方々は。
そのくせ日米安保大賛成、軍事協力します!なのだ。
なんでアメリカの属国でいることに疑問を覚えないのか。
軍事力を持つのはあり得ると思うが、だったら自国だけで戦える力を持て、だ。
アメリカべったりはありえない。NATOに入る、ってなら別だろうけど。
こういう、自分で考える人がどんどん減っていくような気がしてならない。
そういえば、最近の左翼転向、といえば、古谷経衡だな。
Posted by ブクログ
著者は本書では先進的な事を言っている訳でも、複雑な事を分かり易く噛み砕いている訳でもない。シンプルな事をそのままぶつけているだけだ。
それでも著者の思いが感じられる理由として、右翼の旗は掲げつつもその延長線上に何か釈然としないものがあれば立ち止まり周りを眺め、納得出来るものがあればそれがいかに左翼の持ち物であっても採り入れる、懐の深さが挙げられると思う。
やがては著者一個の愛国心として確固たるものとなっていく。右翼でもなく左翼でもない、鈴木邦男のこころ(一種の保守正道とも言えようか)が本書に書き連ねられている。
ふたば書房紫野店にて購入。